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異世界でマーモットの王となりました  作者: バッド
1章 俺たちマーモット

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14/51

14マモ ダルマさんがころんだ

 ダンジョンに入る前から疲れた一行。ヘンリーは気を削がれたが、それでも先頭を請け負った。義務感からではない。尊敬するヴェア男爵様のためだ。一番危険な前衛を主であるヴェア男爵様に任せることは言語道断であるし、アミ殿は鉄の杖を持つ魔法使いだから論外。マーモットはどう見ても頼りにならない。というか、50センチ程の小動物の後に続くなど、人としての誇りの問題でもある。


 3人だけなのは、残った者たちを守るため。この人数でダンジョン攻略は無謀だが、まずは様子見の予定だ。


「俺が先頭を進みます。ヴェア男爵様は後ろに。アミ殿は最後方でお願い致します。マーモットはそこら辺の物を拾って食べないように」


 あれからデブリスがマーモットと言う名の小動物と教えてもらったヘンリーは皆へと注意を促しながら、恐怖のショッピングモールへと足を踏み入れる。


 平和そうな店内の棚の陰や、柱の後ろ、観葉植物の隣と、マネキンはどこにでもいる。これが見つけた途端に襲ってくれば、幽霊の正体見たり枯尾花のように、恐怖を振り払い戦える。だがこのマネキンたちは見ていない間にいつの間にか近づいてきて襲いかかってくるのだ。


 戦いの恐怖よりも、わけの分からない物への恐怖というものに襲われて、どうしても歩みが鈍り、無駄に周囲を見渡してしまう。


 緊張から息づかいが荒くなる。こういった場合は緊張して、不必要に体力を消耗することを抑えるべきで、冷静に行動をしなくてはならない。それでもヴェア男爵様の臣下の騎士の中では一番の槍の使い手であり、ホブゴブリンでも渡り合える力を持っている。


 しかし、どうしてもどこからか感じる視線が緊張感を消してくれないのだ。


 普通に進むのならば、数分で済むだろう通路を、亀の歩みのように数十分かけて進む。探索に行った仲間は兵士であったが、戦いの基本はできており、逃げる間もなく殺されるわけがない。それが一人を残して全滅とはあり得なかった。


 気配を感じようとするが、まったく感じない。アミさんやヴェア男爵様、マーモットの足音はするし、微妙な風の流れも感じるのに、マネキンの気配はしなかった。


 もしや、動いていないのでは? と疑問に思った時であった。


 ガランガラン


 砕かれたマネキンの頭が後ろから転がってきた。マネキンの頭はひび割れて、首の根元が砕かれている。


「これは!? 男爵様、大丈夫ですか?」


 まったく気づかなかったことに焦りつつも、主君を守らねばと槍を構えて後ろを振り向くと、ヴェア男爵様も同様に最後方に振り向いていた。


 そこには首のないマネキンが力無く転がっており、そのそばにマーモットがちょこんと立っており、目を細めて鼻をひくひくと鳴らしていた。ひょうきんな様子は可愛らしいが、なにをやったのか想像できるだけに、少し顔を引きつらせてしまう。


「あ、あぁ、私は大丈夫だ。このマネキン、後ろから迫ってきたようだがまったく気配を感じなかった。マネキンが倒れた音で私も気づいたのだ」


「そうでしたか。では、このマネキンを倒したのは、もしや……え~と……認めたくないのですが、マーモットが?」


 倒れたマネキンを小さい前脚でテシテシと無邪気そうに叩いているマーモット。正直、信じ難いが、恐らくはこの小動物が倒したのだ。


 興味深げに、マーモットはマネキンを叩いていたが、急にピンと立ち上がり、ヘンリーたちへと顔を向けると四つ足となり走り出す。ちょろちょろとヴェア男爵様と自分の間を駆け抜けると、またも後ろから打撃音が聞こえてきた。


「くっ、またもやマネキンが近づいていたのか!」


 振り向いた先には3体のマネキンの姿。2体は足を砕かれて倒れているが、残りの一体は包丁を手にして、振り上げた体勢で立っていた。


「おのれ、魔物がっ! ホーゾーイン流の槍捌きを見せてやる!」


 右足を強く踏み出すと、腰をひねり全身の力を右腕に集めていき槍を突き出す。その一撃には十分な力が乗っており、マネキンごときはあっさりと砕けると思っていた。


 ガン


 だが、鈍い音を立てるのみで、槍は突き刺さることもなく、マネキンの表面にて止まっていた。ジ~ンと腕が痺れて、ヘンリーは顔を顰める。


「なんという硬さだ。案山子のように脆そうであるのに、まるで鉄塊を叩いたかのようだ」


 すぐに右からの打ち払い、左足へと足払い、腰に掛けての回転斬りと、槍を扱うお手本のように流れるように攻撃を繰り出すが、その全ては効かなかった。まるで地に根を張る大樹のようにびくともしないし、その身体は硬く槍の攻撃を全て弾く。


 無力。腕には自信があったのに、このマネキンには傷一つ与えられないし、それどころか動かすこともできないことに、力のなさに悔しく思い口を強く噛む。縛りは聞いていたが、それでも少しはお役に立てると、自身の腕ならばと考えていただけに、これだけ悔しいことはない。しかしながら、ヴェア男爵様にとっては予想内らしく真剣な表情で肩を叩いてきた。


「ぬぅ……ヘンリー、こいつは私たちが見ている間は、その身体を鉄のように硬くするのだ、ゆえにそなたの腕が悪いわけではなく、たとえ剣聖でも同じ結果になっていただろうよ」


 ガッシャン


「なんと……あらかじめ聞いておりましたが、これほどとは。これでは倒すこと困難ですね」


 ガランガラン


「うむ。ゆえに我らは敵の気配のみを感じ取り攻撃をしなくてはならぬ」


 ガッツンガッツン


「こ奴らは気配もしないですし、戦うのは……え~と……」


 ガラガッシャーン


「……」


「……」


 危機感を露わにして、真剣に話し合う私とヴェア男爵様の後ろで、何かを壊す音がひっきりなしにしてきてるので、大体予想できて無言になってしまうと、ポンと肩を叩かれた。


 見ると、アミさんであり、その後ろには多くのマネキンの残骸が転がっていた。そして、マーモットがちっこい爪を光らせてブンブン可愛く振っていた。マーモット大活躍である。


「このダンジョンの『ルール』は大体理解したであります。見れば分かる通り、貴君らは足手纏いとなるので、お帰りください」


「あ、はい」


 アミさんの冷徹な表情と、素っ気ない態度に気圧されつつ、肩を落として気まずげに頷く。そうして、ヘンリーの初めての命をかけた危険なダンジョン探索は終了した。これでは武勇伝にはならないなと、ちょっぴり哀しいヘンリーであった。


          ◇


 人が見ている間は動かずに、見ていないと動く。振り向くたびにマネキンが徐々に近づき、追いつかれたらゲームオーバー。ホラーゲームでたまにいる敵で、見ている間は壊せないことにイライラした記憶があるマーモット。それが俺、マーリンだ。


『人が見ている間は動けないが、硬度がオリハルコンのように硬くなる。見ていない間は紙装甲となる魔法生物。ゴーレムの素材となる。名前は、ナナミ、いえ、イイミ、いえ、それではない。え~と、少し待ってください。どこかで聞いた覚えがあるんですよ』


『あれでしょ、SCPのイナミちゃんだよ。人が見ていないと殺されるやつ』


『あ~、あ~、聞こえません。戦闘中につき混線ならぬ、混戦してました。この魔法生物はマネキちゃんと名付けました!』


『ねぇ、君は本当にAIアシスタントなの? なにか調べてない? それにとっても短絡的で捻りもないネーミングセンスなんだけど?』

 

 なぜか、ペラペラと紙をめくる音がするので、ジト目で尋ねるけど、それ以上AIアシスタントからは返答はなかった。とても怪しいけど、今気にするところはそこではない。


 マネキちゃんはゲーム中では動くところは見れなかった。振り向いた時には、マネキンが走り始める格好だったり、殴りかかろうとする格好で動きを止めており、じわじわと追い詰められるネズミのように恐怖心を煽ってきたものだ。


 一度で良いから、動くところを見てみたいと思っていたのだが、今回判明した。


 視線をずらすと、マネキちゃんはのっぺらぼうの顔の表面に三日月のように裂けた口が開き、ニタリと笑いながら、足音一つ立てずに、滑るように近づいてくるのだ。


 その人を小馬鹿にして、獲物としか考えていないだろう笑みにイラッとくる。え? なんで分かるかって?


 パーティー一行の視界に入っていない店舗。そこにある洋服が吊るされている中で、服の間から隠れていたのだろうマネキちゃんがこっそりと近づいてきたからだ。


 ニタニタと嗤いながら、音もなくスーッと滑るように歩く。


 俺の目の前を。


「てい」


 マネキちゃんの足に軽く爪を振るう俺。


 スパン。ガラガッシャーン。


 紙装甲とは言い得て妙で、本当に紙切れを切ったかのような軽い感触でマネキちゃんの足は切断できた。


「!?」


 マーモットが視界に入っているはずなのに、焦ったように、なぜかマネキちゃんは周りをキョロキョロと見渡す。


 このやろー、マーモットは対象外かよ。無視すんなよ、こら!


「ここにいるだろ、ここに!」


 怒りの鉄拳を喰らえ! ていていてい。爪をブンブン振るって、マネキちゃんを砕いていく。


 アピールしても哀しいかな、マーモットはピギーとしか鳴くことはできず、反撃もしてこず、あっさりと倒せました。


 なにやら男爵と兵士が真剣に話し合ってるけど、この人たちは邪魔だな。アミに追い払うように指示を出そうっと。


 こいつらがいるとマネキちゃんが硬いから倒せないだけなんだよ。指示通りにアミは2人を追い返し、通路には俺たちだけとなった。トボトボと帰る姿に哀愁を誘うけど、ごめんね、本当に役立たずなんだもん。


 マーモットとして、可愛らしいお手々を振って見送ってあげる。なぜか俺を見て、ますます悲しそうにしたけど、なんでだろうね?


「ボス。見てください、こんなに簡単に壊せます」


 アミが隠れていたマネキちゃんを蹴ると、あっさりと粉々に吹き飛んだ。さすがは紙装甲。


 にしても、アミでも同じということはだ。


「『人に見られている間は動けないが硬い』。即ち人でなければ紙装甲のデメリットだけが残るんだ」


 マーモットとマ族は人扱いされないらしい。種族差別反対! マーモットにも権利を!


「自分もそのように推測します、ボス。しかしながら相手もそのことに気づいたようでありますよ?」


 数体倒されて、マネキちゃんも事態を理解したのだろう。隠れ潜んでいた場所から続々と姿を現してきていた。どうやら、案山子のように倒されるのを防ぐ知能はあるらしく、普通の戦闘に変える模様。


「だけど俺的にはそれはルール違反だ。ダルマさんがころんだで、動いている奴は死ぬ運命だって教えてやるとするか」


 おヒゲをプルプルと震わすと、マーモットはピギーと鳴いて構えるのだった。

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更新乙 このAIは・・・似た感じのポンコツを知ってる!?うっ頭がwww ルール違反と、ルール破りにはお仕置きだねピギー!
マーモットを想定してないとかデバッグ不足ですね
人類特効のメタダンジョンにテイムモンスターが活躍するようなモノですね まあ、何故か()主従逆転?しているようですけど
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