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異世界でマーモットの王となりました  作者: バッド
1章 俺たちマーモット

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33/56

33マモ 探索隊

 ━━下級マーモット族が1000人も仲間になって1週間後。俺たちの拠点はピンチを迎えていた。


「俺たちの巣に非常に危機的な状況が静かに訪れています。皆どう思う?」


 元応接室にて、マーモットの巣となったお部屋でマ王マーリンは難しい顔で仲間へと顔を向けていた。


 窓の外では吹雪が吹き荒れて、積雪はもう2メートルを超えている。極寒の地と変じたこの土地で、ショッピングモールを手に入れられたのは幸運だったよ。あのまま移動せずにいたら俺たちは冬眠していただろう。凍死ではなく、冬眠となるのがマーモットの強みだよね。


 とはいえ、それは選ばれし優秀な獣であるマーモットだからこそであり、人間たちにとってはそうではない。もはや冬が終わるまでダンジョン化して温暖な気温で管理されたショッピングモールから一歩も出られない。


 人間にとっては、この拠点は命綱である。それなのに危機的な状況が発生しているのだ。


「なぁに? 私のダンジョン経営に問題があるって言うの? 完璧に経営してると思うわよ?」


 ソファの隅っこに、のーんと座る妖艶なるマーモットは気だるげにあくびをする。一応妖艶としておこうと思います。


「新たにモンスターも創ったでしょ? それに今までのモンスターたちも経験値を一万も使って10倍の数をポップするようにしたんだから。それだとショッピングモールがギチギチになるからって、地下2階も一万使用して作ったのよ?」


 内訳はこうだ。


『施設:モンスター量産施設:モンスターのリポップが十倍となる』


『施設:地下2階増設:地下2階が作られる』


『モンスターレベル1を3種類追加:空りんご、あま女王いちご、マジックコーン』


 リリーは合計23000点の経験値を消費した。手持ちの経験値を全て消費したとも言う。果物多めでマーモットとしては嬉しいラインナップだ。


 1時間に各モンスターが百匹ずつポップすれば、かなりショッピングモールはすし詰め状態となる。ダンジョンは常にモンスターの最大数を制約しているため、放置しても百匹以上は増えることはないが、それでもかなりうざいのは間違いない。なので地下2階も増設してもらい、食料問題も住居問題も解消したはずだった。


 さすがに1000人が住むには、ショッピングモールが広くても厳しいし、住居問題と食料問題の両方を解決する方法のはずだった。


「うん、俺たち的には上手くできたよね。俺たちだけならば。実際はどうか見に行こっか。百聞は一見にしかずというしね」


「良いわよ。私のダンジョンのどこが問題なのか見せてもらいましょうか」


「なんか楽しそうだから俺様も行くぞ!」


「天才たる僕がマップを覚えますので安心してください」


「いってらしゃーい」


 ミカだけは生贄となり、抱っこ大好き幼女のお膝の上で、手を振り見送ってくれる。だってニニーは必ず一人はマーモットを抱っこしないと、泣いちゃうのだ。


「今日は、服を着ましょうね〜、かーいい服を見つけてきたんでしゅ」


「寝てるからお着替えは任せたよぉ」


 ご機嫌なニニーに服を着させられても、うとうとと舟を漕いでいるので放置しても大丈夫だろう。


 ━━ショッピングモールはだいぶ様変わりしている。


 廊下を歩くだけで違いがわかる。以前は店舗であった場所は全て住人の家として割り当てられており、店舗ではショッピングモールにあった品物を分解したり、上手く改造して家具にしたりと忙しい。廊下にいる人たちも、雑談をしながら魔物たべもの)がポップしないか待っており、下級マーモット族とおしゃべりをしていた。子供たちは真冬でも暖かいため、薄着で走り回っており、おばさんたちが井戸端会議をしていた。


 平和な光景だ。外は雪であるところを見ると、ここは天国かもしれない。何よりもマーモットとも触れ合えるしね!


「お、マーリンちゃんだ。いつもの散歩かな」


「こら、お前。マーリン陛下、もしくはマーリン様と敬え」


「お手々触って良いかなぁ? うわ~、握手してくるよ、この子たちって利口よね」


 廊下を歩いていると囲まれちゃうモテモテなマーモットだ。必ず誰かしらが頭や背中を撫でてきて、お鼻をツンツンとつつき、握手を望む。前世ではこんなにもてたことがないから困っちゃうな!


「ピギーピピピ(はいはい、お触り禁止。今日は仕事なものでね。どいてくれるかい?)」


 売れっ子アイドルのように手を振って調子に乗ったりもします。ふふーん、いい気分。ノシノシと歩くと、子供たちがキラキラした目でついてきていたりする。


「ピギーピギーピピピ(やれやれ、もてすぎるのも考えものだな)」


 前世では一度は言ってみたかったセリフを口にして、俺たちは目的地に向かうのだった。


            ◇


 正面玄関のすぐ脇に地下2階への階段は配置されている。誰かが間違って入ってしまったりしないようにだ。まぁ、大丈夫だとは思うんだけどね。


「いつきても、地下2階は殺風景ですね。そのおかげで天才たる僕はこの地下2階のマップは覚えましたが」


 ルーが器用にスキップしながら前を進むのを、俺とリリーは続く。ガブ? ガブは子供たちに攫われたよ……。人参を見せられたら2本足でテチテチとついて行ったとも言う。


「私の能力だと迷宮のマップ手に入らないから助かるわ」


「リリーのダンジョンマスターって、使いにくいよね」


「ランダム要素が多いのは認めるわ。ポップモンスターは私を攻撃できないだけで、操ることができないし。せいぜいリポップ場所を設定するだけよ」


 リリーがため息をつくが、そのとおりなのである。ダンジョンマスターのレベルが低いせいもあるのだろうが、モンスターは基本ポップさせるだけなのだ。だからこそ、このダンジョンのモンスターは食料として食べられるからだけでなく、幼女でも勝てる低いステータスのモンスターだけをポップさせている。レベル1でもスライムやゴブリンだと、事故る可能性が高いしね。


「少しずつパワーアップさせていけばいいと思いますよ? 天才たる僕も毎日走っているから、一番速いんです」


 慰めの言葉を言うルーはたしかに俺達の中で一番スリムだ。ほっそりとした身体つきは、デブリスと呼ばれる俺達よりも、ジャイアントリスと呼ばれる方が相応しい。そのスリムな身体つきは伊達ではなく、一番速い……と思いたい。


「なんでも経験値が必要なんて不便よねぇ。もう少し使い勝手よくしても良いのに」


「いや、水道や電気が使えて、食べ物も手にはいるんだから、これ以上ないスキルだよ。まぁ地下2階はあてが外れたけどさ」


 増設された地下2階は古き良きダンジョンだった。どういうことかというと、荒い石造りの通路が続く迷宮だったのだ。明かり自体は天井が仄かに光り問題ないが、それでも先の方は薄暗く不気味だ。


 まさにダンジョン。冒険者ホイホイとも言われる古典的な迷宮。前世では俺はWizard◯yとか、剣とマーモットと学園モノとか、ダンジョンもののゲームが大好きだったからワクワクしちゃった。まぁ、リリーの作った場所だからモンスターも地下の配置も覚えてるんだけどさ。


「見つけましたよ。僕が先制攻撃をします!」


 マーモットくらいの大きさのいちごが空中に浮いているのを発見して、ルーは怖がることなく走り出す。自慢するだけあって、その走りは速い。


 あま女王いちごの得意技は体当たりだ。というか、新しいモンスターたちも体当たりしかしてこないんだけどね。


「天才たる僕が華麗にこのイチゴを倒すところを見ていてください」


 甘い物大好きだよと、ルーはあま女王いちごに齧りつき夢中になって食べる。お口の周りを真っ赤にして、鼻先まで巨大イチゴに突っ込んじゃう。


「さぁ、あっという間に食べますよ!」


 シャクシャクシャクシャク


「ふふふ、いつもみたいに食べに来ないんですか?」


 シャクシャクシャクシャク 


「……」


 シャクシャク


 そして、そっとイチゴを退けるルー。遠くへと視線を向けて鼻をヒクヒクさせると、その場に寝そべってしまう。お腹いっぱいになった模様。


 うん、大きすぎるんだよ、この食べ物。俺たちだけじゃ食べきれないんだ。それが分かってたので、俺たちは待っていた。文明的になったもんだよね!


 そうして虚無の瞳を俺たちに向けると一言。


「もう帰りますよ。天才たる僕の記憶によると、このダンジョンはここまでです」


 天才たるマーモットのルシフェルは、ここまでしかマップを覚えていなかった。文明的になったもんだよね!?


「僅か数十メートルか。それなら誰でも覚えられるよ」


 ここまで直線だったよ。赤ん坊でも覚えられる。というか、ここまで進めば確実に一匹はエンカウントするから、お腹いっぱいになって引き返すのね。貯めておくという思考を持たないマーモットらしいよ。


「この地下2階はかなり広いのよ? ダンジョン部屋までは寄り道しなくても半日はかかるのに、もう終わり? それを私のせいにしてほしくないんだけど?」


 残りのイチゴをシャクシャクしながら不満げなリリー。しっかりと作ったのに、全然探索をする気がないので、少し怒ってもいた。


 でも違うんだ。そうじゃないんだよ。


「不満はわかるけどさ、今度は俺が先頭になって倒したモンスターはアイテムボックスに入れて進むよ」


 もう動きたくないよと、ゴロゴロするルーを引きずって、俺たちは進む。


 曲がり角があり、行き止まりもあり、レベル1ダンジョンらしく罠はなく、広いだけだ。そのかわりに、ちょくちょくモンスターとエンカウントして、かなりの数を倒した。


「リリー、敵のポップ場所を廊下としか限定しなかったでしょ?」


 ようやく地下2階を脱出したのは、もう夕暮れになるところだった。弱いとはいえ、数百匹を倒すのは大変だったよ……。


「そういえばそうね。皆地下2階のモンスターを倒さないから、地下2階にどんどん溜まっていったのね。困ったものだわ。これが問題のわけか」


 モンスターの最大数は決まっている。一階だけを倒していけば、地下2階にどんどん偏るわけなのだ。そのため、人口が増えたことも相まって、地味に食料が減っていたのだ。


「でも、何で皆地下2階のモンスターを倒さないのかしら」


 心の底から不思議そうなリリー。


「それはね、地下2階がマーモットの巣穴くらいのサイズだから人間が入れないの!」


 リリーのダンジョンはマーモット向けだった。なので天井までは50センチしかないダンジョンなのだ。これは困ったねと、俺は肩を落とすのであった。

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― 新着の感想 ―
地下2階に入る時、みんなマーモットサイズになるDrink meボトル用意して置けば。腰に手を当ててみんなでごっくん。
 広々としてるし攻撃も体当たりだけで毒や麻痺なんて絡め手を使わない素直な甘味系モンスターしか出てこない素敵なダンジョン拡張version2なのに何処が問題なの?と読んでて読者も思ってたら──マーモット…
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