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俺なりのハッピープリンス、の形

 とまあ、そういうわけで、俺達はこうしてテスト週間であるにもかかわらず育才部の部室へと集まっているわけなのだが……。


「それにしても九十九君、あなた一体どこが分からないの? このテスト結果も先輩が言っていた通りわざとでしょうし、さっきから私の渡した問題集もつまらず解いているし。本当はあなた、どのくらいの学力なのかしら?」


 文句や茶々を入れつつ問題集を解き続けていた俺に、村崎先生が首を傾げながら聞いてくる。


「確かに、それは少し気になるわね。もっともあなたの学力なんてたかが知れているけれど」

「? 九十九さんは私のお仲間ですよね? そうですよね? ね?」


 しごきにしごかれて涙目になっている皇と、その皇以上に疲れた様子の一ノ瀬。彼女達も息抜きとばかりに先生に続いてこちらに視線を向けて来る。


「ああ、……いや、言っとくけどほんと大したことないぞ? 多分真面目にやっても平均点くらいだと思うし」


 というか俺はこれ以上点数を上げる気はない。なので、さっきからずっとこんな勉強会は無駄でしかないと思っているのだ。

 俺が最下位でなくなれば、他の誰かがこの場所に来ることになる。ならば俺が縁の下の力持ちよろしく、きっちりとこの場を守り抜こうじゃないか。


「そうなの? てっきり凄く賢いんだとばかり思っていたけど……」


 不思議そうに首を傾げる先生。見ると一ノ瀬も納得した様子はない。ただ皇だけは、

「えっ⁉ 九十九さんって実はそんなに賢いんですか⁉」

 と驚いていた。

 ……というか、平均点の意味知ってんのかこいつ? それか俺がメチャクチャバカだと思われていたのか。……悲しいことにどちらの可能性も否定できないんだな、これが。


「買いかぶりすぎですよ。それより、はいこれ、終わりました」


 俺は話をそらすため素早く残りの解答欄を埋め、先生に渡す。世界史の先生なので世界史の問題集なのだが、単語を埋めるだけなので頭を使わないで済むのは楽だ。他の考え事をしながらでもできるので、勉強しているふりをしたいときにはおすすめだな。あとは適当な数学や物理の問題を解き続けるのもいい。アニメやテレビを観ながらでもできるので、時間を有意義に使える。


「そもそもどうしてあなた、わざとこんな点数をとったの? 普通テストの点数なんて、高ければ高いほど嬉しいものじゃないの? わざわざ低い点数を取って、何の得があるのかしら?」


 俺が逸らそうとした話題を引き戻したのは一ノ瀬。すっかり話題は逸れて勉強に戻ったと思ったのだが、三人の視線は未だ俺の方を向いたままだった。先生も渡した問題集を採点しながら俺の方に意識を向けている。

 ……さて、どうしたもんか。正直そこまで大した理由はない。ただの思い付き。言ってしまえば自己満足のためなのだが。


「ああ……。あれだ、王子様にでもなってみたいと思ったんだよ」

「? どういう意味?」

「まあ、それはもういいだろ? そろそろ勉強に戻ろうぜ。じゃないと、ほんとに皇が後輩になる日が来るぞ」


 今度こそ話を逸らすため皇の成績を持ち出す。さっきまでやる気など見せなかった俺が何を言っているのかと訝しんだ様子の彼女達だが、それ以上は聞いてこなかった。

 ただ「うっ」と声を漏らした皇から向けられた鬼でも見るかのような恨めし気な視線に、俺はぱちりとウインクを返した。



「……ほんと、どうしてだろうな」


 再び始まった一ノ瀬の鬼授業に悲鳴を上げる皇。そんな姉妹の様子を眺めながらふと漏れた俺の声は、誰の耳にも届くことなく、先生が赤ペンを走らせる音にかき消された。



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