憧れのキャンパスライフ、の形
「やっぱ大学って広いんだな」
電車やバスを乗り継いで数十分後。関東教育大学へと足を踏み入れた俺たちはそのでかさに驚いていた。
「ええ、うちの学校と同じくらいあるわね。正直驚いたわ」
「え⁉ うちの学校ってそんなに大きいんですか? 普段体育館より向こうにはあまり行かないのでよく知りませんでしたが」
一ノ瀬の言葉に村崎さんが驚いたように言う。
というか他の学校に来て自分の学校のでかさを知るってどうなんだ?
「まあ、運動場の向こうのでっかい畑なんかもうちの敷地らしいからな。そう考えたら広さだけでいえば変わらないんじゃないか? もっとも建物の数は比べるまでもなくここの方が多いが……」
とは言ってもここは大学であっちは高校だ。そもそも比べること自体がおかしい。
「ああ、確かにここはあっちもこっちも建物だらけですね。うちの学校はどちらかというと運動場なんかが多いですが」
皇の言葉に一ノ瀬が苦笑する。
「うちも高校にしてはとても多いのよ? むしろ余っているくらい。父が調子に乗って建物を建てすぎたから、本校舎の中身が空っぽになってしまったと言っていたわ」
「ああ、なるほど。四階建てなのに空き部屋ばっかだし、本校舎内に部室があるのが俺たちくらいなのはそういうことだったのか」
少しあのおっさんに興味が湧いたな。
「……でもこれだけ広いと三島准教授だけを見つけるのは大変ね」
言って一ノ瀬はぐるりとキャンパスを見渡す。つられて俺も視線を向けるが、右を見ても左を見ても良く分からない建物が並んでいて、とてもこの中から人一人見つけることなどできそうもない。
「ああ、けど迷子になったら最悪だからな。万が一のことを考えるとあまり別行動はしたくない」
「そうですね。私も一人では迷子になる自信しかありません」
いや、そこは迷子にならない自信を持てよ。そう思うが、多分ここにいる全員そう思っているはずだ。
「ふむ……。なら班分けにしましょう」
「班分け?」
一ノ瀬の言葉に首を傾げる皇たち。
「なるほど。二手に分かれて三島を探そうというわけか?」
「ええ、それなら迷っても何とかなるでしょう」
「ああ、班分けってそういうことだったんですね。なるほどです」
「はい。それなら安心です……」
俺としてはあまりこいつらから目を離したくはないが、あまり過保護になりすぎるのもこいつらのためにならないか。
「分かった。なら適当に班を――」
俺が班分けの確認をしようと口を開いたその時、
「では、そういうことだから九十九君、あなたは西側の建物から探してくれるかしら? 私たちは東側を探ってみるわ」
「え?」
そう言って一ノ瀬は俺と同じく困惑する二人を連れて行ってしまった。
「……え?」
彼女たちが去った方を見つめながら俺はただ茫然と立ち尽くす。
どうやら俺は班分けでは必ず一人班になる運命のようだ。運命というか呪いだな、もう。
……まあ、俺が一人になる分には構わないか。
俺は仕方なく言われた通り手近な建物の方へと向かった。
*
「ねえ、君、高校生? あ、もしかしてキャンパス見学かな?」
適当に建物内をうろついていると突然、後ろから女の人に声をかけられた。
振り返って声の方を見ると――美女がいた。
垢ぬけたお洒落ないまどき美人なお姉さん。一行に詰め込むならこんな感じだ。
「はい、あなたに会いたくて参りました」
「へ……?」
しまった。
つい、いつもの癖で適当口走ってしまった。
「あ……いや、今のは」
流石に初対面の相手に今のはまずかったと慌てて否定する俺。
そんな俺を呆けた様子で見ていたお姉さんは、
「……プフッ……フフフ……アハハハハ」
突然声を上げて笑い出した。
「え?」
「フフ、君、面白いね? 私に会いに来てくれたの? 嬉しい♪」
言ってお姉さんは明るく染めた長い髪を右手で軽くかきあげると、その大きなおっぱい――もとい、胸を俺に押し当ててニコニコと俺の目をのぞき込んでくる。
「ええ、お姉さんのような美人に会うために来ました」
「ええ~~、そこはお姉さんに、だよ! 美人なお姉さんだと私以外も当てはまちゃうでしょ?」
「なるほど。ならお姉さんに会いに来ました」
「フフ、ならよし!」
良く分からないが気に入られてしまったようだ。年上の美人に気に入られて俺もよし!
「それで、本当はここに何しに来たの?」
一通り満足げに笑ったお姉さんはその会話の流れのまま尋ねてきた。
「いえ、少し会いたい人がいて……」
「ふーん。やっぱり私に会いたいっていうのは嘘だったんだー」
からかうようにわざと唇を尖らせて言うお姉さん。可愛い。
「いえ、お姉さんに会いたくて来たというのは嘘ですが、お姉さんに会えてうれしいというのは本当です」
「っ! ……へえ。やっぱり君、面白いね」
正直に答えるとまたもや俺の好感度が上がったようだ。何だか普段から拒絶されてばかりだから優しくされると逆に怖くなってきたな。
「ま、いいや。それで、誰に会いたいの? 今日は平日だから学生は私みたいにレポート提出するために来てたり、サークルで集まってたりする人くらいしかいないよ?」
「三島輝明准教授です」
聞かれたので答える。
「え、三島先生? なら私、これから先生のところ行くから一緒に行く?」
おお、なんということでしょう。幸運の女神だな。
「マジですか⁉ やった、ラッキー。美人な上に優しくて便利とか天使か女神だな」
(本当ですか。嬉しいです。素敵なお姉さんに出会えてよかったです)
「……君、本音と建前が逆になってるよ?」
「あ、……流石ですね。やっぱり女神か何かですか?」
「いや、そこで突っ込んじゃうんだ⁉ ……ふふ、やっぱり君は面白いね。いいおもちゃ見つけちゃった♪」
「……お姉さん、どうやら俺もヴィーナスだったようです」
最後にちらりと聞こえた声はきっと何かの幻聴だったのだと思うことにした。
*
「ここが三島先生の研究室だよ」
お姉さんに案内してもらい三島の研究室の前へとたどり着いた。広い学内でたくさんある中の一つ、特にこれと言って特徴のない扉だ。
「それにしても九十九君、一ノ瀬の出身だったんだね。私も一ノ瀬だよ? だから君は私の後輩君ということになるわけだ」
ここまで来る途中いろいろと聞かれた。そして別に聞いてもいないのにいろいろと聞かされた。お姉さんは教育学部の三年生で三島はその学部の講義を担当しているらしい。
お姉さんの名前は月影神楽耶。
「竹取物語みたいな名前ですね」
というと、
「金髪のかぐや姫ってどこの国の人なんだろうね?」
と言って笑っていた。月面人だから金髪なんじゃないかと思っている。
「なるほど。俺も美人の先輩ができて嬉しいです。月影先輩って呼んだ方がいいですか?」
「ん~、いや、やっぱ先輩じゃなくて神楽耶ちゃん、って呼んでほしいかな」
………は?
「年下のイケメン男子にちゃん付けで呼ばれるのが幼稚園の頃からの私の夢だったんだー」
いや、どんな幼稚園児だよそれ! そんな幼稚園児がいたら虐待を疑ってしまうな。
けれどまあ、どうせ今日限りの付き合い。せっかくなので俺は少女の夢を叶えるサンタとなろう。
「分かりました。出血大サービスですよ? ………神楽耶ちゃん」
「っ……んふふ~……ああ、いいっ! いいよっ! ありがと、つっくん♪」
先輩は嬉しそうにニコニコと……というより本当に夢がかなった子供のような少し気持ちの悪い笑みを浮かべている。そしてなんの躊躇い、思考もなく、俺のことを妙な愛称で呼んだ。
「……流石にそれはやめてください」
いくらなんでもその呼び名は嫌だ。
「それよりそろそろ入りませんか?」
ずっと部屋の前でくだらないことを言っていても仕方がない。俺は早く用を済ませて帰りたいのだ。
「それもそうだね。なら私が先行って用事済ませるから終わったら呼ぶね? 君のことも説明しとくから」
「分かりました。……何から何まですみません」
「ふふ、いいよ、それくらい。じゃ、ちょっと待っててねー」
言って月宮先輩は部屋をノックして入っていった。
可愛くて人懐っこい美人な女子大生に休日も会える。……俺も大学の教授になろっかな?
*
しばらくして、一ノ瀬達に男を見つけたからカフェで待つように伝えたあと、俺が女子大生ウォッチング(あんまり人がいなかった、残念)に励んでいると、ガラガラと先輩の入って行った部屋の戸が開く音がした。
「ごめんねー、ちょっと遅くなっちゃった。一応君のことは伝えてるからこのまま入って大丈夫だよ」
「いえ、助かりました。ありがとうございます」
「うん♪ じゃ、またね~」
言って先輩はその場を立ち去った。
先輩に感謝しつつ俺は部屋の戸をノックする。
「はい」
男性の声。
「失礼します」
思ったより狭い部屋だった。汗牛充棟。俺の背丈よりでかい本棚がいくつか並んでいてそのすべてに分厚いファイルや本が敷き詰められている。綺麗に整理されてはいるがやはりこれだけものが多いと狭く感じるな。
「ああ、君が月影君が言っていた私に会いに来てくれたという高校生かな?」
「はい、先生の論文にとても興味を持ちまして、是非とも一度会って詳しく話を伺いたいなと思い――」
とりあえず適当言って慕っていると言う体で会話を成り立たせる。
「ほう、それは嬉しいね。そう言って訪ねて来てくれた高校生は君が初めてだよ。狭苦しい部屋で悪いがどうぞかけてくれたまえ」
言って着席を促される。
言われるがまま俺は彼の向かいの席へと腰かけた。
「いえ、こちらこそ連絡も入れずに突然訪ねてしまい申し訳ありません」
明日なら事前に連絡を入れたのだが、今日突然決まったため忘れていた。というかもともと先生本人に接触するつもりはなかった。周辺情報さえ聞ければ良かったのだが……。
「今日は講義も無くて時間を持て余していたから構わないよ」
言って爽やかに笑う三島。……何故か分からないが負けた気分だ。
それから小一時間ほど彼の話を聞いた。俺は適度に相槌を打ちながら所々で自分の考えを述べる。ちなみに論文がどうこうという話は適当だ。話を聴きながら要点を先読みして内容を理解しているに過ぎない。
「――いや、それにしてもここまで面白い議論ができるとは思わなかったよ。確かに君の言う通り人の学習能力というのは生まれ持った知能や周囲の環境で決まってしまうかもしれないね。そもそもの土台となる能力、ある程度の知能や環境がなければどれだけ勉強しても意味はないのかもしれない」
「いえ、先生の学習能力はこれまで学業に費やした時間がすべてだという話も面白かったです。人生は有限。その限られた時間の配分が人を作るのだという話は新鮮でした」
始めはあまり興味はなかったが、聴いてみるとなかなかに面白い話だった。
東大生やその他の有名大学に通う学生、いわゆる学歴の高い人間は一部の明らかな天才を除けば幼いころから一日十時間近くも机に座っていたそうだ。そのことから、特別知能の高くない人間でも、時間をかければ学習能力は身につく。つまり、学習能力は学習時間に比例するというのが彼の考えらしい。もちろんその人に適した勉強法でという前提だが、確かに知識の有無などはかけた時間によるだろう。幼いころから本を読みあさっていた人間と外で元気よく遊びまわっていた人間。この二人が始め同じ知能、同じ環境であったとしても十年後の彼らの学習能力が同じとはとても言えない。一方は膨大な知識を、一方は健康な体を手に入れた。どちらがいいとは言わないが、二人の間にはその十年分の差が確実にある。まあ、世の中にはどうしても個人差というものはあるから、あくまでも一般的な話ではあるが。一ノ瀬なんかがいい例だ。規格外に知能の高い人間や文武両道、そのどちらにも秀でた欠点のないような人間だっている。他が遊んでいるときに努力してきた彼ら彼女らに嫉妬するのは愚かだが、それでも凡人が本一冊を丸覚えするのに数か月かかったとして、それを数分でされたらそれはきっと才能が違うと思うのだろう。
一通りの話を聞き終えた俺は、そろそろお暇しようと話を切り上げる。
「今日は貴重なお話し、ありがとうございました。後学のために役立てたいと思います」
一体何に役立てるのかよく分からないが、適当にそう言っておく。
「こちらこそいい刺激になったよ。よかったら高校卒業後の進路にこの大学を考えてくれれば嬉しいね」
「ええ、選択肢の一つとして考えておきます。と言っても受かるかどうかは分かりませんが」
軽く冗談を言うと笑ってもらえた。
空気が和んだところで俺は今日の目的を実行する。
椅子から立ち上がって軽く部屋を見渡すふりをしてふと、視線を三島のデスクの上で止める。
「あ、手作り弁当ですか? いいですね。そういえば三島先生はご結婚は……」
突然失礼だとは思ったが今なら大丈夫だろう。彼の視線がデスクを向いた瞬間、腰近くに置いていた手でポケットからスマホを取り出すと、さっと指紋認証でロックを解除してボイスレコーダーのアプリで録音を開始する。
「ああ、三年前にね。弁当は毎朝作ってもらっているよ」
「へえ、次期教授候補でその上毎朝お弁当を作ってくれる”きれいな奥さままでいる”。まさに順風満帆ですね。羨ましいです」
「あ……、いや、はは……。お世辞が過ぎるよ」
「ですね。失礼しました。それでは僕はこれで失礼します。今日は本当にありがとうございました」
最期に礼を言って俺は部屋を後にする。
「……ふう。これで証拠はそろったな」
俺はポケットからスマホを取り出すと『録音中』と表示された画面を止める。
そしてスマホをポケットにしまい、そのまま一ノ瀬達のいるカフェに向かおうと歩き出す。
と、
「もおー、遅いよ九十九君。ずっと待ってたんだからね!」
何故かさっき別れた場所に先輩がいた。
「? どうしたんですか? 俺に会いたくて会いたくて震えちゃいましたか?」
「ああ、あれ凄く好きだったな。……引退って聞いたときは寂しかったよね」
「ええ、俺はナルトの映画の時のが一番好きでした」
「ああ、あれいいよね~。私ももしもって考えて涙が……って、違うよ! なんで話逸らそうとするの!」
「いや、俺はツッコんでもらうつもりで言ったんですが、そのまま逸れちゃうとは思いませんでした。それで、どうして先輩がいるんですか?」
「ふっふ~ん。……気になる? 私が君のこと待ってた理由、男の子ならやっぱり気になるよね?」
「ふむ……。確かに気になりますね。それで、どうしたんですか? 俺に惚れちゃったならそう言ってくださいよ。大丈夫です。誰にも言いませんから。で、どうするこれから? 俺のうち来る?」
「ちょっ⁉ そこは君が照れるか素っ気ない態度取|るかの二択じゃないの⁉ 何で君そんなにぐいぐい来るの?」
「いや、神楽耶が俺を好きで好きでたまらないってきもち、分かるからさ。可愛いお前にこんな苦しい思い、させらんねえだろ?」
「だから違うって言ってるじゃん‼ というか何でさっきからちょくちょくタメ口――彼氏面してんの? あと、顔面カッコいいからいいけど普通に言ってることダサいしきもいよ?」
…………きもい。
「はいはい、そうですね。俺はどうせきもいですよ。……それで、そんなきもい俺に一体何の用ですか? あれですか? 壺ですか? いくらですか?」
「ご、ごめんて……。じょ、冗談だから。だからそんなに落ち込まないで。財布もしまって」
「まあ、冗談はこれくらいにして、何ですか先輩? もしかしてさっきのお礼ですか? やっぱり壺買わそうってことですね?」
「……冗談はこれくらいにしてって自分で言ったんじゃん」
「いえ、そこはご愛敬ですよ。やめたと思ってからのしつこさが優しさです。……で、どうして月影先輩がまだいるんですか? 可愛く「うん♪ じゃ、またね♥」って言ってキスしてくれたじゃないですか」
「してないよ⁉ というか私“♥”も付けてないし⁉ さっきから君ちょくちょく私のことからかってくるよね? 私ツッコミじゃないよ?」
「いや、試しにボケてみたら思いのほかいいツッコミが返って来たので。でもそうですよね。先輩がツッコむんじゃなくて俺がツッコむんですもんね」
「下ネタやめろ‼ いくらポコチン大好き女子大生にだってそれはダメだよ! それに私はしょ――って、わーーっ⁉」
自分で言って自分で自爆している。アホなのか? あと何気にポコチンとか言ってるし。
さては先輩ムッツリだな?
「なるほど。道理で俺が名前で呼んだ時、ほんとに夢が叶ったみたいに嬉しそうにしてたんですね。俺を変な名前で呼んだのも先輩が常日頃から妄想している年下彼氏とのイチャイチャキャンパスライフの賜物ですか? 先輩が美人だからご褒美ですけど、常識的に考えて今日会ったばかりの高校生に“つっくん”とか呼ぶのはヤバいですよ?」
「ち、違うから! そんな妄想とかしてないから! 私がしてるのは年下彼氏に名前で呼ばれるまでで自分で呼んじゃったのは……って、違う‼」
俺の名推理は思いのほか当たっていたようだ。このまま先輩を泳がせていたらもっと面白い暴露が聞けそうだが、時間も時間だ。それにこれ以上醜態をさらして、いよいよ責任を取れなんて言われだしたら面倒なので話を進める。
「それで、先輩がアホだろうが、ビッチだろうが、そういうことに興味はあって結構誘われたりするんだけど飲み会の席でやっぱりチキって「そういうの目的ではちょっとね~」とか言って言い訳して、そのせっっかくの美貌と熟れた肉体を持て余しているムッツリチキンなスケベでも何でもいいですけど、いい加減真面目な話しませんか?」
「~~~っ。き、君がそれを言うの⁉ それになんで最後のだけめちゃくちゃ具体的なの⁉ 違うから‼ 別にチキンなわけじゃないから! スケベでもない! 私大人なお姉さんだから!」
今現在も自分で自分の傷にコーラぶちまけていることに気付いていない先輩。なんだか出会った時に抱いていた印象がすべて霧散してしまった。
「はいはい、それでなんで俺を待ってたんですか?」
俺が言うと、悔しそうに涙の浮かぶ目で俺に抗議していた先輩は、思い出したように肩にかけていた鞄の外ポケットからスマホを取り出す。派手目な見かけのくせにスマホはいたって普通のもので、ギャルがよくやっているキラキラシールも何もついていなかった。爪はこんなにキラキラしてんのにな。
「……連絡先、交換しときたくて。……ほんとはもっとお姉さんみたいな感じで聞き出すつもりだったんだけどね」
ムッとした顔をやや赤らめて言う先輩。
「ああ、……いいんですか? 俺一応男ですよ?」
心配して言ったのだがやはり先輩はやっぱりアホの子だった。
「え――ふふ、少年、まだまだ男を語るなんて十年早いわよ♪」
急に大人ないい女ぶる先輩。確かにそう言って挑発的に目を細める仕草はお姉さんみたいでドキリとするが……。
「ですね。ならチェリー同士、何の問題もありませんね」
「っ、……チェリーっていうな~‼」
それから先輩と連絡先を交換して。
「じゃ、私は行くから。また連絡してね♪」
「ええ、……あ、いや、多分近いうちに連絡すると思います」
「うぇっ⁉ ……う、うん……待ってる///」
何故だか顔を赤らめてもじもじしているムッツリチェリー先輩。
「では俺も連れを待たせてるんで、それじゃ」
「えっ――あ、うん、またね」
これで三島の情報が探れる。それに美人で面白い先輩の連絡先もゲットした。
副産物にしてはそっちが俺の本命でいいような気もするが、とにかく今日見学に来てラッキーだったな。
連絡先が増えたことを一ノ瀬に自慢してやろうと思い廊下を急いだ。




