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異世界でマーモットの王となりました  作者: バッド
1章 俺たちマーモット

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17/51

17マモ 文字化けには意味がある

 百円や10円が無数の散弾となって俺を撃つ。高速の硬貨はそれだけで凶器なうえに、魔法素材なのだろう、魔法障壁を打ち壊して、身体にめり込んできた。


「ピギー!」


 硬貨ショットガン。恐ろしい技だ。無数の硬貨が散弾となって俺を襲い、突撃体勢となっていたので、まともに食らってしまった。

  

 コロンコロンと俺は地面に転がって、全身を襲う激痛に口を噛む。チャリンチャリンと音を立てて硬貨が落ちてきて、俺の毛皮にポスポスと当たる。


『マナ:27』


 いつつ、かなりのダメージ。魔法障壁がダメージを肩代わりしてくれなかったらヤバかったかも。


「アヒャヒャ! ドブネズミめ、隙ありっ。冷やか死禁止のこのショッピングモール。買い物をしない客は死ぬのみ! トドメのぉぉ、仲間呼び〜。皆さん、集まりなさーい!」


『ペンポンパーン。レジにて対応願います。レジにて対応願います』


 高笑いをするマレージャーから、放送が響く。なんか、スーパーとかでレジ台に並ぶお客が多いと聞こえてくる放送だ。どうやら仲間を呼ぶ合図らしい。とても緊張感を無くしてくれるんだけど、ボス戦なんだよ?


「ふふふ、もぉ、貴方はおしまいよぉぉ。カッテ来ないお客様は死ぬのみ! おほほほほ」


 嗤い続けるマレージャーだが━━。


 シーン


 なにも起こらなかった。


「なに!? どうして? ホワイ? なぜ店員が1人も来ないのよぉぉぉぉ」


「どうやら、マネキちゃんを集める特技のようだな。でも無駄だ。マネキちゃんは誰も来ない。あの看板を見た時、文字化けのルール『かっていく者』。即ち狩りをしないとボス戦で全員が集まってきて数で押しつぶされると言うやつだ!」


 マ探偵マーリンのズバリな推理だ。ここの敵は見られている間は動けない。なら、円形に人を集めて、死角がないようにすれば、ボス戦まで敵と戦わずにすむ。


 しかし、それこそが罠なのだ。狩っていかないと、後々でボス戦時に大量のマネキちゃんが増援に現れて苦労するルール。これこそがこのダンジョンの裏ルールだったのだ! たぶんそう、間違っていても、マーモットだから許してね!


 それを見抜いて、俺は全てのマネキちゃんを倒した。隠れているのは変だと思ったけど、きっと戦いながら進む敵のために予備戦力を用意していたのだろう。


 ふふふと笑うドヤ顔マーモットだ。


「なぜこなぁぁい! ドタキャン? 当日になって辞める? 休日出勤確定よぉぉぉ」


 しかし、マレージャーは俺の言葉をまったく聞いておらず、頭を抱えて苦しむように吠えていた。なんかトラウマを刺激したようだ。


          ◇


 ━━神様視点だと、ピギーピギーと鳴いて、チョイとちっこい手を振るだけな可愛いマーモットなのです。残念、マレージャーはマーモット語はわかりませんよ。なのでマーモットとマレージャーの会話はさっきからすれ違ってます。


 お互いにさっぱり気づいていませんがね。


           ◇


「人の話を聞かない奴だなぁ。まぁ、良いや。混乱してる最中に攻撃だ!」


 ちょうどよい武器も手に入った。今度は俺の番だ。マ闘士マーリンの力をご覧あれ!


「いっくぜぇぇい!」


 雄叫びをあげて駆け出す。無策というわけではない。接近する方法を思いついたのだ。


 ぷるぷると身体を震わせて、毛皮に潜り込んでいた硬貨を振り落としつつ、念動力で覆い操作する。


「コインビット! いや、これはビットコインに似ててネーミング悪いな。なら、テレキネシスコイン!」


 硬貨の中でも五百円玉を14枚選んで、空中に浮かして、俺の追尾をさせておく。五百円玉がマーモットの周囲を飛ぶという、ちょっぴりかっこいい光景だ。かっこいいよね?


「ドブネズミがぁぁ。店の硬貨を盗むのは犯罪ぃぃぃ! レジ締めで1円でも金額が合わなかったら、徹夜で探すんだよぉぉ! ブッコロ! レシートアーム!」


 だが、マレージャーはそうは思わなかったようで、青筋を立てて怒り狂う。たしかに増えてても減っていてもレジ締めで金額が合わないと辻褄合わせに大変なんだよな。


 レシートアームがしなりながら、床を大きく削り瓦礫を撒き散らしながら迫ってくる。その軌道は読みにくく、さっきまでは回避しにくかったけど━━。


『レイ、『体術レベル2』取得!』


『経験値4000を消費し、体術レベル2を取得しました』


 残りの経験値を全て消費して、体術レベルを上げる。取得した途端に、1段階自分が上に上がった事を理解する。


 体術レベル1が自分の身体を使いこなすことならば、レベル2は更に上。限界を超えて身体を使う。


 さっきまでの走りはアクセルを踏んだだけのスーパーカーであれば、今の俺はF1のレースカーだ。繊細なれど、大胆なる動きができていた。タプンタプンと力任せに走る姿が、しなやかに無駄のない動きへと変わった。


 そして、地面を走る以上のこともできる。


「コイン展開っ!」


 思念にてコインを前方へと展開させると、脚に力を込めてジャンプする。その動きは弓道で放たれる矢のように美しく、そして速い。


 タンッと前脚を空飛ぶコインに着けると、膝を曲げて、さらに前方にあるコインに向かい跳ぶ。タタンとリズミカルに空に浮くコインを足場に俺は飛んで行く。


「な、なにっ!? コインを足場に空を跳ぶなんてっ! ドブネズミの癖に、生意気な!」


 俺の跳んだ後をレシートアームで削り、マレージャーは空飛ぶマーモットに驚きで目を剥く。


「レシートアームが躱しづらいのは、地面という平面しか回避できる場所がないからな。今の俺はコインを足場に空中を三次元機動できるんだ! これぞマーモット歩法の一つ、『反射歩法リフレクタームーブ』!」


 空中にてコインの間を跳ね回るピンボールのように移動しながら俺は笑う。それぞれのコインは14キロまでの重量を耐える。人間では無理だが、3キロしかないマーモットの俺ならば、充分に足場とできるわけ。


 俺が高速で跳ね回り、マレージャーは首をもたげて目を凝らし、狙いを定めようとするが、まったくついていけていないため、レシートアームも無駄に空を切っていく。


「だが近づいたら最後、硬貨ショットガンで撃ち落としてやるわぁぁぁ! さぁ、近づいてきなさいな!」


 己のレジ部分のキャッシャーを開け閉めして、マレージャーは自信があるように嘲笑う。たしかに、中遠距離ではレシートアーム、近距離では硬貨ショットガンと、こいつは隙のない攻撃方法を持っている。さすがはボスと言えるだろう。


「ほらほらぁ、どうしたの? ちょろちょろと周りを跳ぶだけぇぇ? 噛みつきに来てご覧なさーい?」


 マレージャーは頭上を跳ぶを俺を見逃すまいと、ろくろ首のように長い首を傾げて、空をあおぐように俺を見据える。アミの射撃は完全に無視して、俺だけに集中している。


 だが、それこそが俺の狙いだ。数分、敵の周りを跳び、仕込みは充分だとクスリと笑う。


「私を陰で馬鹿にするバイトが笑うように、笑われているような気がするぅぅ! オォぉぉぉ、この、当たれぇぇ! あた━━なっ!?」


 哀しいセリフとともに、レシートアームをさらに繰り出そうとして、レシートアームががくりと力を無くし落ちてゆく。これこそ、俺が狙っていた時!

 

 さぁ、これからは俺の反撃の番だ!


「腕に力が入らない!? な、なにが、こ、これはドブネズミィィィ!」


 なぜ腕に力が入らないか、己の身体を見下ろして、マレージャーは悲鳴をあげる。


 なぜならば━━。


「これ齧りがいがあるな」


 カジカジカジカジ


「お腹すいたよぅ。これ齧ればいいのぉ?」


 カジカジカジカジ


「天才たる僕が一番に齧ります」


 カジカジカジカジ


「終わったらご飯よね? そうよね?」


 カジカジカジカジ


 マレージャーの腕の付け根に、マーモットたちが張り付いて、カジカジと齧っていた。


 念話にて俺は密かにミカたちを呼び寄せたのだ。半日経過してお腹を空かせていたので、すぐに来たのだ。


 しかも高ステータスのマーモットたちは、丸太のように太いマネキンの腕もなんのその、あっという間に齧りきって、腕を落としていく。


 4本の腕の付け根が全て齧り尽くされて、地面に落ちていく。ズガンと音を立てて、床にめり込むマレージャーの腕。


「わ、わたしのぉぉぉ、うでぇぇぇ!」


 レジから生える首だけとなり、マレージャーは狂乱するが、もう遅い。


「俺を見逃さないために、頭上を見過ぎだったな! 仲間呼びはお前だけの特許じゃないよ。俺も使えるんだ。マネキンの腕は無痛で、齧られても銃撃がうるさくて分からなかっただろ!」


 これこそが狙い。マレージャーは俺に集中しすぎた。アミの攻撃は無効化できるため、完全に油断していた。痛みのない身体は時にメリットにもなるが、デメリットにもなるから、決して自分の体の状態を無視してはいけなかったのに。


 もはやマレージャーは案山子も同然。硬貨ショットガンは真上には撃てない。奴は攻撃手段を失ったのだ。


「終わりだ、マレージャー!」


 コインをピラミッド状に展開させて踏み台にしていくと、空高くへと駆け登る。


「ピギーーーーー!」


 自身の爪にマナを集中していく。爪からマナが立ち昇ると、マナで形成された青い爪が伸びていく。その長さは3メートルはある。


「マーモット闘法奥義。マーモットクロー!」


 コインを踏み台に加速すると、マレージャーの頭上へと俺は爪を広げて落下する。


「ひいっっ! の、のるまぁぉがあるのぉぉ」


「安心しな、今日でこのショッピングモールは閉店だぁぁぁ!」


 守る手段もなく、恐怖で顔を歪めるマレージャーの顔へと爪を突き立てる。4本の爪がマレージャーの顔を、胴体を、レジ台を引き裂いて、俺は床へと着地する。


「あばばば、転職すれば良かったぁぁぁ!」


 爪痕から漆黒のオーラを血のように吹き出して、断末魔の声を上げながら、マレージャーは溶けるように消えていくのであった。


「それと、マーモットはお金を使わないんだ。悪いな」


 マレージャーを中心に眩い純白の光が空間を埋めてゆく中で、俺はフッと笑うのだった。


 ━━そうして、純白の光が収まると、あれほど広かったボス部屋は消えてなくなり、少し広いだけのスタッフルームへと戻った。


 ダンジョン化が解けて、どうやら元に戻ったらしいね。


          ◇


『おめでとうございます! 貴方はダンジョンを攻略しました! 経験値五千取得。しかも小動物なのに格上のダンジョンボスモンスターを倒すという歴史上初の快挙です。そのため、貴方に特別に経験値一万点を差し上げます!』


 もちろん皆仲良く経験値をもらったとさ。


 ……ふ、不満なんかないよ? ホントだよ?

ルックスY。マガポケで連載中です。見てみて〜。

モブな主人公。マンガボックスにて連載してます!

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― 新着の感想 ―
更新乙 寄生プレーと言うのか 仲良しグループと言うのか・・・ 助け合い?足の引っ張り合い?ぎゅい~んぎゅい~ん? レベルアップや進化してもマーモットだからな~
「フヒヒ さあ来なさい クレイマーにカスハラ客ども… 私が受けてきた仕打ちを100倍にして返してあげるわ」 こんな感じで待ち受けていたのですかね? しかしやった来たのは、マーモット… なんかボスモンス…
カジカジカジカジの貢献度がすごく高いんですねきっと(棒)。
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