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異世界でマーモットの王となりました  作者: バッド
2章 人間たちは

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42話 不良と先生

「す、鈴木君、佐藤君!」


 最初はなにが起こっているのか理解できなかった。だってさっきまでブラックスライムを倒せたと喜んでいたのに、今は物言わぬみかんに2人は変貌しているのだから。


「んふふ〜、先生は悲しいです。だいじな生徒が私の言うことを聞かずに、危険な外に出るなんて、もしも死んでいたらと思うと心が痛みますよ。君たちは周りの人がどれだけ心配をするかを想像した方が良いですよ?」


 まるで昔の学校ドラマの先生のようなセリフを口にして、近づいてくるのは、あたしたちを地獄へと落とした元凶だった。

 

 さっきまでお互いに喜んでいたのに、彼らはあっさりといなくなった。それを仮初めでも先生と名乗る奴が行ったことに強い怒りで、カッとして睨みつける。


「このカッパハゲ! 2人を戻してよっ、口だけどこかでパクったようなセリフを言って、逆らう者は皆殺すじゃないっ! 先生が聞いて呆れるわよっ!」


「んん〜? 腐ったみかんを放置すると、周りも腐ってゆくのです。だからこそ、私は心苦しくとも」


「なにが心苦しいよ! カッパハゲを隠そうとして、授業中も髪がずれないように頭を押さえていることしか気にしてないくせに。言ってやるけど、カッパハゲでも短髪とかなら目立たないし、かっこいい人はたくさんいるからね。貴方みたいな見かけを隠そうとせこいことをする人が恥ずかしいのよ! 鈴木君と佐藤君が腐ったみかん? 見かけだけしか見ていないから、そんな判断しかできないんじゃないの?」


 もう耐えられない。これ以上、この先生に命を弄ばれるのはごめんだ。


 私が怒りのままに叫ぶと、最初は澄ました顔をしていた先生は段々と顔を赤くしていき、ピキピキと音がしそうな程に血管が浮き出てくると、震える手を向けてくる。


「そ、そうやって早口で大声を上げれば先生が謝罪すると思ってるのですかぁ。皆、同じだ。少し厳しいことを言えば、言葉の体罰だと騒ぎ立て、部活のレギュラーに選ばれなければ子供の未来を閉ざすつもりかと文句を言う。モンスターペアレントなど、生温い表現だ。生徒に触れることさえ恐れて、言葉遣いすら気にしないといけない。失言を今か今かと待ち望み、先生の人生を貶そうとする悪魔たち。お前たちは再教育されなければならないぃぃぃ〜」


 その顔を憤怒に変えて、先生は鬱屈した心の声を叫び立てる。その叫びは狂気にも思え、そしてあたしたちには思い当たることばかりだった。


「農業のこと以外は全て消去するぅぅぅ〜。無駄な知識があるからいけないのだ。教師のみが知識を兼ね備えて、聖職者として敬われる世界。私は神農様の下、農王として世界に君臨し、この世界を正しき道へと導くのだ!」


 先生の右手に炎が集まっていく。なにか嫌な予感がするけど早まったかな?


「炎よ、魔を討ち破る力となれ!」


『メラギオ』


 詠唱を終えると先生はバレーボール大の燃え盛る炎の塊をあたしへと放ってくる。みかんビームだとばかり思っていたあたしは予想外のことに動くことができず、迫る炎に巻かれてしまう。


「うひひひ、わかりましたかぁ、先生の聖なる炎により、不良は焼却ぅぅ〜」


 ケラケラと笑う先生を、炎に巻かれたあたしはぼんやりと見ていた。


(あぁ……結局こんなところであたしは死んじゃうんだ。ごめん、お父さん、お母さん、あたしはここで終わりみたい)


 このまま焼かれて死ぬのだろう。焼死は人間が死ぬ中で一番に苦しいとか聞いたことがある。痛みを感じずに、死ねればいいな……。


 世界が静かになり、あたしは自身の終わりを迎えて……迎えて?


 熱さを感じない。この炎は幻なのだろうかと不思議に思っていると、よくよく見ると周りの景色が停止していることに気づく。哄笑する先生も、あたしを助けようとする鍵音ちゃんの伸ばされた手も停止している。


 時間が停止していた。そして、あたしの目の前に光の柱が聳え立つ。


「勇気ある者よ。あなたの心からの叫びを、強き意志を私は感じました」

 

 光の柱は人間の姿に変わり、柔らかな声が聞こえてくる。そこには空中に浮いている神々しい光を纏う半透明の羽衣を着ている天女がいた。優しい笑みを浮かべて、見たこともない美女は、驚いているあたしへと顔を向ける。


「私の名はフォルトゥナ。運命の女神フォルトゥナ。貴方は力を望みますか? 私を信仰し、運命を切り開く力を望みますか?」


 優しい声音が心に響き、あたしはゴクリと唾を呑み込む。こんな展開見たことある!


「もしかしてペルソ」


「違います」


「ここから様々な仲魔を」


「全然違います」


 違うらしい。がっかりである。それじゃ何をしてくれるのかな?


 なぜか疲れた顔になるフォルトゥナは気を取り直したのか、ニコリと微笑みを見せて人差し指を立てる。


「貴方は『スロットチャンス』にて揃いし図柄に従ったスキルやアイテムを手に入れることができます。ゴッドスキル『景品交換』です。このスキルがなければ、貴方の『スロットチャンス』は意味を成しません」


 ゴッドスキルとは凄い名前だ。でもスロットチャンスがないと意味がないのはバグじゃないかな。それと『景品交換』ってネーミングがカッコ悪いから、もう少しかっこよい名前が良かったなぁ。


「わかりやすい名前の方が言霊が強くなり、スキル作成のコストが大幅に減るので仕方ないのです。では、説明をしますね。スロットチャンスは最大5つの図柄を揃えることができて、揃えた数により貰えるアイテムは強く希少となります。スロットは4ラインまで賭けられるので最大4枚のコインが必要です。コインは1枚につき、貴方の寿命が1日必要ですが、貴方は若いので気にすることはありません」


 いきなりマシンガントークとなり、早口で説明をしてくるフォルトゥナにタジタジとなってしまう。

 

 なんかとても早口になって聞き取れないよ。え~と、頭を使う小難しいことは鍵音ちゃんに任せたいかな。とりあえず頷いておけば優しそうな女神様だし問題ないかな。

 

「さぁ、フォルトゥナに選ばれし数奇ランよ。貴方の力で運命を切り開くのです。最初からコインは9999枚に交換すると良いでしょう」


『運命の女神フォルトゥナの信徒となりました』

 

 コクリと頷くあたしに、フォルトゥナは文字通り輝く笑顔を見せて消えていくのであった。


 私を覆っていた炎が突風が巻き起こり、散り散りに拡散される。どうやら女神様が助けてくれたらしい。


 炎が消えて驚愕する先生が目に入るが、今はそれよりも気にすることがある。


 反撃の時間だ。


『スロットチャンス』


 ゆっくりと呟くと、目の前にスロットマシンが姿を表す。ゲームとかで見たことのがある見慣れたマシンで小瓶や剣、よく分からない図柄が並んでいる。その横にレバーがあり、右隅にコイン交換と表示されたボードがある。


「え~と、まずはコインに変えるんだっけ? 9999枚?」


 早口でよく分からなかったけど、とりあえず9999枚に変えれば良いんだよね? そんなにコインがあったらあたしは無敵になるよ!


 よく分からないけど、やってみれば分かるよねと、あたしはコイン交換に手を伸ばし━━。


「数奇っ! 『幸運』を祈るんだ! コイン交換に手を伸ばす前に!」


「ん? 『幸運』?」


 コイン交換に手を伸ばす前に、見野君が呼び止めてくる。その焦った表情はなにかとても大事なことを言っていると分かる。


『幸運』


『幸運が使用され、貴方に『命魔交換』スキルが取得されました』


『命魔交換は寿命を消費するスキルを使用する際に魔力で肩代わりするスキル。このスキルを持つ限り、寿命を消費することはできません』


 よく分からないアナウンスか脳内に聞こえてきて、コイン交換の表示がさっきまでは9999枚まで交換可能となっていたのに、1枚に変わっちゃった。


「なんかコインが減っちゃった!? あたしのコインは?」


 あたしの無双コイン生活がなくなったよ!? ここからスロットをしまくって、なんか強いスキルを手に入れようと思ってたのに。


「この窮地を逃れることが難しくなるが仕方ねーんだ! 数奇、ビギナーズラックを信じろ!」


 ぬぬぬ、コイン1枚だけでは当たりそうにないけど、元々あたしは運が良いから大丈夫!


 スロットチャンス!


 レバーを引くと、図柄が高速回転していく。目押しはできないようで、図柄は勝手に停止していき━━。


 剣の図柄が3枚揃った! やった、あたし偉い!


 最大5枚揃いのスロットで、3枚揃いは小さな当たりなのだろう。ピコピコンとしょぼいお祝いの音がして、あたしの前に魔法陣が描かれる。


 そして、魔法陣から現れたのはゲームでよく見たことのある変哲もない長剣であった。くすんだ鈍い光とあまり切れ味のなさそうな刃に、飾りもない柄と、ただの鉄の剣。


『新米剣士のロングソード。持ち主に新米剣士の能力を付与』


 だけど、これはただの剣ではないらしい。機械音声に従い、鉄の剣を握ると、手に持った瞬間にあたしは変わった。


 足の運び、腕の振り方、腰の使い方、呼吸の仕方。剣をどのように使うか、闘気の初歩的な発動、相手をどうやって斬るかが自然に脳内に刻まれる。


「なるほど……これが剣士なんだね」


 ゆっくりと鉄の剣を引き抜いて、先生を睨みつける。


「先生、どうやらあたしも力を手にしたみたいです。剣聖の力を!」


 今なら戦える。戦闘による忌避感は消え去り、心が高揚する。刃を横に構えて、あたしは告げる。剣聖、多分剣聖。剣聖も気からと言うからあたしは剣聖だ。


「ぬぬぬぬぬ、貴様は不良でーす! 他の神を信仰しましたね? 許されざる所業、ならば、この農王の名において、不良を焼却するぅ」


「もう先生でもなんでもない。人をみかんに変える貴方はただの化け物だよ!」


 両手に炎を宿して、憎々しい目つきで先生が睨んでくるがもう怖くない。


「剣聖数奇ランの初陣だよ!」


 地面を蹴ると、あたしは先生へと向かっていく。走り方も前とは違い、剣を持っても体勢が崩れないようになり、走る速度も闘気のおかげで速くなっている。


「きょぇぇぇ! 炎よ、不良を討ち破る力となれ!」


『メラギオ』


 迫るあたしに炎玉を先生が撃ち出す。だが、さっきまでのあたしと今のあたしは違う。生命力を力に変える『闘気』を使えるのだ。そして『闘気』を消費して発動させる必殺の武技も。


『オーラスラッシュ』


 迫る炎を前に、あたしは立ち止まると呼気を高めて、闘気オーラを纏わせた剣で一振りする。炎玉はあっさりと2つに切り裂かれて、あたしの横を通過していき、霧散する。


「な!?」


 言葉を失う先生へと剣先を向ける。炎玉さえ防げれば、もはや先生は敵ではない。


「これまでの所業を振り返って、後悔するんだね。おとなしく捕まれば、警察か自衛隊が来るまで、体育館倉庫にでも閉じ込めるだけにして━━」


 あげると告げようとして、複数の足音が聞こえてくることに気づく。……そういえば、信徒たちがいるんだっけ……。


 廊下の奥から、続々と現れる信徒たちを見て、少しやばいかなとあたしは額に一筋の汗をかくのであった。

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― 新着の感想 ―
 なんかいきなり寿命を9999日削れと言い出す女神が出てきてえげつな〜とドン引いた直後に聞こえた声。 >「この窮地を逃れることが難しくなるが仕方ねーんだ! 数奇、ピギナーズラックを信じろ!」 >ピギ…
物言わぬみかんを物言うみかんに変える景品が交換されたら…いや喋ったってみかんのママじゃどうもならんぞカッパハゲ。
ロウは信用してはいけないと女神が転生するゲームで学んだ私に死角はありません。
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