表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日本に転生した後に異世界に召喚されてマ王になりました  作者: バッド
1章 俺たちマーモット

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/5

3マモ これこそマーモットの力だ!

 じわじわと近寄ってくるブラックスライム。床が少し溶けてて、触るのは極めて危険そうである。あと、腐臭が酷い。マーモットにはきついんだけど。


「じゅいっ!」

 

 鳴き声にも似た音を立てると粘体の一部を伸ばして触手へと変えると俺に向けてくる。


「とやっ」


 しなりながら襲い来る触手をバックステップで回避する。ビタンと音を立てて、触手がぶつかったフローリングは少し焦げていた。そのまま触手を引き戻していくけど、床が捲れてツンと鼻にくる酸性の臭いに顔を顰めてしまう。


「じゅいっ」


 再びのバックステップ。二本足でバックステップするリス。その名はマーモットだ。ステータスが上がる前もバックステップで少し後ろに下がれた。今の俺なら数メートルを跳べる。


 ポテポテの少し肥満気味の大きなリス。簡単に倒せると思っていたのだろう。しかし華麗にポテッポテッとステップを踏んで躱す俺を見て、ブラックスライムは触手を増やして、連撃を繰り出してきた。


「それでも当たらないな! マーモットの素早さを甘く見て貰っちゃ困るぜ!」


 ピギーピギーとからかいながら、迫る触手を次々と躱していく。敵の触手はそこまで正確ではなく、時折頭の遥か上を通り過ぎたり、全然別の所を攻撃したりしてるので、危なげなく躱せる。お客がいたら喝采間違いなしの二本足で踊るように回避する華麗なるマーモットの舞。動画に誰か撮っていて欲しかった。


「そして、椅子アタックだ! これでもくらえっ! ふぬぬぬぬぅ」


 転がっているおしゃれな椅子の脚を掴むと身体を思い切り回転させてブラックスライムへと投げつける。オーナーごめん、でも今は生き残るために必要なことなんだ。 


 ステータスが上がっているため、本来は持ち上げることのできない椅子もなんとか持てるので、ハンマー投げよろしくブラックスライムにぶつける。ブラックスライムは避けることなく、椅子はずぶずぶと呑まれて変色していく。そうして数秒経過すると、ボロボロに崩れて溶けていき、完全に呑まれてしまうのだった。


「うげ。肉体は全部強酸なのか? いやそれならそもそも床が溶けて這うこともできないはず。とすると飲み込んだ物を溶かすために体内で強酸を分泌するのか」


 『理解』のスキルの力のお陰か、敵の能力を冷静に観察しつつ能力を測っていく。


(音に反応しているのか、それと振動か? 俺を正確には認識していない。触手がたまにあらぬ方向に飛んで行くところを見ると、たぶん人間サイズと思ってるんだ)


 今の俺はマーモットにはあるまじき高いステータスだ。踏み込みの時の振動は小さい動物の体重以上だろう。そこから予測される体格もかなり大きいと推測しているのだろう。


 てい、ともう一個椅子をぶん投げる。ブラックスライムは先程と同じように椅子を溶かしてしまうが、今度は冷静にじっと観察する。


 よく見ると粘体の一部が液体状になって溶かしている。酸性を持たせる時だけ形状を変えているのだ。


(ということは、弱点がなんとなくわかってきたけど……。マーモットだから決め手に欠けるな。人間なら椅子やら机をたくさんぶつけてやるのになぁ)


 爪の生えたちっこいお手々。ラブリーなマーモットだけど、人のように器用な手ではない。力はあっても、投げるには大きな動作が必要でどうしても隙ができちゃう。


 どうしようかなと、お鼻をヒクヒクさせて、テーブルの間をちょこまかと逃げ回ると業を煮やしたのか、ブラックスライムは触手を収めると、身体を震わせていく。体内に気泡が幾つもできて、とても嫌な予感。


「テーブルシールドッ!」


 慌てて倒れたテーブルを盾にすると、ブラックスライムが酸を吐き出した。ホースで水を放ったかのように細まった酸がテーブルにぶつかる。


「あびばびば」


 テーブルは煙を上げるとあっという間に溶けていき、俺は慌てて次のテーブルに飛び込む。あんなの食らったら骨も残らないよ! マーモットはちっこいんだぞ!


 吐き出した酸のブレスは数秒で終わり、ブラックスライムは再び身体を震わせ始める。どうやら食べることは完全に諦めた模様。


「マーモットは食用にもなるよー。ここはブレスはやめて触手で━━あぶねっ!」

 

 自らを餌にしようと、果敢に話しかけるが無視されて、またブレスが吐かれる。そりゃマーモット語はわからないよな。飛び散る酸の飛沫だけでも、受けたら大怪我になりそうだ。


「こりゃ、早く対応策を考えないと! 骨まで残らず溶けちゃうよ!」


 焦りが焦りを呼ぶ。スキルを取得しないといけないけど、多すぎてどれを取れば良いかわからない。マーモットでは使えないスキルとか困るのだ。魔法も学ばないと意味がないとか罠があるかもだし。『小動物の加護』の悪辣さを考えると油断できない!


 となるとだ……。そうだ!


『理解』


 自分へと向けて、『理解』を使う。『理解』はその存在を知ることだ。『鑑定スキル』と異なる点は、活用方法が分かること。『鑑定スキル』とは似ているようで違う……と思いたい!


『マーモット:ちっこい小動物。冬眠をする種族。二本足で器用に歩き、まるで疲れたおっさんのようにぐーたらする姿がラブリー。器用ではあるが所詮小動物なので、道具を使うのならば『念動力』スキルを取るのが良さそうです』


 キタキタキター! 疲れたおっさんがラブリーかどうかはわからないけど、使用するスキルが理解できれば問題ない。


「『念動力』スキルを取得!」


『経験値千を消費し、念動力レベル1を取得しました。念動力により最大14キロの物を操作できる。物理に反応するため、体内に潜り込んだりはできない。マナを消費することはなく、精神力で扱う』

 

 またもやAIアシスタントさんが、問い返すことなく、勝手に取得しちゃう。けれども取得したとたんに、頭に使用方法が入ってくる。なんというか不思議な感触だ。


「14キロって、なんか切り悪くない? ……そうか、本来は10キロなんだな。それが70%まで落ちて、さらに小動物の加護で威力が倍になったのか! なるほど、それで使い方は、と」


 詠唱が必要みたいだけど、小動物は無詠唱スキルがある。なので、念じるだけで使えるらしいので、念じてみる。


(テレキネシス〜、念動力〜。うおっ、なんか出た!)


 必死になって念じると、なんか身体から靄が出てきた。


(な、なんだコレ? これが念動力の塊? ん~と、こうかな? 椅子を持ち上げろ〜)


 念じると瞬間移動かと思う速さで、靄は椅子を包み込むと念じた通りに浮かべる。おぉ、すげ~、これが念動力の正体か! 使ってみて分かる念動力と。


 異能力である。ファンタジーな能力だ。マーモットになっても嬉しくなり、チャカチャカと足踏みをしちゃうけど、それどころじゃなかった。


 未だにブラックスライムは諦めることなく酸のブレスを吐いてきている。……ふむ? でも、あれって……?


 少し思うところがあって、念動力の靄をブレスの軌道の前に浮かべると━━ビシャアッと弾いてブレスを防ぐ。


「やった! あのブレスは運動量を含めても14キロはないんだな! いや、それ以上あっても防ぐことはできるかも! これ、矢や魔法に━━うぐっ!?」


 ちっこい手を握りしめて、スンスンと鼻を鳴らして喜ぶけど、なんか頭を抑えつけられたように重くなる。ゲゲ、マナを使わずに精神力を消費ってこういうことか。なんか少し気持ち悪いし、さっさと片付よう。


「じゅじゅっ!?」


 自信のあったブレスを弾かれて驚いてるのか、触手をゆらゆらとイソギンチャクのように揺らしてブラックスライムは動揺を見せる。たぶん靄が見えないから突然空中で弾かれたように見えるのだ。


「ふふん。単細胞生物でも少しは知恵があるのかな? これからは俺のターンだ!」


 かっこよいセリフを倒れたテーブルに手をかけて、影に隠れて告げるマーモット。それが俺だ。ラブリーでいまいち決まらないけど、デンと姿を現したら溶かされるからね! 


「それじゃ、どれくらい物を溶かせるか見せてもらおうか、ピギー!」


 警笛のような鳴き声をあげて、あちこちに転がっているテーブルや椅子を念動力で投げつけていく。ぽいぽいぽいぽいと!


 まるで粗大ゴミをゴミ箱に捨てるかのように、ドンドコ投げつけていくと、片端から溶かしてはいくがさすがにオーバーフローとなったのか、段々と溶かすスピードが落ちてくる。


 キラリンと虚無の瞳を輝かせて、俺は予想通りの結果にニヤリとする。


「お前、溶かす時に体の一部を酸に変えてるだろ! とすると、粘度がないから、こうなるんだ! とりゃあー! トングアタッーク!」


 夢中になって物を溶かしてガラクタと合成されたようなブラックスライムに、トングを浮かべると投擲する。トングは念動力により、ブラックスライムに勢いよくぶつかり、しかも身体を酸に変えているため、反発することがほとんどなく潜り込んでいく。


「トングが溶け切る前に、核を潰すっ! 最大出力テレキネシストーング!」


 ちょっと格好悪い必殺技名だけど、効果はバッチリ。念動力に押されて潜り込むトングは遂にブラックスライムの核に辿り着くと、そのまま核にめり込んでいく。


「ふぬぬぬぬぅ、おりゃぁぁ!」


 意外と硬い核に、頭痛を感じながらも俺はトングを強引に推し進め━━。


「ジュイーーーー!」


 ブラックスライムの断末魔と共に、核を破壊するのであった。

 

『おめでとうございます! 貴方は異世界で初めてボスモンスターを倒しました! 経験値千取得。しかも小動物なのに道具を使うという歴史上初の快挙です。そのため、貴方に特別に経験値一万点を差し上げます!』


 そして、さっき見たばかりのログが表示されて━━。


「うぅ、モーだめ。ピギー」


 激しい頭痛に耐えられなくなり、ペタリと床に寝そべっちゃうのであった。


 もう立ち上がることができない。マーモットは精神力も低いんだよ。俺の精神がか弱いわけじゃないよ。


 気持ちわる〜。お昼寝しよっと。おやすみ〜。


 疲れたら寝る。危険がなくなった俺はマーモットの本能に従って、ゆっくりと目を瞑り眠りに落ちるのであった。


 外は危険そうで、人間ならすぐに行動するだろうけど、俺はマーモットだからね!

ルックスY。マガポケで連載中です。見てみて〜。

モブな主人公。マンガボックスにて連載してます!

コンハザがシーモアにて発売中!

1月9日ルックスYの一巻発売してまーす!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
「まるで疲れたおっさんのようにぐーたらする姿がラブリー。」という動画が上がってたら一日中見ちゃいそう。マーモットじゃなく本物の疲れたおっさんでも。あ、でもM字ハゲは不可。バーコードはおk。
トングが必殺武器になっています。 水や食料の確保と安全な隠れ家など、人間ならやるべき事が山積みなんですけど、マーモットは目の前のことしか考えないから、今は寝るだけですね。 一応、適当神の加護もあるので…
よし、念動力の使い手を呼んで教えて貰おう。具体的にはチンピラ雑魚の養女の幼女のてれきぬすす使いをw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ