月回りの案内人
──魂と案内人の短編アニメ脚本ビジュアル版(構想)
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はじめに
これは、死者の魂が月を一周し、裏側から輪廻する世界。
案内人の視点から描かれる、再会と別れと再生の物語。
短編アニメとして構想したものですが、自分には映像化の力はありません。
誰かがこの続きを、映像でも物語でも、音楽でも――
何かの形で“産み出して”くれたら嬉しいです。
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『月回りの案内人』
⏱約30分の短編アニメ映画構想/ビジュアル脚本形式
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【シーン1】
タイトル表示とプロローグ(静かな宇宙空間)
映像描写:
夜空が静かに広がる。
ゆっくりと月が回転していく。月面は不思議な光をたたえ、裏側はまだ見えない。
ナレーション(女性・静かな声):
「魂は、月を一周する。
その旅の中で、想いを手放し、光となって生まれ変わる。
これは、その旅を導く、ひとりの“案内人”の物語。」
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【シーン2】
案内人の登場(月面に立つ)
映像描写:
白いローブをまとった青年の姿が、月面にぽつりと佇む。
髪は銀、目は星のように光る。名はまだ明かされない。
背後には巨大な「魂の川」が流れており、小さな光の粒が流れている。
案内人:
「今日もまた、ひとつの魂が巡ってくる。
思いを手放せず、戻ろうとする魂ほど…道に迷いやすい。」
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【シーン3】
小さな魂の到着(少女の霊)
映像描写:
星屑のような光がふわりと舞い、
やがてその光が少女の姿を結ぶ。7歳くらいの、赤いワンピースの子。
少女はきょとんとしながら周囲を見回す。
少女(小声で):
「……ここは、どこ?」
案内人(近づいて):
「月の道だよ。君は、旅の途中にいる。」
少女:
「旅? なんで私、こんなとこに……? ママは?」
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【シーン4】
魂の旅の説明
映像描写:
案内人が静かに手を振ると、空に光の軌道が浮かび上がる。
それは、月を一周するような円軌道。そこに無数の魂がゆっくり進んでいる。
案内人:
「魂はここを巡って、思いを解いていく。
そして、裏側から――新しい命に、還るんだ。」
少女:
「でも……まだ、行きたくない。ママに…会いたい。」
案内人(少し沈黙してから):
「ほんの短い間なら…“会いに戻る”こともできる。
けれど、長くとどまれば、生きている人も…連れてきてしまう。」
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【シーン5】
迷いと選択の始まり
映像描写:
少女の目に涙がにじむ。
案内人は静かに、指先で“光の舟”を浮かべる。それに乗れば「地上」へ降りられる。
少女(小声で決意):
「……それでも、行く。」
案内人(やや厳しげに):
「ならば、約束だ。
月がひとめぐりする前に、戻るんだ。さもなくば――君は、ここに囚われる。」
映像:
舟に乗った少女が、光の帯に包まれ、月から離れていく。
案内人は静かにそれを見送る。
背後の“魂の川”がわずかに波立つ。
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【シーン6】
現世:母との再会
映像描写:
地上の夜。静かな団地の一室。母が写真を見つめ、眠る前の祈りを捧げている。
窓際に、月の光とともに少女の姿がふわりと現れる。
少女(涙ぐみながら):
「……ママ……」
母(かすかに呟く):
「今夜も…夢で会えたらいいね…」
映像:
少女の手が伸びるが、触れられない。
それでも母は、どこか気配を感じているように微笑む。
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【シーン7】
月面:案内人の気配
映像描写:
月の“魂の川”に揺らぎが生じる。案内人は舟の軌道を追っている。
足元の“透明な花”がしおれはじめる。
案内人:
「時が満ちる。
まだ戻らなければ、彼女は“還れぬ者”となる。」
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【シーン8】
少女、選択の時
映像描写:
少女は母の枕元で歌を口ずさむ。母の頬に涙がつたう。
少女の足元に、月の“影”が現れ始め、彼女を引こうとする。
少女(苦しげに):
「……まだ……ママに言いたいことが……」
その時、月光の中から案内人が現れる。
案内人:
「もう戻らなければならない。さもなくば…君も、母も…こちらに来ることになる。」
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【シーン9】
決断と別れ
映像描写:
少女は母の額に手をかざし、光が流れる。
母の夢の中に、少女と再会する夢が映し出され、母は安らかな表情で眠る。
少女:
「……ありがとう。夢で会えたね……」
案内人が舟を浮かべる。少女が乗ると、影は消え、透明な花がまた咲く。
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【シーン10】
再び月へ/旅の終わりと始まり
映像描写:
少女の魂は“魂の川”の上流へ進み、やがて光の粒に還っていく。
案内人は空を見上げ、次の魂を迎える。
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【エピローグ】
新たな魂、新たな案内
映像描写:
老婆の魂が現れ、案内人にほほえみかける。
老婆:
「……あなたが“あの子”を送ってくれたのね。ありがとう。」
案内人(目を見開く):
「あなたは……」
(老婆がかつて案内人の“母”だった可能性を残して終わる)