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少年

「あら、また会いましたね、少年」


 久しぶりに訪れた丘の上の墓場。

 名前すら知らないこの場所は、いつも僕の逃げ場所だった。


「? どちら様ですか?」


 見知らぬ人に話しかけられたのでそう尋ねると、なぜか目の前の美しい女性は心底不満げな表情を浮かべる。


「もう~、先週会ったばかりじゃないですか。駄目ですよ、少年。女性の名前は一度で覚えて、あえて知らないふりをして会話の糸口にするのが紳士のテクニックです」


 まったく何を言っているのか理解できないが、先週のこの場所に記憶を遡ると、彼女のことはすぐに思い出した。


「ああ、そういえば先週会いましたね。お久しぶりです、お姉さん」

「やっと思い出してくれましたか。ですが前にも言いましたよね? 私はお姉さんではなく、綺麗なお姉さんです。では声をそろえて言ってみましょう。リピートアフタミー?」


「…………」


「……少年。なにもそんなに距離を取ることはないんじゃありあませんか?」


 あまりの頭のおかしさに流石の僕もドン引きだ。


「それで、今日はまたどうしたんですか?」


 気を取り直すように言って僕の隣に腰を下ろしたお姉さん。その彼女の手には、ここに来る途中購入したのだろう缶コーヒーが握られていて、そういえば前見た時もブラックを飲んでいたなとふと思った。


「? どうもなにも、前にも言った通りここは僕のお気に入りの場所なんです。何か考え事をしたいときにはよく来ますよ」

「そうですか。……そうですね、私もそうですし」


 それきり続かなくなった会話。

 ただ黙って夕陽を眺めるだけの時間。

 けれどもなぜだかそれを心地いいと感じる自分に、僕は酷く驚いた。


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