31マモ マ王で良かった
マ王で良かった。本当にそう思う。
『経験値5000を消費し、マ王専用スキル『マーモットパワーレベル2』を取得しました』
『マーモットパワー:マ王第二形態で使用可能。レベル倍率の能力向上を行える』
うんうん、マ王は一度は殺されても大丈夫な上にパワーアップできるらしい。界マ王拳を使えるようになるのね。死んだ時は心底焦ったよ、この世の終わり、こんなところで死ぬなんて打ち切り漫画かなとも思っちゃった。
『たとえ、眠りの魔法で寝ている間にボコられても、即死呪文で即死しても、チェンソーで真っ二つにされても、マ王は復活して第二形態になるので安心してください。第一形態に戻るのは24時間後です』
『マ王恐るべきだね。マーモットの王でも形態変化できるのとの疑問は心の奥にしまっとくね』
正直、毛皮がちょっぴり黒くなっただけだけど、優しいマーモットはツッコミは入れない。それにこの権能のお陰で助かったしな。でも、第二形態も育成しないといけないって、経験値足りなくならない? 普段使うスキルとの兼ね合いも考えて育てないといけないだろう。
『おめでとうございます! 貴方は世界の新人類候補たるボスモンスターを倒しました! 経験値一万点取得。しかも小動物なのに新人類候補を倒すという歴史上初の快挙です。そのため、貴方に特別に経験値一万点を差し上げます!』
ブレイクを倒して大量の経験値をゲット。……でも、新人類候補ってなんぞや?
『AIアシスタントはあくまでもアシスタントなので、その疑問には答えられません』
絶対に知ってそうなのに、教えてくれるつもりはないらしい。
『そんなことよりも、新たなる王スキルが解放されました。経験値10000を消費して、王専用固有スキル『飯屋』を取得しました』
『ねぇ、俺がなにも言ってないのに取得するのはアリなの? アリアリなの? もう少し考えさせてくれても良いんじゃないかな?』
『専用とか固有とか解放されましたというセリフ好きですよね? 取得するのはどうしようかなと迷うフリをして、100%取得するんですから時間と行の無駄です』
抗議すると、痛い反撃が返ってきて、まきゅの音も出ない。たしかに取得するけどさぁ、「王専用スキルの解放だって!」とか驚くマーモットの姿を見たくないのかな。ピョンと飛び上がって、焦って走り回るくらいの演技はするよ?
『飯屋:王専用固有スキル。お腹のすいた者へ救いを与える』
AIアシスタントは俺の言葉を無視して、スキルの内容を詳細するので、ピギーと鳴いて良いかもしれない。
にしても、食べ物を生み出すスキルかな? どのへんが王専用かさっぱり分からないけど、百聞は一見にしかず。使ってみるか!
『飯屋』
ブレイクとの戦闘でめちゃくちゃとなった地面に立つと、ワクワクしながら、片手を上げてスキルを発動するように意識する。キャベツ屋さんでも出現するのかなと、気楽に考えていたら━━。
「むおっ!? な、なにこれ?」
天を埋め尽くす巨大な魔法陣が描かれて、光の柱が地上へと振り注ぐ。激しく眩しい光なのに、なぜか目に痛くない柔らかな優しい光。
「敵の攻撃か!?」
「光の柱? 天使?」
「さすがはボスでありますね。天使を召喚するのでありますか?」
と見張りの兵士は腰を抜かして、アミはマイペースに拍手を叩き、ガブたちはもう夜だよと巣に戻っていていなかった。寂しいから置いていかないでほしいんだけど。
「めがー、めがー」
置いてけぼりにされて寂しいので、とりあえず眩しいふりをして、マーモットはコロコロと転がってみる。キャベツ屋さんが出現しても、あげないからなと頬を膨らませていたけど、光の柱がおさまったあとを見て━━。
多くの男女が寝ていた。寝ていたというか、転がっていた。
「なんじゃこれ!? キャベツ屋さんは?」
まもーん、衝撃的な真実、飯屋スキルはキャベツ屋さんを呼び出すスキルではなかった。
マーモット夢のスキルだと思ってたのに! ぷにぷにほっぺを震わせて、俺はピキーと鳴くのであった。
◇
『王国民:下級マーモット族』
光の柱から現れた人々の正体だ。皆、見かけは人間なのに、下級マーモット族、アミと同じくマ族となっている。
現れたのは千人程度、かなりの人数だけどどういうわけ? 見張りの人たちも、大口を開けて唖然としている。そうだろう、そうだろう。なにこれ、召喚術?
倒れていた人たちは頭を振って、次々と起き上がると━━俺を見つけて土下座してきた。
「巣穴の中で眠りこける偉大なるマ王様に拝謁いたします」
まるで俺が神のような態度。セリフは悪口に聞こえるけど、マーモットだから褒め言葉なんだろう。総勢千名、こんな大勢の人間に崇められるなんて━━崇められるなんて━━。
「ピギーピギーまきゅまきゅ(うむ。くるしゅうない。頭をあげよ)」
もちろんマーモットの王として、ノリノリでもふんとお腹を見せて座ると、鷹揚に手を振り偉大なところを見せちゃうのだった。地面がぬかるんでいて、少し気持ち悪い。
「おぉ、偉大なるマ王様のヘソ天だ! お腹がたぷんたぷんして触り心地が良さそうだ!」
「深淵を覗き込むような虚無の瞳が可愛いわ!」
「ぼんやりとして、なにも考えていなさそうな御姿は肖像画として残すべきだ!」
俺の姿を見て、感動して大騒ぎする人たち。悪口じゃないよね? 本当に悪口じゃないよね?
少し疑わしいが、マーモットに対する褒め言葉なのは、彼らの目を見れば分かる。あれは本気だ。
ということはだ。
『ねぇねぇ、なにが起こったの? この人たちはどこから現れたの?』
『この者たちは滅ぼし地球の死せし人間の魂です。善の最低ラインを超えた者たちが『飯屋』により救いあげられました。可哀想なので救済措置として神様が新たなる人類として再生されたようですよ』
『日本を召喚して地球は滅んだのに、今さら救済措置をするなら、最初から召喚禁止にしておけば良かったのにね』
『この召喚ルールを作ったこの世界の神様は、地球を滅ぼした罪により、次元を旅する調停者にワンパンで滅ぼされました。そして、被害を受けた地球の神々は滅んだこの世界の神々に代わり、この世界を管理することとなったのです』
ふむふむ。なるほどね。この世界の神様は馬鹿なのかな? やり返されるとは思ってなかったか、自分の力に自信があったのかしらん。でもワンパンで倒されるなら弱かったんだろう。
『滅ぼされた地球ですが、一応は善人がいたので、救済されて、新たなる人類として、これからは王に従います。まぁ、善人と言っても最低ラインを超えた者たちなので、あまり期待しないほうが良いでしょう。この世界を管理する神々は信仰心を手に入れて主神となるべく、再生された人間を駒にしますしね。神様は善なるものではありませんから、ルールに従い暗躍しています』
『神々の世界も大変だなぁ』
遠回しに言ってるけど、ゴブリンを利用して主神となろうとした神様は、俺がゴブリン皇帝を倒したから終わりになったのか。新人類候補ねぇ……。
『ちなみに神々は普通の人間や、エルフやドワーフ、獣人などに加護を与えて利用しています。ゴブリンは大穴狙いのかなりの変わり種ですね。ほら、見たことかマーモットに倒されたじゃんと、ゴブリンを加護することに決めた神様は他の神々に馬鹿にされて泣いてます。そもそも負の想念に加護を与えるのは極めて危険なことになるので、これからは負の想念から生まれた者には加護禁止とルールが追加されました』
ゴブリンは繁殖力もあるし、強いと考えたのだろう。マーモットに出会ったのが運の尽きである。
『小動物は? 俺にも神様の加護あるよね?』
『知性が元々ない存在は誰も見向きもしないので、神様の加護はありません。なので可哀想にと、ゲフンゲフン。禁則事項です! 誘導質問禁止!』
ペラペラと喋りすぎたのか、プンスコ怒るレイ。勝手に喋っていたのに、誘導質問とはいかに?
マーモットを加護しているのは神様じゃないのかなぁ? まぁ、いいか。神様の世界は俺らには関係ない。それに俺に加護を与えてくれる神様はコロコロ名前変わってるし、たしかに神様かどうか疑わしいしね。
『そうか……でも王政で良いわけ?』
『王同士の争いはロマン溢れるし、わかりやすくて良いと神々は満場一致で採決されました。それに王が倒されると弱体化するだけで、全滅するわけではありませんしね』
酷い神々である。王の配下に対するステータスバフは馬鹿にできない大きさなのにね。
『これからも偉大なる業績を上げれば、そのたびに国民を創造できるでしょう。マーモット族を率いて頑張ってください』
マーモット族をねぇ……。でも、この人たちマーモットに見えないよ? どこからどう見ても人間だ。
『下級マーモット族は爪や毛皮などの部分的な部位を肉体に一時的に宿せます。中級なら一定時間マーモットに変身できて、上級で完全にマーモットになれます。そして、マーモットになった人たちはのほほんと生きる予定です』
『竜神官が、最終的に完全な竜になることを目指すようなものか。たしかにマーモット生は最高だもん。わかるよ、みんながマーモットになりたい理由』
うんうん、そうゆうわけなのか。これから彼らはマーモットになるべく頑張るわけね。
総勢千名の下級マーモット族は、キラキラと星を飛ばしそうな憧れの瞳で俺を見ている。なら、これからは王として俺が率いるべく、皆へと宣言しよう。
「ピギーーーーーーーー」
むふんと立ち上がり、息を吸うと、息が続く限界まで鳴く。
「わぁぁぁぁ、王様バンザーイ!」
「ありがたや、ありがたや」
「命をかけてついていきます!」
俺の宣言に、皆が大興奮して、夜中であるのに、皆の声が響き渡るのであった。
マーモットの宣言と言ったら、鳴き声だよね!
━━こうしてマーリンは、『マ武の強』と言われる強き国民を仲間にするのであった。
そして、数日間は遠方の空に光の柱が振り注ぐ。それは異世界において、王たちが乱立する群雄割拠の世界と変わったことも示していた。
『とりあえず、皆に服を配るね?』
それと下級マーモット族は服を着ることもルールとしました。
◇
名前:マーリン
種族:マーモット+1
信仰する神:適当神ハルカ
経験値:10000
マナ:67
筋力21
敏捷28
器用21
魔力20
国民:始祖4人 下級マーモット1001名
固有スキル:マ王、小動物の加護、理解、進化レベル1、始祖、マ闘士、ネームド、マーモットブレス、飯屋
スキル:念動力レベル2、ギュイーン(使用済み)、アイテムボックスレベル2、デビルバギーレベル1召喚、デビルアーミーレベル2召喚、複数召喚レベル1、言語読解レベル2、念話レベル1、体術レベル2、魔力操作レベル1、魔力障壁レベル1、マーモットパワーレベル2
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