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異世界でマーモットの王となりました  作者: バッド
1章 俺たちマーモット

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22/52

22マモ 雪が降ってきた

「あ、雪だよ。降ってきた〜。降ってきたよぉ。粉みたいのが雪なんだよねぇ? ほんとにつめたいの?」


「ちょっと待ちなさないな。ダンジョンの環境を室温25度に設定しておくから。積もる前に設定しておかないと屋根に積もると困るわよ」


「ヒートテックの屋根だと積もる前に溶かすもんな。このダンジョン至り尽くせりだ」


 チラチラと粉のようなものが空から降ってきた。ヴェア男爵の言うとおり、遂にこの地に雪が降ってきたのだ。窓から外を眺めていたミカが不安げに空を見て、ブルッと身体を震わす。


 小さい応接室でも、身体の芯に寒さがくるし、とてもではないが毛皮だけでは足りない。これはたくさん食べて脂肪に溜めて、冬眠の準備をしたくなる。現にガブはシャクシャクと夢中になってキャベツを食べていた。でっぷりと太って冬眠する気だ。マーモットは冬は冬眠する小動物なんだよね。


「ダンジョンの環境はデフォルトでも、室温を10度から30度まで変えられるようね。それ以上だと、環境変化のための施設が必要みたいだけど、今はそれが助かるわ。え~と、この設定を変えれば……できたわ」


 リリーがステータスボードをポチポチすると、刺すような寒さが一瞬で消えて、モワッと暖かくなる。ダンジョンの環境が変わったのだ。


「なんだ? なにが起きたんだ? なんか暖かくなったぞ?」


「ガブ、少しは話を聞きなさいよね。ダンジョンの室温を変えたのよ。これなら快適に暮らせるでしょう?」


 突然暖かくなり驚いて、キャベツを食べるのを止めて、首を伸ばして周りをキョロキョロと見るガブに呆れたリリーがため息をつき、ルーが隙ありとそーっと近づき、ガブの掴んでいたキャベツを奪い取ってシャクシャク食べる。マーモットらしい行動だねと、俺も苦笑しながらも、ダンジョンの権能に感心しちゃう。こりゃ凄い。


 応接室の隅っこにドシッと座って、ポチポチとステータスボードを押しているリリー。彼女はダンジョンという権能を得たけど、その代わりに個人のステータスボードを無くした。なので、もうチート的な強さは個人では手にはいらない。初期に手に入れたスキルが全てだ。


 俺ならどうしただろうか。生き残るためにも個人の強さは必要だからと、まずは自分のスキル取得を目指すだろう。そして強くなるのに夢中になって、ダンジョンマスターのことを忘れるだろうな……。ゲーム的あるある、後でこのスキルを強くしようと後回しにして、そのまま死にスキルにするパターンである。


 なにはともあれ、皆のためにダンジョンマスターとなった心優しいリリーには尊敬しかないや。


「この迷宮を隅っこだらけにしたいけど経験値が足りないわね」

 

 本当に皆のためにダンジョンマスターとなった心優しいリリーには尊敬しかない。


         ◇


 リリスがダンジョンマスターとなって、5日経過した━━。


「ねぇねぇ、マー君。見てみて、ほら、お外は真っ白だよぉ。ふわぁ、あれって冷たいんだよね? 触ってみたいなぁ、窓開けないかな?」


「世間的にはそろそろクリスマスじゃないのかなぁ。あ~あ、今年はショートケーキを食べることができなさそう」


 曇った窓ガラスをペチペチ叩いて小さな手形を窓に残しているミカを見ながら嘆息する。例年、クリスマスはマーモット用のショートケーキを貰えたのだ。年に一回しかないので楽しみにしてたのに残念だよ。


 床に寝そべって、虚無の瞳で寝ようとする。日本が召喚されて大変な事態になっても、マーモットはお気楽なものだ。マーモットには学校もテストもないし、うざい人間関係もない。リリーのお陰で安全となった拠点で後は暮らしていこうと思う。たまに人間たちの前でギュイーンをしてみたり、2本足でよちよちと歩いて見せれば良いだろう。きっと拍手喝采間違いなし。この世界でも、人気者になっちゃうね。


「みなふぁんたいだでふね、てんしいのほくよようにはたるきまふぁい」


 俺の横をめいいっぱい藁を咥えたルーが通り過ぎていき、ボス部屋に入っていく。毎日藁をボス部屋に運んで、巣作りをしているのだ。今や一面藁の巣で、夜は皆で寝ているので、ボス部屋には全く見えなくなっている。幼女が一緒に寝ようとして時折やってくるくらいだ。そのたびに母親が連れ戻しに来るので、ボス部屋に入れない母親の代わりに寝た幼女を外に出すのが少し大変なくらいだろうか。


 ガブも俺と同じく寝そべってるし、平和極まりなし。アミはいつもヴェア男爵たちに呼び出されて会議をしてるし、色々と大変なところを見ると、マーモットに転生して本当に良かったと思う。ありがとう炎の鳥さん。


「まーちゃん、一緒に一狩りいくでしゅ!」


 平和は終了。ドアが乱暴に開かれて幼女がふんすふんすと鼻息荒く俺を抱き上げちゃうので、ため息を吐いちゃうのであった。


          ◇


「今日はなにを狩るんでしゅか〜。キャベツかな? 人参さん?」


 ふふふーんと、ご機嫌ニニーが俺を抱っこしながら元ショッピングモールの廊下を歩く。ショッピングモールはたった5日で様変わりしており、各店舗の前には、誰が住んでいるのかを示すプレートが貼られていた。


 元店舗内からは家族の笑い声が聞こえてきて、子供たちがはしゃきながら走り回る。ライフラインが回復したことにより、ますますこの拠点が安全となったからだ。


 どういうことかというとだ。


 元ショッピングモールはリリスの支配するマ宮となった。迷宮タイプは『ホラーハウス』。薄暗い施設で、無人に思える静かな中で、切れかかった蛍光灯が瞬きを繰り返し、光が漏れ出る隙間にいつの間にか化け物が現れる。突如蛇口から水が流れて、冷蔵庫から不気味な笑い声が聞こえてくるという定番のホラーハウスだ。


 武器もなく逃げゲーの場合が多く、怖さを追求しているので、前世では動画を見てクリアした気になっていたよ。


 さて、お気づきだろうか? ここで大事なのは電気も水もガスも使えるということ。ダンジョンの持つ魔法的な力により、この施設内に限り無限に使えてしまうのだ。


 なので、避難民は元レストランで料理をして、ウォッシュトイレで用を足し、夜でも電気をつけて明るい場所で活動できる。ゴミ箱にゴミを入れればいつの間にか空になるし、内装は汚れても自然と綺麗となる。残念ながらショッピングモールの品は補充されないが、これだけ住みやすいところもないだろう。


 家を無くし、明日をもしれぬ人々にとっては、ここは楽園も良いところとなっていた。


 一つ問題があるとすれば、ダンジョンなので━━。


「あ、まーちゃん、あそこにキャベツンがいるお! ほら、あしょこあしょこ!」


 ニニーが通路の前方を見て、大興奮で俺の手をブンブン振る。ペットの手を振って喜ぶ人がいるけど、まさにニニーがそのタイプだ。


 まぁ、それは置いておいて、通路では魔物との激しい戦闘が行われていた。緑色の肌に、丸い岩のような身体。1メートルは超えるだろう、その魔物は何を隠そうダンジョンの魔物だ


「キャベツンの核狙えーッ! あ、そっちにいったよ!」


「こいつコロコロと転がって、なかなか狙えないんだよ」


「今日は野菜炒めだから、絶対にキャベツンを倒してこいって、お母さんに言わてるんだよ!」


 ……子供たちと激戦を繰り広げていた。なにせ、魔物はキャベツの姿をしているので。1メートル近い大きさのキャベツの魔物。ヘタの部分に宝石のような核が付いており、破壊するとただの巨大キャベツとなります。核を素早く破壊して、うまく倒さないとグチャグチャの泥だらけになって食べられなくなるから要注意。


 リリーが経験値1000を使って作り出したレベル1の魔物で、ダンジョン内に1時間に10匹ポップする。避難民の貴重な生鮮野菜として、大人気だ。時速5キロで体当たりをしてくるので、たまに痛い。


「あたちも、あたちも。ニニーもキャベツンたおしゅよ! ほら、まーちゃん、キャベツンをこーげきして! んと、ひゃくまーもっとだ!」


 んせと、床に俺を置くとキャベツンへピシッと指さすニニー。気分はマーモットマスターだ。


 俺もお腹空いたし、ちょうどいいか━━。

 

 テテテテテテ


「俺様に任せな! ピギー!」


 と、俺が向かおうとしたら横を素早く通り過ぎる影。一声鳴くと、猛然とキャベツンへと間合いを詰めて、その身体に噛みつく。


 シャクシャクシャクシャク


「大変だ! マーモットが出たぞ〜!」


「放っておくと、全部食べちゃうぞ、このデブリス!」


 とこでも大人気なマーモットは、子供たちに掴まれて、キャベツンから引き剥がされそうになっていた。それで離れるガブじゃないけどね。シャクシャク。


「もう一匹、キャベツンに食いついたぞ! こら、離れろ!」


 キャベツを前にマーモットが我慢するわけないでしょ。キャベツウマー。


「まーちゃん〜、こっちもたしゅけて〜」


 ん? なんだろう? ニニーの悲鳴が聞こえるので後ろを振り向くと、血だらけに、いや、トマト塗れになっていた。そして、巨大な人参やジャガイモに体当たりもされていた。


 あれもダンジョンモンスターで、やはり経験値1000を使用して生み出したレベル1の魔物だ。密かに隠れて体当たりをしてくる忍参、岩のように体当たりをしてくるジャガ岩、そして、体当たりをされると自爆されてトマト塗れになってしまう倒すのに一番気をつけないといけない闘マト。


 基本、全員体当たりをしてきて、小学生と激闘できる強さです。そして貴重な生鮮野菜です。


「ベトベトになったの。ニニー、ママに怒られりゅ。うわ~ん!」


 服がトマト塗れになって大泣きしちゃったニニー。どうやら狩りは失敗だねと、俺は苦笑いしてしまうのだった。


 家をなくして、どこともしれぬ土地を放浪する羽目になったのに、今の人々はトマト塗れにならないように気をつけることが一番の注意点だ。彼女たちのメンタルはとても強いし、尊敬するよ。


 これからも平和にこの拠点で暮らして行けるだろう。食、住と揃っていれば、問題ないだろうと、マーモットは目を細めて微笑むのであった。


 ━━無論、そんな仮初めの平和はすぐに崩壊することになるんだけども。

 

           ◇


名前:リリス

種族:マーモット+1

信仰する神:迷宮神ハルカ 

職業:マ宮の女帝

経験値:3000

迷宮:レベル1 ホラーハウス

迷宮施設:ガーディアンルームレベル1

迷宮魔物:ガーディアンレベル1(ニニーヴ)、レベル1(キャベツン、闘マト、忍参、ジャガ岩)


効果:マ宮の女帝 ダンジョンマスターの権能を使える。ダンジョン内であれば、ステータスアップ。言語読解レベル2を付与

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1月9日ルックスYの一巻発売してまーす!

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― 新着の感想 ―
Pマンがいたら、子供たちには倒せない(倒したくない)強敵に成っている所だった。
 これは……汁を弾にする弾ネギと、国のモロッコみたいな形をしたトウモロッコシと、虚無僧の様な編笠状に実がなる虚無ぎも足して、ホワイトシチューを作れる様にせねば。
ヒートテックの屋根! ここからパクっ、もとい、ヒントを得て来年の秋頃から●ニクロで売り出したりして。 不穏な展開を予告したあとの、魔物の名前に和んじゃって緊張感が…
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