エピローグ
「ねえ、どうしてあなたはそんなにその答えにこだわるんですか?」
ふと、お姉さんは思い出したように言う。
「? 不思議なことを言いますね。生まれてきた意味を考えるのは、人間に生まれた特権でしょう?」
「………。相変わらず凄いですね。人生五周くらいしているんですか? アンパンのヒーローのおかげですね」
少年の言葉に、お姉さんはとぼけたことを言って感心したようにうなずく。
そんなお姉さんを、どこか空虚な赤い瞳に映しながら、ふっと息を吐いた少年。
「……それに僕は鬼らしいですからね。人間になれば、少しは愛してもらえるかもしれないでしょう?」
サア――
春の麗らかな風が頬を撫でる。
「? 何か言いましたか? 少年」
不思議そうに首を傾げるお姉さんに、
「いえ、なんでもありませんよ」
少年は小さく首を振ってこたえた。
彼はまだ気づかない。
その結果が、果たして何を意味するのか。
己が力量を把握できない者は、決して求めてはならない。
それを彼が理解したとき、少年は罪にまみれた自分に気づく。
「……私が愛してあげますよ」
ぼそりとこぼしたお姉さんの声は生涯、彼の耳に届くことはなかった。




