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友という存在、の形

「またやらかしたみたいだな、万才」


 翌日の体育の授業中。いつも通りペアを組んでくれた鈴宮とストレッチをしていると、鈴宮はそう言って笑いかけて来た。


「まあな。人気者は辛いぜ」


 言いつつ俺は開脚した左足に向けて体を伸ばす。


「はは。……でもいいのかい? このままだと、また君の評判が悪くなるばかりだよ?」

「いいかどうかと聞かれれば、既に俺の評判は最悪だから何とも言えないな。正直、思った以上に嫌われていたみたいだ。まさか村崎さんと少し話しただけであそこまで目立つとは思わなかった」


 これは本音だ。

 入学式の件について事実以上の流言飛語が飛び交っていることは知っていたが、俺の思っていた以上にまだみんなの中に根付いていたようだ。人の噂も七十五日。そろそろ三か月になるが、まだまだ俺の噂は消えそうにない。


「そうだね。正直俺も最近よく言われるよ。……まあ、いろいろとね」


 言葉を濁してくれたが、鈴宮の意図は伝わった。


「……悪いな。俺のせいでお前に負担をかけることにもなってるよな」


 鈴宮は優しいから言わないだろう。優しいから見えていても見ないふりをし、言われたとしても否定してくれるかもしれない。


「なあ、もういいんだぞ? 無理に友達を続けなくて。俺はバカだからな。きっとまたいつかやらかす。そのとき、これ以上お前らに迷惑をかけるのは」

「言ったはずだよ、万才。俺は自分の意志で君と友達になりたいと思った。だから、その話はこれで終わりだ」

「……そうか」


 有無を言わさぬ雰囲気。

 いつも優しいこの男の感情の起伏を俺が見たのは、これが二度目だ。


「……君は強いね。俺は君みたいにはできない」


 グラウンドへ足を向ける前、ふと漏らした鈴宮の声。

 その笑顔の奥には、少しの諦めと、少なからずの憧憬の色が見えた。


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