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誰にも分からない彼女の心、の形

「やっぱり、君は見つけてくれなかったね」


 万才たちが帰った後、自宅の寝室で甘地苺桜あまじまおはそう独り言ちる。

 彼女の手には先ほどまで枕の下に敷かれていた一枚の写真。

 その中に映る今より一回り幼い若き日の自分と、誰かに面差しの似た優しい目の男性。

 不機嫌そうに顔をしかめ、むっとした表情でそっぽを向く生意気盛りの小娘に、男性は優しく微笑みかけ、そっと頭に手を置いてあやすようにぽんぽんと撫でる。そしてそれを鬱陶しそうに払いのける少女はその表情とは裏腹にどこか楽しげに見えた。


「君は、いつまでも亡霊に焦がれ続けるこんな私を、どう思うだろう」


 大人ですねといつもみたいに笑ってくれるか? 

 カッコいいといつもみたいに茶化してくれるか?


 これは彼女の戒めだった。

 若き日の過ちを、もう二度と犯さないように、常に忘れないための戒め。

 これは彼女の地図だった。

 この道(教師)に進むと決めた時、その胸に誓った信念を貫くための道しるべ。

 そしてこれは――


「君が認めてくれたなら、私はきっと大人になれる」


 寂しげに揺れる彼女の瞳を、拭ってくれる者はまだいない。



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