21マモ 魔宮ならぬマ宮の女帝誕生!?
強い衝撃で頬が叩かれた。そして、さらに追撃の手のひらが迫る! が、素早く手のひらを受け止めると、叩いてきた人を睨む。人というかマーモットのリリスだった。厳しい目つきで俺を睨んでいる。
「なにすんだよ、リリー、痛いじゃん」
「どうもここ数日のあなたを見ていたら、自分一人で解決しなくちゃいけないように動いてないかしら? 世界は貴方を中心に動いていると思ってない?」
「現に俺がいなかったら、皆んなは死んでだろ! 俺がやらなくちゃいけないんだ!」
リリスの手を掴んで、お互いに睨み合う。俺は頑張ってきたのに、非難の目をしてくるなんて酷い。
ここに至りて、俺たちはパニック映画とかでよくある意見のぶつかり合いをやるのだった!
お鼻をツンツンぶつけ合い、首を持ち上げると、背筋を伸ばして━━。
「ギュイーン」
「ギュイーン」
マーモットの決闘、即ち疑似喧嘩だ! 絶対に負けられない戦いがここにある。
コテン
転がされて、負けちゃった。まぁ、負けることもあるよね。リリーは意外と強かった。そして、ニニーはギュイーンを見れて大興奮。お目々をキラキラさせて拍手してくれた。人間にとって、ギュイーンは最高のパフォーマンスだから当然である。
閑話休題。
「で? リリーが隅っこに座るのを諦めて、ギュイーンしてくるなんて珍しいじゃん。なんでなん?」
「その久しぶりに出会った女と一夜を共にしたみたいな言い方はやめてくれない? さっき言ったとおりよ。マーリンはもっと仲間を頼るべきだと思うの。貴方、自分以外は馬鹿ばかりとか思ってない?」
「うん、思ってる。だって知力が上がったように見えないし。アテッ、殴るなよ!」
正直者のマーモットなのに、なんでリリスは殴るわけ!?
「まったく……。皆は頭は良くなってるのよ。でも本能に耐えられないから、時折しかまじめにしないの」
「記憶をなくした戦士が時折マトモになるみたいだな」
マーモットの本能。ご飯を食べる。ギュイーンをする。寝る。以上。
ゴロゴロしている仲間を見ると、その言葉に納得しかないな。なるほどね。で、どう助けてくれるのかな?
まもんと脂肪たっぷりのお腹を反らしつつ、リリーは謀がうまくいったように笑う。
「AIアシスタントが教えてくれたのだけど、貴方に任せたら、仲マにも自分と同じようなスキルを取らせて量産型にするそうね?」
「あぁ~、たしかにそうかも。仲魔は基本弱点耐性を克服するスキルと、貫通付与された四元素魔法、そして状態異常無効化と食いしばり。支援魔法か回復魔法を覚えさせてスキル枠を埋め尽くして終わるかな」
せっかく様々な悪魔を仲魔にしても、全ての仲魔の取得するスキルはそう変わらないので実に面白みのない構成でいつも女神な転生とかを遊んでいたよ。つまらない構成だけど、万能に対応できるんだもん。特化型は滅多に作らなかったなぁ。
「でしょう? そんな構成にすると私たちはとても影が薄くなるのよ。AIアシスタント曰く、前菜の飲茶になるのではなく、主菜を目指すべき、だそうよ? 絶対にアタシのようになるなよって力説してたわ」
「そのAIアシスタントの人生が悲しそうで聞くのが怖い」
泣けてくる話である。あとAIアシスタントに人生ってあるのかな?
「だから、こうすることに決めたの。目を剥いて驚きなさい? ステータスオープン!」
ピコンとステータスボードを表示させるリリー。というか、他の人のステータスも見れるのか。
名前:リリス
種族:マーモット+1
信仰する神:迷宮神ハルカ
経験値:29000
固有スキル:小動物の加護、進化レベル1、始祖、マ闘士
スキル:ギュイーン(使用済み)、体術レベル1、念話、火精霊召喚レベル1、デビルアーミーレベル2召喚、複数召喚レベル1、魔力操作レベル1、魔力障壁レベル1
……うん、経験値がたくさんで羨ましいとか思ってないよ? 本当だよ? 俺はネームドとか取得したから、その分少ないんだ。
とはいえ、リリーの言う通りスキル構成はほとんど俺と変わらない。これからも俺の指示通りにするならば同じ構成に終わるだろうことは、女神な転生シリーズを全てやってきた経験から分かる。全て同じ構成でクリアしてきたんだよ、悪い? 万能タイプが一番強いんだもんね。
でも、それは俺のポリシーで仲マに強制するものではない。ここは現実でゲームの世界とは違うんだ。反省しないとね。
「わかったよ。これは俺が悪かった。リリーの言うとおりだ。自分のスキルは自分で決めないとな」
ここはリリーの好きに取得させるべきだろう。反省して俺はベタッと寝そべるが、ステータスに一つ違うところがあるのに気づかなかった。自身の考えが甘かったとも言う。
「それじゃよく見てなさい? これが私のスキル構成よ! 経験値一万を消費し、『ダンジョンボード』に切り替えなさい!」
「へ?」
リリーが2本足で立ち、ちょいと短い手を振って、ニニーが可愛いと大喜びして、俺はというと間の抜けた声を出した。ちょっとよく分からないセリフだったのだ。
名前:リリス
種族:マーモット+1、ダンジョンマスター
信仰する神:迷宮神ハルカ
経験値:19000
迷宮:レベル1
迷宮施設:
迷宮魔物:
ピコンと音がすると、ステータスボード自体が変わっちゃった。こんなことってあるの?
「マジかよ。ステータスボードって変わる!? そんなことってある!?」
そういや、信仰する神様が迷宮神になってる! 名前は同じなのに、なんて適当な神様なんだ! てか、こんな簡単に改宗するなよ!
「ふふん。どう? 仕様が変わったから、もう貴方でも取得できないわよ。これからはスキルじゃなくてダンジョンマスターの権能となるから」
「う、うん。死ぬほど驚いたよ。ダンジョンマスター物もぶち込んできたかって感じ。ありきたりのステータスボードと言って悪かった。でも、ダンジョンマスター物は個人的な感想だと人間を餌にするという点がネックになってほとんどはエタると思うんだよな。でも、読者は影牢的に哀しい背景をもつ人間が残虐に殺されることを期待するから、インフレにも限界が来て続きを書きにくくなるわけ」
「余計な感想を言わない」
「ごめん」
余計なひと言だったよ。でも、個人的にはダンジョンマスター物は大好きなんだ。現実だとどうなるのかしらん。
俺も取得しようかなとワクワクするけど
『ダンジョンマスタースキルはワールドスキルのためオンリーワンです。持ち主が死亡しても百年間は取得不可となります。残念でした』
うん、期待はしてなかった。本当だよ?
「でも人間を餌にDP、いわゆるダンジョンポイントを稼いで育てるんだろ? あれかな、ダンジョンに人間がいれば自動的にポイント入るやつ。ダンジョンマスター物だとポピュラーな人類と共生関係になるの」
ダンジョンマスター物に詳しいマーモットである。だがリリーはAIアシスタントと話してるのか、フムフムと頷くと、へニャリと肩を落とす。
「ポイントは経験値を使うようにだって。仕様は変えてもポイントは共通みたいよ。なにか偉業を成し遂げるとクエスト報酬として貰える感じね」
「……へー、ソウナンダ」
そっか、俺は今まで偉業を成し遂げてたんだ。知ってた、知ってたよ?
「それじゃ、この拠点は私の迷宮にするわね。経験値一万を使用し『拠点マ宮化』!」
リリーが床にぺたりと手をつけて、魔法を発動する。その手のひらから光の波が噴き出すと、床を、壁を、天井へと広がり吸い込まれていく。もちろんニニーも床に手をつけて、キャッキャッとマネっこしてます。
光が収まるとマーモットサイズの水晶が床から飛び出してきた。多分ダンジョンコアってやつだ。破壊されると迷宮化が解除されるやつ。俺がマレージャーを倒したのと同じ感じになるだろう。
「ダンジョンコアを破壊されるとダンジョンマスタースキルが消えるらしいわ。なので、まずはダンジョンコアを守るための迷宮造りをする必要があるわね。経験値1000を使い、ガーディアンルーム創造よ!」
『ガーディアンルームレベル1創造』
ガーディアンルーム。文字通りダンジョンコアを守るための部屋だ。俺たちが見守る中で、応接室に装飾の入った扉が壁に生み出される。いかにもボスがいそうな扉だな。
「ふぅ、これでとりあえずはダンジョンは作れたわ。ボス部屋にダンジョンコアを設置しておくわね」
「うん……でもさ、なんというかさ……」
「なによ? なにか私のダンジョンに文句でもあるというの?」
「そうでなくてさ……扉がちっこくない?」
装飾が凝っている金属製の扉なんだけど高さが40センチくらいしかないよ?
「これは縛りをかけたのよ。この扉はマーモット以外は入れないの。その代わり、ガーディアンは弱いわ。ちなみにマーモットに変身してもダメよ? 元の種族がマーモットでないとダメなの」
「このダンジョンは攻略不可の難攻不落のダンジョンになったね」
寝そべってするりと扉をくぐり抜けるリリー。マーモット縛りは厳しすぎないかな?
「うわぁ、落ち着く広さね。隅っこで私は暮らすわ」
「マーモットの巣になってない?」
広さも1畳ないくらいに狭い。高さは辛うじて1メートルはあるけど、この狭さは━━狭さは━━。
「本当だ。狭くて心地よいや」
安心感に包まれて、凄い落ち着くや。もう作戦会議は終わりにして寝よっかな。精霊コタツも入れれば暖かい巣になるし完璧だ。
「おいおい、俺もその巣に住むぞ」
「ふふ、天才たる僕は分かります。これから暮らす巣となると」
「私もあったかい巣で寝るぅ」
もちろんガブたちもちょろちょろと巣に入り込み、積み重なってお昼寝だ。めでたしめでたし。
「ニニー、はいれないお? なんか壁ありゅの」
一人だけ仲間外れがいた。誰あろうニニーだ。マーモットたちに続き、ニコニコと一緒に入ろうとして透明な壁に阻まれてる。
「ニニー入れないの」
透明な壁にほっぺたを押し付けて、諦めずにグイグイと押してる。
「ニニーだけ入れないの。仲間外れになりゅの? うぅ、ニニーもはいりゅの」
マーモットたちが幸せそうに部屋で寝ているところを見て、唇を噛み締めながら涙目になる。幼女は自分だけ仲間外れにされそうで、それでも頑張って身体を押し付けているのがいじらしいし、見てて可哀想だ。
「……なんとかできない?」
「あ〜、も〜。わかったわよ。マーモット縛りはもう取り消せないから、例外の方法を取るわ。ニニーヴをガーディアンにするの。汝、ニニーヴ、我と契約しガーディアンとなって、ダンジョンコアを守るか?」
「入れてくれりゅの?」
しょうがないわねぇと、ため息をすると、リリーがお手々をちょいと差し出す。もちろんニニーはその手を取って契約するのであった。
パアッとニニーが輝くと、なにやら魔法陣が刻まれる。
「これで貴女の全ステータスは5増えたわ。あとガーディアンスキルも手に入ったわね。それと私が願うとどこにいてもガーディアンルームに転移することができるから、ちゃんと覚えておくのよ。後はダンジョンコアをガーディアンは傷つけることはできないことくらいがルールね」
「入れてくれてありあと〜。ニニーも一緒にねりゅね。ほら、まーちゃんはあたちの横だお」
ハイハイと部屋に入ると、ニニーは心底嬉しそうに俺を抱きしめて、ガブたちの合間に滑り込むとお昼寝するのであった。
こうして俺たちはダンジョンと化した拠点とダンジョンコアを守る幼女ガーディアンを手に入れたのである。
ピギーピギーと鳴いてるだけにしかニニーヴには聞こえないのに契約できるって、どこかの宇宙生命体よりも酷いな……。
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