プロローグ
べつに、人並みの青春が送りたかったわけではない。
――送れるかは別として。
誰かに認められたいとか、好かれたいとか、そういうことがしたかったわけではない。
――してもらえるかは別として。
べつに……
……妙に補足がうるさいが。
一つだけだ。
たった一つだけ、昔から知りたかったことがある。
ずっとそれだけのために生きてきて、それ以外はいらなかった。
そのためならどんな犠牲も厭わなかった。
俺の世界には俺しかいなくて、その世界の中では俺が全て。求めたことの責任はすべて俺一人が負うもので、傷つく人間も俺一人。
だからどれだけ失敗をしても、どれだけ間違いを犯しても、べつに構わないと思っていた。
――けれど気づいた。
俺がそれを求め続ける限り、俺以外の誰かを傷つけてしまう。
俺が求めたことで、誰かの未来を奪ってしまっていた。
俺が払った犠牲の中に、知らない誰かの涙があった。
世はわが身がすべてというけれど、それでも俺は人でいたい。
だから人を傷つけ、不幸にしてまでたどり着いたその先にもし、俺の求めるものがあったとして。俺はそれを認めるわけにはいかない。
これが望み求めた答えだと、認めるわけにはいかない。
だから誓った。
正しくあろうと。
俺はもう二度と、己を問わない。本物を探さない。
――俺はもう、何も求めない――
何でも出来るくせに変なところで不器用で、不憫な主人公が書きたくて書きました。
楽しんでいただけると嬉しいです。