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異世界でマーモットの王となりました  作者: バッド
1章 俺たちマーモット

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16/52

16マモ 管理職は辛いよ

「カエーッ!」


 完全に油断していた。マネキちゃんたちは馬鹿みたいに突撃してくるだけで、知性などないと思っていたから、まさか隠れているとは思いもしなかった。


 その油断が俺に刃を向けてきていた。命の危機。俺は驚きから身体を硬直させてしまい対応できない。今、俺の命は泡のように消えようと━━。


 しかしナイフを振り上げたマネキちゃんはマーモットだとは思わなかったのだろう。ピタリと動きを止める。ナイフを振っても全然届かないからだ。惜しいかな、せめて背丈が1メートルはないと振り下ろすナイフは当たらない。俺の背丈は40センチくらいです。


 俺を見て、自身を見ると、身長差がありすぎるねと、ふむと頷き腰を屈めると目線を合わせて、腕を再び振り上げた。


「カエーッ!」


「やり直すなよ!」


 もちろん、それまで待ってあげる義理はなく、蹴りで粉々にしてやるのだった。


「ふぅ、マーモットじゃなかったら死んでたね。やはりマーモットは利点だらけだよ」


 ふぅと息を吐き、自身のちっこさに感謝だ。マーモットに転生できて本当に良かったよ。


 今度は油断せずに耳をそばだてて、目を凝らす。と、何体ものマネキちゃんがジッとしているのを発見した。なんでこいつら隠れてるんだ?


 たしかにバックヤードの陰に隠れての不意打ちはホラー的にも、現実でも脅威だ。いきなり現れると、うわっ、てゲームなら驚いてコントローラを落としちゃうよね。

 

 不意打ちするために隠れているのだろうか? ……ウ~ン、それにしては違和感を感じる。探索するためにここに来なかったらスルーされちゃうしね。


 爪をチャッチャッと鳴らしながら考える。


(そういや……このダンジョンに入る時の看板。変な感じだったな。文字化けの内容……ふむ)

 

 違和感。この世界のスキルの狡猾さ。裏を掻くシステム。なんとなくだけど、違和感の正体に気づいたかも。マ探偵マーリンの推理によると━━。


『アミ、このショッピングモールをできるだけ探索して、隠れているマネキちゃんを殲滅するんだ。その後にボス部屋に行こう』


『ボス部屋に直行するのではないのですね?』


『あぁ、気になることがある。念のためだけど、ここはダンジョンだし、危険な可能性はできるだけ潰したいんだ』


『了解であります。こちらもタンスの陰や柱の後ろに隠れているのを発見しておりますので、随時撃破していきます』


 やはりまだまだ生き残りはいたらしい。━━半日をかけて俺とアミは2人で頑張ってダンジョン中を駆け巡り、マネキちゃんを探し、恐らくはほとんど倒すのであった。


           ◇


 そうして、辿り着いたのがボス部屋だ。10メートルはある高い天井まで届く両開きの巨大な自動ドア。そのドアには『お帰りの際の会計はこちら』とレジマークと共に書かれていた。


『ショッピングモールのボス部屋らしい装飾だね。悪意の想念がマナと融合してボスとなり、成長するとダンジョンを作る、だっけ? まだ作られたばかりだから単純な道だったけど、この扉はまさしくどろどろとした怨念を感じるよ』


「怨念がおんねんであります」


 ポカーンとお口を開けて、まじまじとアミを見上げてしまう。え、今のアミが言ったの?


「あ〜、コホン。ボス、準備は万端であります。先ほどの発言は風が囁いたとでも思ってください」


 頬を染めて、誤魔化すようにアサルトライフルを構えるアミ。うん、風の囁きね、囁きだったよ。


『オーケー、それじゃボス戦の開始だ!』


 今こそ、ダンジョン攻略の初のボス戦だ! 気合い入りまくり。ピギーと鳴いちゃうよ。


 テチッと踏み出して自動ドアを開く。


 ……開く。

 

 テチッ


 ……開く?


 テチッ、テチッ


 開かない。自動ドアは開かない。


「マーモットでは、自動ドアは反応しないようであります。代わりに開けます」 


「ピギー!」


 マーモット差別反対! もっとマーモットに優しい自動ドアを作って!


 ━━巨大な自動ドアが音もなく開き、中が見えてくる。ボス部屋は野球ドームかなと思うほど広い部屋だった。野球ができそうなほどに広大な広さを持つ四角い部屋で、反面で長方形のテーブルに置かれたレジ台が部屋を埋め尽くすようにズラリと並んでいる。アメリカとかの映画でたまに見る巨大スーパーのレジ台のような感じをさらにスケールアップさせたような光景だ。


 そして、部屋の中心。百メートルは離れているのに、なにかが鎮座していた。いや、なにかではない。戦車のように巨大なレジだ。


「イイイいらっしゃいませ〜。ととうショッピングモールへようこそそそううう」


 嗄れた声が巨大レジから聞こえてくる。巨大レジからマネキンの足が蜘蛛のように八本生えて、立ち上がっていくと、巨大レジの中心から蛇でも生まれるかのように首が伸びていく。


 その首はマネキンであった。まるで脊髄を引き抜いたかのような、首横から幾つもの骨が突き出して怖気の走る首。そしてマネキンの先端についている頭。


 カタカタと腹話術人形のように口が開き、目玉から赤い血を流して、三日月のように裂けた口を開く。


「ようこそそそううう、お客様ぁぁぁぁ。お支払いですかぁぁぁ? お会計はぁ、こちらぁぁぁ」


 首から4本のマネキンの腕をズルリと生やすと、ボスはニタリと笑うのであった。


『とてもじゃないけど、あそこで会計はできないな』


『同感であります』


『でも、面白そうな相手だ』


 俺たちはそれぞれ構えて、ボスは笑い顔でこちらを見て━━。


 目が点となった。


「ど、ドブネズミがわたししいいいの店にいいぃぃ!」


「ネズミじゃないよ。リスだっ!」


「排除排除排除〜! ネズミがいるショッピングモールなんてぇぇぇ許されなぃぃぃぃ」


「よしわかった。戦争をしたいんだな」


 狂乱となるボスと、ピギーと怒る、ラブリーマーモット。両者、戦闘開始!


「お客様ぁぁぁ、ドブネズミを入れてはいけませぇぇぇん!」


 ボスが首から生やした4本の腕をダラリと下げる。何をするかと警戒すると、腕が伸びていき、地面にまで到達してしまう。


「くくくらいなさい、レシートアーム!」


 そのまま腕を振るうと、鞭のように伸びてきて、俺たちへと迫る。よく見ると腕はレシートロールと変わっており、どこまでも伸びるようだ。


『蛇腹剣かよ! アミは後方にて逃げながら撃ちまくれ。俺が前衛をするっ!』


『お気をつけて!』


 コクリと頷くと、アミはアサルトライフルを連射しながら、ボスを遠巻きにして走っていく。軍用ライフルの弾丸の威力はというと、やはり予想通りに全て弾かれて効果はなかった。まぁ、ボスだから魔法障壁があるのが当たり前だ。


 レシートアームは、整然と並ぶレジ台を破壊し、テーブルを砕き、地面を削りながら迫ってくる。レシートという名前なのに、ものすごい威力だ。


「死ねっ、ドブネズミ!」


「そうはいくか!」


 鞭のようにしなり、迫ってくるレシートアームはその軌道が読みにくい。レジ台やテーブルを砕く衝撃で軌道が変わり、見切るのが難しいのだ。


「ぬぉぉぉ!」


 テテテテテテテテテ


 四つ足で走り、俺は迫るレシートアームを掻い潜る。壊れたレジ台が飛んできて、瓦礫となったテーブルと抉られた床が走るのに邪魔くさいが、その程度で止まるマーモットじゃないぜ。


 ピシリと床を砕く音が響く。レシートアームが俺の頭上からミンチにしようと落ちてくるのを、ぴょんとジャンプで躱して横から来るレシートアームに合わせて、爪を突き立てる。


 高ステータスのマーモットクローだ。レシートくらいなら切れる━━え?


 グニャリとした感触。弛むレシートアーム。傷一つつかない。


「くっ、硬い上に柔軟性もあるのか。なら、これならどうだ! マーモット闘法二式引っ掻き!」


 2本足で立ち上がり、爪に魔力を集中させると自分の体程の太さのレシートアームへと爪を立てる。


 お互いの魔力がぶつかり合い、金属音と火花が散り、弾きあう。たたらを踏む俺に残りの3本のレシートアームが繰り出される。


「くっ、体勢を崩されたか」


 頭上からのを左ステップ、左右からの攻撃をバックステップし━━間に合わない。


 二本目はギリギリ躱したが、最後の一本の攻撃はまともに胴体に食らってしまった。ミシリと嫌な音を立てて、ボールのように吹き飛んでしまう。


「ぐはぁ、やるなこいつ!」


 レジに激突して、ポンポンと跳ぶと、テーブルを破壊して、俺は残骸の山に激突してしまった。うぐぐ、痛い。


 変幻自在のレシートアーム。ネーミングセンスはないけど、かなり強い。


『ショッピングモールの代々のエリアマネージャーのノルマに苦労し、クレームに頭を悩まし、ドタキャンで休むシフトの代わりに入り、管理職扱いのため夜中まで働いても残業もつかない苦しみの想念がマナと融合したもの。マレージャーと名付けました!』


 なんか悲しすぎる過去を教えてくれた。たしかにエリアマネージャーって大変そうだもんな。


 上手い事を言ったつもりのAIアシスタントに苦笑しつつも残骸から、なんとか這い出す。転移してから初のダメージかも。いててて。身体がミシミシと痛いよ。


「硬いっ! メタルキングですかぁぁ。忌々しいネズミめ! わたししいいいはのるまぁぉをこなぁぁすぅぅ。絶対に無理なのるまぁ。無理して達成したら、更に上のノルマを課せられる地獄モールでぇぇぇ! だから汚らしいネズミは排除ぉ!」


「苦労は分かるけど、俺はリスだって言ってるだろ!」


 追撃のレシートアームの猛撃を、脚に力を込めて、前へと身体を投げ出して、なんとか躱す。


 このままじゃジリ貧だ。接近しないと!


『アミ、閃光弾!』


『投擲しますっ!』


 レシートアームが地面にめり込んだ一瞬の隙を狙い、アミに指示を出す。投擲された閃光弾をテレキネシスで押し出して、マレージャーへとぶつけると、カッと痛いほどの光が眩く輝いた。


「目が、目がぁぁぁぁ」


「いただき!」


 目を押さえて悶え苦しむマレージャーへと一気に接近。瓦礫を飛び越え、レジを踏みつけ、間合いを詰めて、一気にジャンプ!


「マーモット闘法一式突撃!」


 狙うはマレージャーの頭。砲弾のように飛び、その顔に命中! 


 ガツン


 マレージャーの顔にヒビが入る。だが致命的ではないようなので、空中でくるりと回転して、もう一度!


「させるかぁぁ、これでも喰らえっ、ドブネズミ」


『硬貨ショットガン』


 さらなる一撃を入れようとすると、マレージャーのキャッシャーが開き、無数の硬貨が吐き出され、俺を襲うのだった。

ルックスY。マガポケで連載中です。見てみて〜。

モブな主人公。マンガボックスにて連載してます!

コンハザがシーモアにて発売中!

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― 新着の感想 ―
更新乙 このBOSS可哀想だわ 現代社会の闇が顕現した感じが・・・ まあマーモットには関係無いけどね!! もしかしてBOSS倒したら弱体化して仲間入り?
 現代ショッピングモールがダンジョン化した為に一般的なダンジョンボスとはかけ離れた雰囲気のショッピングモールボス“マレージャー”(^皿^;)マネキンの頭にアンバランスな長さの首と手足にレジスターボディ…
”マーモットに優しい自動ドアを作って!” 下手にマーモットに反応する自動ドア作ったら、絶対君たちドアに はさまれるだろ。 腰のあたりを自動ドアにはさまれて身動き取れず、途方に暮れているマーモットの姿が…
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