44マモ ジャックオーランタン
世界のマーモットを支配する予定のマ王マーリンです。
「マーモットは交通事故を起こしても、罪にならないよね? マーモットが事故を起こしても、マーモット酌量で無罪だよね?」
コントローラー片手に震えてます。マモベースを操作する裏技は引き出しに隠れており、なんと面倒くさいシステムを扱わなくても、コントローラーを使えば、ゲーム感覚で操作できちゃったりしたのだ。なので、有名なレースゲームであるマモカートよろしく華麗なる操作で気分良く走ってたんだけど━━。
「元々このコントローラーがマーモット用じゃないからいけないと思うんだ。ボタンとか押しにくくて、マモベースが壊れちゃうところだったよ」
コントローラーに不具合があったため、初心者のようにガッツンガッツンとビリヤードよろしくビルや家屋に体当たりしながら移動していたのである。
そして、今現在は戦闘音を感知したので急いでやってきて、ブレーキのボタンどれだっけと小首をまもんと傾げていたらビル内に突撃しちゃいました。
マーモットは悪くないよね? 昨今のゲームは全部のボタンを使用するから覚えきれないんだもん。
少し長い爪を生やした肉球のついた赤ん坊の手よりも小さなお手々。毛皮に覆われて、可愛らしいマーモットハンドでは人間用のコントローラーを操作するのはとても難しいと悟りました。マーモットはまた一つ賢くなった。
「ボス、感知した音は魔物と戦闘をしている人間であったようです。現在、人間たちは敵に包囲されて危機的状態にあると進言します」
「ピギ!?(なぬ)」
アミの報告に慌てて前面モニターを見ると、クラゲのように蔦をカボチャ頭から生やした魔物が4人の子どもたちを包囲しようとしていた。この寒さに耐えようとしているのか、全員もこもことジャージを何枚も着込んでおり、少し動き難そうなうえに、武器を持っている子が一人しかいない。
子どもたちも魔物たちも突如として壁を壊して現れたマモベースを見て、唖然としているが気を取り直されると子どもたちは殺されちゃうな。
この世界では初めて見る魔物だ。ならば俺のやることは一つ。
ぴょんとデスクに飛び乗ると大きく息を吸い━━。
「ピキーーーーー」
マーモットの警告音だ。仲間に危機を知らせるため、自分は襲われる可能性が高くなるのに、笛のように甲高い鳴き声をあげるのが、自己犠牲の塊の小動物。マーモットなのである。
ブリッジに俺の鳴き声が響き渡り、偉大なるボスの警告音ですと、録音録音とアミが慌ててデスクにタッチする中で暫し、満足して椅子にぺたんと座るマーモットだ。
「了解であります。超電導機関砲、魔物たちへとターゲッティング。……?」
警告音を鳴いただけなんだけど、アミは以心伝心、俺の指示を先回りして、素早くモニターをタッチしてマモベースの超電導機関砲をカボチャの化け物に向けようとするが、なぜか戸惑った顔となる。
『なにか不具合でもあった?』
念話に切り替えて尋ねると、難しい顔となる。
「はい、敵味方識別装置が、あの魔物たちを敵と認識せずに人間だと判断しているのであります。操作方法は間違っていないはずでありますが……」
『それは設定を間違ってるんだよ。今日初めて操作するんだから間違うのは当たり前。俺も初めて回し車を見たときは、飾り棚を齧って大きな穴にして、中を巣穴にしたしね』
店員さんが、もう回し車が壊れたと苦笑していたのを覚えている。だって穴を空けて壊れた隙間に入るとちょうどよい狭さで俺のおうちにぴったりになったんだもん。あれはマーモット生でも一二を争う失敗だったね。
ピキーピピピと、肉球ハンドをフリフリと振ってアミを慰めて、ニニーはそれを見て俺の肉球を触ろうと、フリフリと手を伸ばす。
「設定は間違っていないと思うのですが、これでは使い物になりませんので、マニュアルで再設定します。カボチャ頭に対してターゲッティング。マルチロック、射撃準備よし」
「まぬあるでたちてって〜、カボチャは甘いからニニーしゅきだお。あれはおばけさん?」
なんでも真似っこするのが大好きな幼女がアミの真似をして、ふんふんと鼻を鳴らすのを横目に、アミは優れた軍人っぷりを見せて、俺に視線を向けてくる。射撃許可をと催促しているのだ。
もちろん、俺は提督なのでデスクに立つと、ピシッと腕を掲げてカッコよく指示を出す。
『射撃を承認する。カボチャ頭を迎撃開始、人間を助けるんだ』
「アイアイマム、超電導機関砲射撃開始」
アミがタッチパネルを押すと、画面に移るカボチャ頭たちに、青い光線が連続で命中していき、粉々に砕いていく。カボチャ頭の前に半透明のシールドが張られて数発は耐えるが、機関砲は毎分数百発を撃つ代物だ。シールドをあっという間に破壊する。
超電導って、青いビームみたいなのねと、感心する俺が敵を掃討するのを見ていると、敵も動揺しているが各自に反撃を始めてくる。炎玉を生み出して、こちらを破壊しようと次々と撃ってくるが、揚陸艦を囲む超電導シールドにより全て阻まれて、まったく攻撃は効かない。その光景は中世の弓師が懸命にフリゲート艦を破壊しようと虚しく矢を撃っているようにも見えて哀れにも思えちゃう。
「シールド減少率1%。回復率を考慮するとノーダメージと言ってもよいであります」
「ニニーもそれやりゅ。んと、しーるどげんしょー、かいふくりつでしゅよ」
『よし、このまま掃討を、あっ、逃げてく』
アミが冷静にモニターを見て報告をしてきて、幼女も報告してくれて、俺はというと、敵が逃げ始めるのを見て舌打ちしちゃう。さすがに揚陸艦を前にして、戦闘を続けるのは絶望的だと思ったらしい。まぁ、当然の考えなんだけどさ。
とりあえず人間たちは助けることができたので一安心だ。にしても、あれはなんだ?
「ジャックオーランタンだよな、あれ。ハローウィンの季節はとっくに過ぎたはずなのに時期外れで迷いでた?」
ビル内の通路に泳ぐように逃げていくカボチャ頭に『理解』を仕掛けると━━。
『神農を信じる信徒たち。人間であるが、肉体改造をされており、光合成と土地の栄養だけで生きることのできる存在へと昇華した。私の天才的なネーミングで、ジャックオーランタンと名付けました!』
「なっ!? あれが人間なのか? というかジャックオーランタンと名付けると悪魔になっちゃうじゃん!」
『神農の祝福を農王が使用することにより、肉体改造をされていますが人間ですよ』
思わずピキーと声を上げて驚くけど、なにを驚いているんですかと、平然とした口調でレイが教えてくれる。その平然とした態度がなによりも恐ろしい。
あれは前に言っていた新人類候補ということなのだろう。マ族と比べて、あれは怖さを感じちゃう。
『くっ、あの人間たちを放置するわけにはいかない。あの中に農王はいたの?』
『はい。王の力を感知したのでいると思われます』
『なら、ここで殺しておかないとまずいことになる。悪いがあいつは王レースから離脱してもらうぜ』
「ピキーピピピ(アミ、ハッチオープン。人間を回収して待機。俺はジャックオーランタンたちを倒すために追撃する!)」
アミの返答を待たずに、俺はブリッジを飛び出す。
『こちらはマーモット王国のアミです。そこの人間たちを救助しますので、おとなしく中に入ってください』
マイクを使って外に呼びかけ始めるアミ。幼女があたちもあたちもとマイクに声を入れている。マーモット王国という名前に相手がホンワカして入ってくるのは間違いなしだね。
通路を走り抜けると3層のハッチが開き始めているのを確認してぴょいんと飛び出すと驚いた子どもたちとかち合った。
「キャッ、なになにマーモット!?」
ハッチが開くのを待ち構えていたのか、子どもたちが中にはいってくるので、するりとその合間を縫って走り抜ける。なんでマーモットがと驚いている子たちを横目に俺は廃ビルの奥へと突き進むのであった。
◇
『メラギオ』
通路に入ると、ジャックオーランタンたちの何匹かが待ち構えていた。どうやら農王とやらを逃すために残ったらしい。
カボチャにくり抜かれた目に炎を宿して、炎球を次々と撃ってくる。バレーボール大の炎は命中すると小さなマーモットでは焦げ焦げになっちゃうに違いない。
「狭い通路に炎球の連弾。人間なら防ぐことは難しいだろうよ。でも、俺は最高の獣マーモットなんだ」
四つ足に力を込めるとさらに加速する。グンと身体が押されて、風景が高速で流れていき、炎球の速度が遅く感じていく中で、俺はテテッと壁走りをして炎球を躱していく。
まさかマーモットが壁を走るとは想像もしてなかったのか、ジャックオーランタンたちは動揺して蔦を振ると、炎球の軌道を変える。
ゴゥンと壁に激突した炎球が爆発するが、その時は俺はジャンプして天井に足をつけると、テテテテテテと走っている。ジャックオーランタンが今度は天井に狙いを変えると、床に飛び降りて、床を狙えば壁に張り付く。廊下を立体機動で移動する俺にまったくついていけずに、ゆらゆらと蔦を揺らすだけに終わるジャックオーランタンたちに、俺はついに間合いを詰めると魔力の爪を伸ばす。
「新人類。その姿は哀れに思えるから容赦はしないよ。マーモット闘法1式、マーモットクロー!」
爪を防ごうと蔦を盾にするジャックオーランタンたちだが、この爪は蔦くらいでは防げない。
ピュン
風切音が微かにすると、蔦は綺麗に切断されて、カボチャ頭は二つに分かれて床に落ちると、目に宿した炎が消えてゆく。
魔法攻撃は無駄だと理解したジャックオーランタンたちが蔦を伸ばして、俺を直接倒そうとしてくるけど、悪いがマーモットクローの切れ味の前には無駄だ。
「ピキーピピピピピピ」
一声あげると、体を回転させて俺はジャックオーランタンたちを切り裂いていき、少しの時間で全て倒すのであった。
「こいつら、恐れとかを感じなかった。まるで感情を感じさせない見た目通りカボチャだったよ。こんなのが新人類とか、被害が広がる前に農王とやらは倒さないとな」
転がっているカボチャたちを見て、少し悲しさを見せると、俺は農王を追いかけるのであった。
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