34マモ ルシフェルの新たなる力
戦闘描写がなかったこと。なぜルーの食べているご飯を奪おうとしなかったかということ。
実はこの2つは理由があった。地下2階はマーモット向けのダンジョンのため、マーモットがギリギリ通れる程度の通路というか穴しかなかったため、すれ違うことも、ご飯を奪おうとしても狭くて手が届かなかったことが理由だったのだ。
こんな狭いダンジョンに、そもそも人間は入れない。狭所恐怖症でなくても無理。幼女がもしかしたら這って入れるかもだけど、出れなくなって泣いちゃうだろう。
というわけで、下水管に詰まったゴミのように、モンスターたちも詰まってしまい、倒されないので、一階にリポップしなくなったのが食料危機の問題の一つであった。
取得できるスキルって、何かしら欠点があるんだよなぁ……悪意を感じるよ。まぁ、マーモットが作ったダンジョンなんだから、当然マーモット専用に決まってるでしょと言われればそれまでなんだけどね。ボス部屋がマーモット縛りの狭い部屋の時点で気づかないといけなかったのか。……気づくかっ!
「でも困ったわね。そうすると1日1回地下2階に掃除しにいかないといけないのかしら? 私は隅っこで寝るのに忙しいんだけど?」
応接室に戻って、リリーが隅っこに座り、満足そうにヘソ天で寝ちゃう。だめだこりゃ、リリーが解決策を出してくれることはなさそうである。まぁ、経験値がないとなにもできないんだから仕方ないといえば仕方ないんだけど。
「リリー様、キャベツと人参とジャガイモ炒めでございます。どうぞご賞味を」
「ピギーピピピピピピ(あら、気が利くわね。それじゃ美味しく頂くわ)」
そして、始祖を甘やかす下級マーモットたちの差し出したご飯をまきゅまきゅと食べて幸せそうでもあった。もちろん俺たちもご飯を奪い取りに行くので、壮絶なるギュイーンがあったと記しておこうかな。
閑話休題
「なるほど、天才たる僕は理解しましたよ。要は地下2階のモンスターたちを労なく倒していける方法が欲しいということなんですね?」
「直近の問題はそれだね。このままだと、皆はお腹いっぱいに食べて、ぐっすりと寝ることができなくなるんだ」
今はギリギリ食料は足りているが、やがて地下2階にモンスターたちは集まり、俺たち以外はお腹をすかせることになるだろう。俺たちは地下2階に引きこもって、永遠なる楽園を作ることが可能だから、大丈夫なのだ。
キャベツに埋もれて、お腹の空いた時に食べつつ、ギュイーンをして、眠くなったら寝るというこの世の楽園をマーモットは作れる。でも、それはマーモットたちだけだし、下級マーモットは無理だから考えないといけない。王って、大変な責任が撫で肩に乗るから苦労しちゃうよ。
でも、今回はルーが解決策を持っているっぽい。自信満々で、テチテチと近寄ってくると手を上に向けて、ルーは叫ぶ。
「ステータスオープン。そして、固有スキル『野望』取得です! さらに『野望』スキルを手に入れたことにより、僕のステータス表記は変化する!」
なんかカードデュエルのキャラっぽい言い方をすると━━。
映し出されたステータス表記が変化していた。
名前:ルシフェル
種族:マーモット+1
信仰する神:機神ハルカ
経験値:34000
MAレベル:0
MDレベル:0
基礎レベル:0
指揮:1
射撃:8
格闘:10
耐久:2
反応:18
魅力:25
ランク:E
「おおっ! リリーとガブに続いて、ルーも変化したのか! でも珍しいステータス表記だね。ステータスは指揮以降が示してるのかな? 上のは生産系?」
色々ゲームをやってきたけど、こんなの見たことないがない。うん、見たことがないので、小首を傾げてピピピと鳴くよ。
ルーが強化人間みたいなステータスだとか、全然思わないよ。初めて見る斬新なステータス表記だね。そろそろこの神様を詐欺師として訴えてもよいかもしれない。
「ふふふ、そうでしょう? 天才たる僕に相応しいステータス表記だと言えるでしょう」
ふんぞり返ると、ヘソ天で寝そべるルーは、ピスピスと鼻を鳴らして、自慢げだ。
「まず、MAやMD、基礎レベルですが、これは僕が作り出す機械に必要な技術レベルです。レベルですが、1上げるのにレベル✕レベル✕一万の経験値か、レベルアップクエストを行う必要があります」
「ふんふん、それだと膨大な経験値が必要だなぁ。普通に経験値を稼いでいたら、いくらなんでも必要経験値が多すぎる。レベルアップクエストがメインなのかな。開発も考えると、計画的に使わないと経験値があっという間になくなるだろうね」
うんうん、モビルなんとかではなく、マーモットだから問題ないね。絶対に問題ない。
「そして、レベルに即したマシンの開発にも経験値が必要です」
予想通りだな。
「生産する機械にも経験値が必要です」
「ふんふん、機械にも経験値が必要……け、経験値が必要!? お金や資源じゃなくて?」
さらっと言われたので流そうとしたけど、壊れることが前提の機械で経験値必要なわけ!? そんなのいくら経験値が入っても足りないじゃん!
「マーモットにお金や資源を確保するという思考はないでしょうと神様が親切に考えてくれたようですよ」
まもーん! 慌てる俺に対してルーは平然としているけど、資金や資源を活用しない縛りは厳しい。厳しいどころではない。詰んだかもしれないよ! 神様め、余計な親切心を! でもたしかにマーモットに資源とか用意しろと言われても困るけどさ。
「大丈夫です! この僕の知力を使いこなせば、壊れないように活用できます。あと、壊れても生産時に複数機体のスタックなら、一機でも残れば分裂して段々回復するそうです」
「機械が分裂するとか怖い」
「では、マーリンも納得したところで、僕の華麗なる戦略を見せます。まずはMDレベルを1アップ! そして、マモタンクの開発に経験値1000!」
俺の感想を華麗にスルーして、とっても楽しそうにペチペチステータスボードを押していくルー。ちらりと見たけど、開発一覧はマモタンクとマモコプターしかなかった。なんかとても弱そうな感じがするのは杞憂だと思いたい。
床が光ると魔法陣が描かれて、マモタンクとやらが召喚される。召喚じゃなくて、生産かな? 開発が終わると1部隊だけもらえるシステムの仕様なのだろう。
「ええと……これがマモタンク?」
「えぇ! これが戦闘力みたいです」
マモタンク 経験値500 5機編成
耐久力:5
戦闘力:1
『元々は超小型戦車であったが、シャーシ部分をマーモットのぬいぐるみに変えて、装甲と火力を犠牲に可愛さを追求した人気の戦車』
なんというか……1レベルの機体だなぁ。フォルムはなんというか……全長1メートル、全高30センチの……。
「マーモットのぬいぐるみがキャタピラに乗ってるだけに見えるね?」
キャタピラにマーモットのぬいぐるみが乗っかってた。それが計5機。
縁日のクジとかで一等と書かれて飾られている玩具っぽい安っぽさ。ぬいぐるみも結構適当に作られており、大きいのだけが取り柄で、ちっちゃい子供の誕生日プレゼントとかにしたら喜ばれそうかも。辛うじて、ぬいぐるみの背中に担いであるバズーカが戦車であることを教えてくれる。なぜに変えてはいけない部分を変えたのだろうか。
「この戦車は僕が手動で操作もできますし、委任モードにもできます。これで地下2階を巡回させて、モンスターたちを倒すように命じればリポップ問題は解決です」
「キャベツンにも負けそうだけど大丈夫?」
極めて不穏な戦車である。大人が間違って踏み潰しそうな予感もするよ。
「そこは数は力というところを教えてあげます」
不安なる俺にルーはペチペチとステータスボードを叩くことで応える。ステータスボードを叩く? はっ!
「量産したらダメ~! 戦車を大量に生産すると後で苦労するんだよ! ギュイーン!」
慌てて止めようとギュイーンをするが、時すでに遅かった。次々と量産されるマモタンク。その数は20部隊にして、経験値一万消費也。
「狭いよぅ〜、なにこれぇ?」
「邪魔な玩具だな。齧ってやる」
「隅っこに座れなくなるから捨ててよ」
そしてそこまで広くない応接室にはマモタンク100機が積み重なり、それぞれ寛いでいたマーモットたちは呑まれちゃうのだった。あ、一機ガブに齧られて爆発した。
━━結局苦労して応接室から出すと、地下2階に向かわせた。100機を応接室から出すのは苦労したし、廊下を行軍させていく中で幼女や子供たちが楽しそうに何機か持ってったけど、この戦車は幼女が持ち歩けるくらい軽量化に成功していて泣ける。
「全滅しそうなら退却するように指示を出しました。これなら大丈夫ですよ。僕の傑作ですしね」
「あー、うん、まぁ、一応はキャベツンたちに勝てることは分かったし、使わないのはもったいないもんね」
さすがは最弱モンスターたち。一応戦車と名前がついているだけあって、キャベツンたちに体当たりされても、壊れることなく、ひっくり返ると、マーモットのぬいぐるみの手で起き上がれるし、戦車砲は一応キャベツンたちの核石を破壊した。3機くらいでようやく倒せる強さだけど、倒せるなら良いとしよう! マモタンクの戦車砲は多分一般的な人間のパンチ程度の強さしか無さそうだけどさ。
溜息混じりで、地下2階へと入っていくマモタンクを見送りながら、ルーへと期待を込めて話しかける。
「なぁなぁ、それじゃ他の技術レベルも上げてみようよ。基礎レベルがやっぱり良いかなぁ?」
面白そうなスキルだし、俺もやってみたいけどワールドスキルなら無理だもんね。ルーに頼るしかない。
「良いですよ。それでは次は━━」
「回し車作れました〜。触れ合いコーナーに置きましたよ〜」
ホールにやってきた下級マーモットが一仕事終えたぜと声を上げて━━。
「僕は極めて重要な用事ができましたので失礼します。後はマ王たるマーリンに任せました!」
目をキラキラと輝かせて、風よりも早くルーは触れ合いコーナーへと走り去るのであった。触れ合いコーナーとはマーモットと触れ合いできるところだよ。俺たちは賢いから触られても噛まないのだ。苦労している避難民たちに癒しとなればと作ったのだ。
あの状態のルーを連れ戻すのは絶対に不可能。しばらく回し車をしてなかったから、今は夢中になって走っているのは想像に難くない。どうするんだよこれ、マーモットのデメリットが発生しちゃったよ。
「あぁ~。委任って言われてもどうすれば良いんだよ。俺はルーのステータスを操作することなんか━━」
『できますよ?』
「え!?」
肩を落とすマーモットに、レイが言葉をかけてくる。
『できる?』
『はい。マ王の固有スキル『マ王の政』を取得すれば条件はありますが、国民のステータスボードを操作できます』
ほほ~。それはそれは。面白そうな話だから、詳しく教えてくれるかな?
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