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引越しの手伝い

 土曜日の朝に俺は電車に乗って東京の東部へ。事前に水瀬さんに住所は聞いてたのでその近くにあるレンタカー屋で予約をしておいた。そこで免許証などを見せてお金を払ってボックスカーを借りることができた。

 3列の8人乗りのようなワゴン車ではなく、4人乗りのボックスタイプ。色は空色しかなかったのでそれにした。今日乗るのは4人なのでちょうどいい。

 それに乗ってまずは近くの駅へ。時間より少し前だったけど彼女はもうそこにいた。今日はもう6月だからジメジメしていることもあって薄手の明るい色味をした服を着た霜月さんだ。外だから天海さんと呼ぼうかとも思ったけど、すぐ入ってくれればいつも通り霜月さんで良いか。

 運転席から手を上げると、霜月さんも気付いて助手席に乗ってくれる。


「おはよう、リリくん。運転お願いしちゃってごめんね。わたしも全然運転には自信なくて……」


「おはようございます、霜月さん。俺もあんまり自信はないですけど、高速に乗るわけでもないんですから大丈夫ですよ」


 霜月さんがシートベルトを着けたのを確認して車を走らせる。住所は事前にカーナビに登録しておいたのでそのナビに従って移動する。

 空気は、正直重い。水瀬さんの引越しということは彼女が一人暮らしをするということ。良い母親ではないと知っていて、とどのつまりこの引越しは逃げだ。

 そもそもVtuberだって彼女からすればバイトではなくお金を稼ぐ手段として選んだフシがある。声優が好きで、ゲームもやってみたくて、歌を歌うのが好きで。ある意味天職ではあるけど、それを学生ながら選ぶというのがなんというか。


「……わたしは、学校生活は酷かったけど親はとても優しかったから。陽菜(はるな)ちゃんがどれだけ苦しんでたかって、多分想像しかできない。学校は良くても、帰るべき家が帰りたくない場所だったなんて……」


「それを言ったら俺なんて家族にも環境にも恵まれていましたよ。だから下手に慰めなんて言ったら逆効果でしょうね。なので俺たちはただ甘やかせば良いと思います」


「うん……。そうだね」


 駅からほど近く、団地と呼ぶような建物の近くの駐車場に入る。そこには既に待っていたのか水瀬さんと社長がいた。2人とも大きなキャリーケースを運んできた。

 俺たちも降りて車の後ろにキャリーケースを運ぶのを手伝う。


「社長、これだけですか?」


「ああ。リリ君、ありがとう。この黒いのがパソコンとかの機材系、赤い方が彼女の日用品だ。ケースがしっかりしてるから多分大丈夫だと思う。……怖っ。なんで2つでピッタリ収まるんだよ……!」


 まるで見透かしたかのように2つのキャリーケースがピッタリと収まった。これを見越していたのならキャリーケースを用意した社長が凄いんだけど、そういえば借りる車のトランクのサイズなんて社長に伝えていたっけ?

 それとも社長ともなるとコンパクトカーのおおよそのトランクの大きさを把握しているんだろうか。様子を見るに多分違うんだろうけど。


「このキャリーケース、社長が用意したんですよね?偶然ですか?」


「……リリ君なら良いか。この2つ、難波(なにわ)君と那須(なす)さんからの贈り物なんだよ。『スパチャは実家に止められたので宗方君と住吉君がお世話になっている分のプレゼント』って。しかも『水瀬さんの引越しに使うと良いよ』ってメッセージカードに書いてあった」


「ええ?あの2人がなんで……。実家が太いでしょうからこれくらいの用意はできるでしょうけど、水瀬さんの引越しなんて誰にも伝えてないはずなのに……」


「リリ君は付き合いが浅いようだから今のうちに忠告をしておこう。彼らを普通の高校生だと思わない方がいい。彼らは星見、未来が視えるんだ」


「うわあ。オカルトですね。でもあの2人ならそんなことができてもおかしくはないって納得できるのがなんとも」


 俺や宗方先輩と社長も合わせて共通の知り合いである陰陽大家の後継である難波(あきら)君とその婚約者の那須珠希(たまき)ちゃんは除霊とかをしてくれるオカルト関係の人だ。その2人が未来を視れると言われて、不思議と納得していた。

 というか、納得しないとこんなキャリーケースを用意することと水瀬さんの引越しなんて予見できないだろう。


 キャリーケースを入れた後、まずは水瀬さんの新居へ。保護責任者が社長になるので事務所が近い小岩へ。そこなら社長やスタッフさんが確認に行きやすいとのこと。学校にも電車で通いやすい場所のようで、部屋は既に昨日から入れるようだ。

 家具付きの、セキュリティがしっかりとしている部屋のようでエレベーターで荷物を運ぶ。社長に部屋を開けてもらって、パソコンなどの設置をするともう社長は帰るようだ。


「陽菜ちゃん。何か困ったらすぐに俺でもマネージャーでも良いから言うこと。あと、必ず日曜日の朝には部屋を確認しにくるからきちんと掃除をすること。引越したことは今後も絶対に言わないこと。いい?」


「はーい、社長。困ったら社長にも住吉君と真紀ちゃんに頼るから大丈夫!後見人になってくれて、ありがとうございます」


 水瀬さんがぺこりとお礼を言う。

 最初のうちの一人暮らしは大変だろうけど、いざとなれば俺たちがアドバイスをすればいいんだし、頻繁に様子を見に行くことにすればいいだろう。


「宗方の奴も陽菜ちゃんみたいに自立してくれればいいんだけどなあ。あいつ、俺の部屋の隣にいて、家事とかも俺が言わないとやらないからなあ」


「宗方先輩も一人暮らし?あの人もあたしと同い年ですよね?」


「あいつも俺が後見人をやってる。まあ、現代社会に馴染めてないからしゃーないんだが……。高校は通信教育なんだからどうにかならんかねえ?」


 宗方先輩も一人暮らしをしている高校生とは聞いていたものの、家事能力は全然なさそうだ。

 まだ30になったばかりだというのに2人も後見人を務めるなんて社長も大変だよな。起業して大当たりをしている人ではあるわけだけど、成功した分の負担も同等以上に背負いこんでいる気がする。

 宗方先輩はコラボくらいしかできないだろうけど、水瀬さんなら手助けをする覚悟ができている。社長にかかる負担を分散するから許してほしい。


「じゃあ住吉君、天海さん。あとはよろしく」


「事務所まで送っていかなくて大丈夫ですか?」


「駅も近いし、この後も用事が入っててな……。あ、住吉君。今日のレンタカー代と駐車場代は経費で落としていいから。陽菜ちゃんは無駄遣いしないように。じゃあな」


「一緒に下まで行きますよ」


 下へ降りて社長は駅へ、俺たちは車へ。近い家電量販店を調べてもらい、そこへ買い物に。正直ナビを見る余裕はなかったので霜月さんに指示をしてもらいながらなんとか家電量販店の駐車場に停めることができた。

 あんまり曲がらずに白線内に駐車できたことに安堵の溜息を吐くと、後ろの席にいた水瀬さんに拍手をされる。


「住吉君運転うまーい!」


「いやいや、冷や汗ものだよ。ペーパードライバーだし、立体駐車場とか初めてだから……。地元で父さんの車を運転してたくらいだし、交通量が全然違うから配信以上に緊張した……」


「お疲れ様、住吉くん。わたしなんて本当に免許を取っただけだからペーパーどころの話じゃなくて……」


 水瀬さんは褒めてくれるけど、多分そこまで上手くはなかったはずだ。急ブレーキとかはしてないけど、ノロノロ運転だったわけで。

 気を取り直して買い物へ。買うのは炊飯器にトースターとかの調理系から、ドライヤーに掃除機などの家事に使う物に、健康のために必要な加湿器など。備え付けの家具として冷蔵庫や洗濯機などは付いているものの、必要な物は多い。

 大きなカートを押しながら目当ての物を探していく。探すのは女性同士の方が良いだろうと考えて俺は基本カート係だ。

 一応水瀬さんのための買い物なんだけど、霜月さんも久しぶりの家電量販店だったのか色々と物色していた。


「うわあ。炊き方が20種類もある炊飯器だって。メニューが細分化されてるけど絶対に使わないなあ。陽菜ちゃん、これは高いし、タイマー機能だけのシンプルな物を買おう」


「うん。絶対にそんなに拘らないもん。ご飯と炊き込みご飯と、お酢のご飯以外で使い方を分ける必要ある?」


「玄米とかお赤飯、それにお米の種別でモードが違うみたい。あとはパンも焼けるって」


「パンを炊飯器でぇ?真紀ちゃん、ギャグ漫画だってもっとまともなことを言うよ?」


「実際にある機能だし、料理漫画でもそういう描写あったよ⁉︎ねえ、住吉くん!昔の漫画でそういう描写あったよね⁉︎」


 ごめんなさい、霜月さん。俺はその漫画読んでない……。だから視線を横に外す。

 いや、最近の炊飯器が凄い機能がたくさんあって、パンを焼ける機能が付いてるのもあるって知ってるけど。多分ジェネレーションギャップじゃないかと思う。有名な漫画は幼少期ならそれなりに読んでた気がするんだけどなあ。

 4歳差って読んでる漫画にそこまで差があるだろうか。少女漫画を読んでこなかったって言ってたから読んでるとしたら少年漫画のはず。漫画も種類が多いから純粋に俺が読んでない有名な漫画だっただけかもしれないけど。

 俺が目を逸らしたことにショックを受けたのか、霜月さんの叫びは止まらない。


「う、嘘……⁉︎陽菜ちゃんならともかく、わたしと住吉くんでジェネレーションギャップが起こるの……⁉︎」


「いや、あの。たまたま俺が読んでない漫画だった可能性もありますから」


「アニメ化もした有名な料理漫画だよ?」


「昔はそれこそ国民的アニメと日曜朝のやつくらいしか見てないので……。俺って戦隊モノとか『破面ライダー』とか好きな子供だったので『少年アッパー』くらいしか週刊誌は読んでませんよ?」


「ああ、他紙だ……。ジェネレーションギャップじゃなくて良かったぁ」


 どうやら水瀬さんの心を救えたらしい。

 ジェネレーションギャップは恐ろしいって俳優の先輩方にも散々言われたなあ。知ってる『ズァーク』を答えたら慄かれた。で、布教されて初代のシリーズを見た覚えがある。

 正直5歳離れてると結構流行り物は違うと思う。小学校と中学校で流行っている物は違うだろうし、性差もあるだろう。正直同い年の女子が熱中していたものなんて俺はよく知らないし。

 水瀬さんなんて全然わかっていなかった。聞いたところ俺が小学校の頃に連載が終了している漫画だった。他紙だし知ってるわけがない。


 買い物を続けて、どんどん籠に物が積まれていく。同じ型番の物でも水瀬さんはピンク色の物を好んで選んでいた。ピンクがない物は白い物を選び、色々と買ってしまったため籠が1つでは足りずカートの下にも籠を載せていく。

 男子厳禁と言われて女性に必須な物を買いに行っている間、俺は店内にあるベンチに座って待っていた。

 この間に難波君にメッセージを送る。


『キャリーケースありがとう。未来が視えたって本当?』


『本当だよ。その証拠に、君のオリンピックの席番号を書こうか?外野席F-328だろう?』


「うわあ、当たってる……。黒塗りにした画像しか配信に挙げてないから何らかのオカルトで当てたんだろうけど……。難波君の家のお守り、本当に効果がありそうだな。2人の分ももらっておくか?」


 俺しか知らないはずのチケットの席番号をピッタリと当てた難波君に驚きながらも、そんなオカルト能力を持っているのなら彼らの扱うお守りは本物かもしれないと思って注文をする。


『難波君のお守り、2人分もらっていい?』


『良いよ。ウチのお守りって狐関連だけど良い?』


 狐?ああ、彼らの先祖の安倍晴明って確か母親が葛の葉という名前の狐だったって伝承があるんだっけか。

 水瀬さんなんて狐のアバターだし、その水瀬さんのアバターを可愛いと褒めてた霜月さんだから問題ないだろう。


『大丈夫。お願い』


『OK。事務所に送っておくから確認しておいて。料金は社長に言って住吉君の給料から天引きしてもらうから』


『わかった。ありがとう』


 これでよし。

 社長にも一報を送っておこう。多分難波君は社長個人宛に送るんだろうし。

 2人の買い物も終わったのでひとまずレジへ。買った物をレンタカーのトランクに入れたあと、良い時間になったのでお昼ご飯へ歩いて向かう。

 以前水瀬さんが食べたがってたインドカレーだ。

 インドカレーと言いつつ、作っているのはほとんどがインド人じゃなくその周辺の国の人なのだとか。まあ、町中華を日本人が経営しているのとあまり変わらないだろう。


 単品メニューもあるけど、ランチではセットメニューが基本のようだ。カレーを1つか2つ選んで、その上でライスかナンを選択するらしい。どっちも選べるセットもあった。あとは飲み物をつけたければ、という感じ。

 カレーも10種類くらいあって、辛さもそれぞれ選べるようだ。俺もインドカレーなんて久しぶりすぎてこんな感じだったなと昔の記憶を掘り起こしていた。


「え〜。迷う〜。ナンは食べるとして、ナンもいっぱい種類あるんだ。あ、ラッシーってなに?」


「ヨーグルトの飲み物みたいな……。結構甘いよ。カレーが辛いかもしれないから頼む?」


「美味しそう!頼む!カレーはチキンにして、ナンはどうしよう……。ガーリック、はなしとして、チーズもバターも気になる……!あ、ハニーチーズ⁉︎そんな魅力的な物が……⁉︎」


「お代わりのナンはプレーンな奴だけみたいだから最初に味付きのナンにして、少しずつ分けて食べようよ。最後に全員でプレーンナンを分ければ良いんじゃないかな?」


「住吉君、それ採用!」


 霜月さんも苦手なものがなかったので、俺がポテトナン、霜月さんがバター、水瀬さんがハニーチーズを選択。カレーは俺がマトン、霜月さんがグリーンカレー、水瀬さんがチキン。飲み物は俺がチャイ、霜月さんがマンゴーラッシー、水瀬さんが普通のラッシー。

 飲み物込みで1000円ちょっと。これにお代わりのナンが200円。3人で3000円ちょっとなのはかなり安いだろう。

 料理が来る間に昨日の配信でコラボをした後輩について話す。


「チェリーちゃんは話題を選んでくれれば問題なさそう?但馬ちゃんはあたしたちとコラボすると舞い上がっちゃうかもね〜。ずっとFORの好きなところ語ってて面白かったよ」


「ああ、別れて作業してた時そんな感じだったんだ……。チェリーさんは彼女の好きそうな話題を出さなければ大丈夫そうだったかな。配信も見てたけど、そういう話題を出してない時の雑談は普通だったし」


「今度吹上先輩のコイバナコラボに呼ばれてるけど、2人の好きな話題を出して先輩が困惑しそう……。確か但馬さんって吹上先輩もターゲットにしちゃったから……」


 ああ、昨日のゴートン先輩のクイズ屋敷で幼馴染属性を知って唸ってたっけ。吹上先輩が毎回女性ライバーがデビューするたびに行ってるコイバナコラボで暴走しなければ良いけど。

 炎上しないくらいに自分でセーブが利けば良いんだけど。ただ但馬さんは暴発気味だ。対象が2人揃っていなければ大丈夫だろうか。

 吹上先輩はカップルとして見られたり、ピンク色で見られることに抵抗があるかどうか。あの人本当に育ちの良いお嬢様だから微妙そうだ。


「まあでも、2人ともゲームは上手そう。チェリーちゃんはレーシングゲームで暴走してたし、但馬ちゃんはなんか難しい死にゲー?やってたよ」


「ああ、『アンデッドソウル』やってたね。あの会社のゲーム難しすぎてわたしは手を出せないなあ。住吉くんもあの手の難しいゲームやったことある?」


「いえ、ないです。気になるゲームもあるんですけど、絶対長時間配信になるのと、大型企画がそろそろ始まるのでそちらに集中したいです」


「新しいFPSのβテスターだっけ?パパ頑張ってね」


「他のゲームで練習はしてるんだけど、正直使用感が違うだろうから短い時間で慣れないといけないんだよね。確か明日公式生配信があってチームメンバーとか発表で、来週中にはβ版が配布されて練習開始かな」


 エクリプスには数々のFPSで世界上位ランカーのハピハピ先輩がいるので宣伝塔になる。その関係で案件を貰ったようで、畏れ多いことに俺もチームメンバーに選ばれた。

 ハピハピ先輩以外には彼女の同期のKP7先輩とユークリム先輩。あとは2期前半組のポラリス先輩とジョン先輩だ。6人で1チームになるコンセプトらしくて、今までにない大人数で相手チームとの一騎討ちというシステムは初めてらしい。

 そのゲームを本配信する前にβ版として数多くの有名FPSプレイヤーにプレイしてもらい、そこで問題点を確認してもらいつつ本配信用に調整するようだ。その広告として使われたのがエクリプス、というよりハピハピ先輩。


 あの人FPS界隈ではかなり有名なようで、デビューして1年経っていないのに登録者が20万人を超えているらしい。そのハピハピ先輩より早く10万人を突破したのが水瀬さんだ。ネムリア先輩といい、エクリプスって才能の宝庫だよな。

 話している間にカレーが来た。予想しているよりもナンが大きくて、それこそカレーライスをよそえるくらいの大きさの皿と同じくらいナンが大きい。ちぎってみると熱くてふわもちで、これぞ本場のナンって感じだ。

 サラダの小鉢と、タンドリーチキンもついている。結構ボリューミーの割に値段が安いからこそ席が埋まるほどの人気店なのだろう。


 カレーも日本のカレーの辛口くらい辛かった。全員中辛にしていたけど、やっぱりインドの辛さは日本人より上だ。辛口だったらどれだけ辛いんだろうか。中辛ならまだ美味しいと思えるけど、辛口だったら多分大汗をかいていた。

 目の前の水瀬さんは予想以上に辛かったのか、顔を赤くしていた。


「辛い〜……。聞いてはいたけど、インドカレーってこんなに辛いんだ……。それともチキンだけ?」


「色味が違うから物によったら辛さが違うかもしれないけど……。こっちも食べてみる?」


 俺のマトンと霜月さんのグリーンカレーも食べるが、俺のマトンはあまり辛さが変わらず、グリーンカレーはマシだったらしい。ラッシーを飲みながら、ナンも変えながら食べていってやはりグリーンカレーが一番食べやすいようだ。


「陽菜ちゃん、わたしのと交換する?」


「ううん、こっちで食べる。ラッシーがなかったらダメだったかも……」


「ラッシーお代わりする?水はむしろ辛さが増すから飲むならラッシーの方が良いと思うけど」


「飲み終わったらする……」


 全員のものを少しずつ貰うけど、ハニーチーズはかなり甘かった。これで食べて辛いと思うってことは水瀬さんはあまり辛い物が得意じゃなさそうだ。

 最初のナンを全員が食べ終わる前にプレーンナンのお代わりを頼む。焼きたてのナンがすぐに出て来るのは嬉しい。ナンなんてインドカレーを食べに来ないと食べられないものだし。


 食事が終わったらホームセンターへ。食器やフライパンなどの調理器具。ゴミ袋やゴミ箱、それにシャンプーなどの日用品を買わなければいけない。備え付けのベッドもあったけど、毛布や枕もないから買う物がたくさんだ。

 引越しの最初って本当にお金が飛ぶ。それに車があって本当に良かった。車がなかったら大きい荷物を持ちながら何往復もしないといけないんだから。車のおかげで1回で買い物は済みそうだ。


「食器、3つも買うの?」


「うん!だって2人が来るなら必要でしょ?いつでも来て良いからね」


 これは来て欲しいというサインだろう。こういうのを見逃しちゃダメだ。

 霜月さんと目を合わせて、頷きながらどのデザインがいいか考えながら選んでいった。これじゃあ水瀬さんの言うように、本当に家族みたいじゃないか。


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