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プロローグ
痛みも苦しみも、俺にとってはすべて嘘でしかない。
嘘であると知っていて、嘘でなければ意味がなくて。それでも嘘であることを否定したいと願う。
こんなにも残酷な世界で、どうして俺は生きていけるのだろう。笑っていられるのだろう。
本当の俺を……いや、本当の僕を――
綾さんですら、教えてはくれなかった。
この先もきっと。きっとだ。
きっといないと知っている。
知っているのに期待して、失望することを恐れるから踏み込めない。
踏み込んだら傷つけてしまうから。
踏み込んで、知って、受け入れて。でも返せない。同じだけのものを、本当の俺《僕》を――
ただ、昔から一つだけその答えを知っていて、ずっと逃げて来た。
それは決して裏切らず、始めからないものは失わない。
だから僕は、一人でいいと――……




