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エピローグ

『ねえ少年。勝負をしませんか?』

「勝負?」

『ええ、ちょっとした勝負です』

 目のお前のお姉さんは何が面白いのかニコニコと笑って言う。穏やかな微笑の奥の少し勝気な瞳が彼女の魅力の一つなのだと分かるには、その時の俺は少々幼かった。

「……まあ、いいですけど。どんな勝負ですか?」

『あなたがもしこの先の人生でその答えを見つけられたなら、私の勝ちです』

 随分と曖昧な勝負内容だ。

「勝ったらどうだっていうんですか?」

『私が勝ったら……ふふ。私が勝ったら、私の子供達を助けてあげてください』

 まるで彼女にはいつかの未来が視えているかのような確信に満ちた声で言う。自分が勝つことを確信しているような目だ。

 意味が分からず首を傾げる俺に、

『私が助けたその命、大切にしてくださいね』

 にっこりと笑った彼女の笑顔は、不思議といつまでも見ていたいと思えた。



 **



 俺の人生はごめんなさいの連続だ。元をたどれば生まれてきてごめんなさいという結論にいつも至る。それは一ノ瀬や皇……綾さんに救われた今でも、あまり大して変わらない想いだ。

 俺が俺を『僕』と称していた幼少期、俺は本当に一つのことにしか興味がなかった。

 たった一つ、それだけを知りたいと思っていた。


 俺・僕は一体誰なんだ?

 何のために生まれて、何のために生きている?


 それが知れたら、俺は俺という形を得られると思った。

 俺という形が得られれば、いつか誰かに――……



「君は、この結末に満足しているの?」

 心の奥にまで語り掛けるような温かい声。

「こんな答えが、君の求めていたものなの?」

 やめろ!

 あの人の声で、それ以上言うのはやめろ!

「君の欲しかったものは、こんな薄っぺらい偽物なんかじゃないでしょ? 君の求めているものは……っ!」

「…………黙れよ」


 それ以上の言葉を聞きたくなくて、俺はその細い首を握る腕にゆっくりと力を――……


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