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あといくつの敵を潰せば、世界は平和になるのか?【SoF】#11

タイトルナンバーが飛んでいますが、間は意図的に飛ばしていますので数字は正常です。

 色々なこともあったが、そろそろ普段通りの配信ペースに戻ろうと朝と夜の配信をしようと配分を決めていた。コラボがあるものの、収録などの予定ももうできているために今週は休みの日を除いて1日2回配信ができそうだった。

 このまま【SoF】を進めていこうと思っている次第だ。公式からの追加情報もあれば、SNSでのネタバレなども出始めている。こっちがネタバレを避けようとしても、SNS側が自動で拾い上げたり、それこそ愉快犯のような人もいる。

 まだ致命的なネタバレは受けていないために、このまま一気に駆け抜けたいところだった。


 フォイルが聖女になって、アルビオンが急速な老化により騎士団長になりつつもお爺ちゃんになっていたところから、仲間が2人増えて4人というフルパーティーを組めるようになっていた。

 まず純人間で女性のサフィラ。彼女は近衛騎士まで出世したクーデター以降に騎士になった人物だ。そのため前時代の悪習に囚われておらず、フォイルも信用している。過去にフォイルが聖女見習いの時に助け出した少女であり、そのことから騎士を志したようだ。

 ただ、両親や親しい隣人のほとんどを失っており、早々に騎士学校に入り込まなければ生きていけなかった少女だ。現在18歳と最年少近衛隊のようだ。


 もう1人がゴーレムから人間の形態に変わったドムニス。正教は基本的に人間へ異形へと変貌するギフトを与えていたが、別アプローチとして逆に魔物を人間にすれば心の獲得や器としての適合率の調査の一環として実験されていた被験体の生き残りだ。

 正教は様々なアプローチで神の器を作っていたようで、下部組織のようなものが世界中にあった。それを潰して回ったという過去回想が挟まり、今もいくつも組織を潰している。

 クーデターをしたからか、神の器を作る側が正統派や主流派を名乗り、聖女候補となる女性を探して世界中で誘拐が起きている。それは過去から変わらないのだが、思うようなギフトではなかったら実験に使われるという胸糞悪い循環が起きていた。


 そこを潰すたびにフォイルの正当性が世間的には評価されるのだが、それでも主流派の勢いは落ちない。狂信者のように神の器を求め、神の言葉を聞くために聖女候補を獲得しようとする。何千年も続く悪習を捨て去ることができないようで、残念ながらお互いの衝突は何度もあった。

 フォイルの暗殺未遂も何度かあり、まさしく世界全土での戦争状態だった。国は1つしかないのに、神のために起こる宗教戦争。

 馬鹿馬鹿しいと思いながらも対処していたフォイルの気苦労は、消えはしなかった。

 そんなフォイルは今、真っ白で何もない空間に1人でいた。


【……またここ。ということは、また意識だけ拉致されたのね?邪神様?】


【邪神とは聞こえの悪い。私は正真正銘、この世界の唯一神ぞ?】


【自身の身体のために何千年と人間を犠牲にして、それが邪神ではなくてなんだと?】


【対価にギフトをやっているだろう?あれがなければ、魔物に対処もできない脆弱な生き物が何を宣う】


【その魔物だってギフトで変質した人間やただの獣だったでしょうに。あなたが今の騒乱を作っているという自覚もないの?魂だけの存在になっているから脳がきちんと機能していないのね。可哀想な塵芥。こんなゴミのために全てを捧げてきた、犠牲になった人はそれ以上に可哀想だけど】


 神との交信。正教的には聖女たらしめる奇跡なのだが、フォイルはこの魂だけ拉致されて嫌いな存在と話すということを心底嫌っていた。

 ちなみにこれはストーリー的に、2回目の交信だった。正式に聖女になってから何度もこうやって拉致られているようだ。


【そもそも、わたしはあなたの定義する聖女ではないでしょう?もし洗脳しようとしているのなら無駄よ。あなたの思考にもやり方にも、何一つ賛同できない。あなたの肉体なんて絶対に用意しないわ。できるならここでその魂を消し去りたいけど……。臆病者なあなたは絶対にわたしの前に姿を現さないものね】


【惜しいな。君なら間違いなく最上の器になるのだが。私が君臨すれば君の嫌いな聖女という役柄を放棄できるぞ?さしもの私も、聖女だからと嫌われている女性を伴侶にしようとは思わない】


【……心底気持ち悪いわね。あなたの望む世界にしたら、またわたしの家族のように犠牲になる子が産まれる。あなたの悪影響が大きすぎるのよ】


【それは因果が逆だぞ?私の器さえできてしまえば、無理に肉体を作り上げる必要もなくなる。そうすれば子供の犠牲もなくなるだろう。私が地上に降りることこそ、全ての救済になる】


【この数千年に亘る正教の腐敗っぷりを見て、どうしたらその言葉が信じられると思うの?あなたの言葉は、思想の行き着く先は。決して救済ではないわ】


 徹底的に唯一神を否定するフォイル。

 それもそうだろう。この世界の歪みを作っているのは間違いなく神だ。この神がギフトと正教を作ったことで全てが狂い始めて、フォイルやアルビオンのような犠牲者が出た。

 その犠牲者に神だからと協力を促しても、断られるだけだろう。

 取り付く島がないとわかったのか、神は観念してフォイルを現実世界に戻す。様々なギフトを取得したフォイルを洗脳するようなことはできないようで、フォイルは自身の部屋のベッドへ戻されていた。

 今までの聖女には神託という名前の洗脳を実施していたらしい。やっぱり神ってクソでは?

 うなされていたようで、ドライグことアルビオンに起こされる。この世界の元凶に眠りを邪魔されるとは、とてつもなく嫌な気分だろう。


【大丈夫か?フォイル】


【……大丈夫よ、アル。確か今日の予定は空いていたわよね?グランベルに行くわ。お爺様たちに会っておきたい】


【そうだな。今日なら余裕がある。最近は公務に残党狩りで忙しかったんだ。それくらい許されるだろう】


【じゃあお忍びの格好でね。あとの2人も呼んでおいて】


【ああ。準備してくる】


 久しぶりにグランベルに行くことになる。フォイルが冒険者だった頃のホームタウンだ。大人時代になってからファストトラベルで行けなくなっていたから、実はこの時代で行くのは初めてだ。

 自由行動ができる時、フォイルは聖女の姿をせずにそこら辺にいる冒険者の格好をしている。動きやすいベストにズボン、それにマントを羽織って顔を曝け出している。いつもは顔をヴェールで覆っているため、実は顔を知られていない。

 新しい正教の中で素顔でNPCに話しかけると聖女扱いはされず、冒険者扱いを受ける。逆にパーティーの3人の顔は知られ渡っているので兜を被ったり、ターバンとマスクで顔を隠しているために正体がバレていない。


 今日も謎の冒険者グループで行動をするようだ。

 ちなみに、こんな感じで衣装はかなりあって着せ替えも楽しめる。うさ耳パーカーのようなふざけた格好もできるのだが、イベントムービーの時には通常の衣装に戻る。シリアスな場面でふざけるのは無理ってわけだ。

 ハードモードは幼年期と青年期があるためか、実は幼年期の姿になることもできる。パーティーの半分を5歳児にできてしまうことから、ずっと幼少期の姿でプレイしている人もいるとか。


 戦闘も選択した衣装のままなので、奥義などは幼少期のものも使える。性能に差はないためにどっちを使ってもいい。フォイルは幼少期だと槍など大きな武器では移動速度が遅くなったりしたが、青年期で幼少期の姿を使うと俊敏に動いてくれる。そういう差も楽しめたりするわけだ。

 俺は基本的には姿を変えないままプレイしている。かっこいい衣装とかあったら着せるけど、基本は通常衣装のままだ。

 グランベルへのファストトラベルが解放されて、早速ひとっ飛び。


「おおー、あんまり変わってないかな?ギルド長とか元気にしてるといいけど。ドリーとは会っていても、20年前のキャラってあんまり会えてないんですよね。味方だとランダくらい?」


『ランダとドリー以外のネームドキャラってほとんど死んでね?』

『死んだというか、裏切ったというか、殺したというか……』

『冒険者のネームドはほぼいなかったし、今だとあんまり関われないからしゃーなし』


 聖女になってしまったからか、過去のキャラとはストーリー上であまり会えていない。元正教の裏切り者たちはボスになったので切り刻むために会ったが、それくらい。

 昔とあまり変わらない冒険砦に感動しつつ、シナリオを進めるための黄色いマーカーは無視してまずは街を巡る。目的地がギルドじゃないってことはバルドフは引退したんだな。

 ここでもやはり聖女扱いされなかった。だが偽名のフォーと呼ばれて親しく話しかけられたり、それこそフォイルを知っている住民も残っていて、普通にフォイルと呼ばれることもあった。


 20年って長いけど、逆に言えば全員死んでしまうほどの長い時間ではない。そう考えたらフォイルのことを知っている人も多く残っているだろう。

 冒険者でも古参の生き残りが冒険者復帰か?と揶揄ってきた。そうできたら良いけどと答えるフォイルは悲しげだ。聖女なんてやりたくてやってるわけではないのだから、それもそうか。

 一通り巡ったので、目的の家に向かう。多分バルドフの家なんだろう。

 イベントムービーが始まり、ノックもなく家に入るとフォイルに突撃してくる小さな女の子がいた。その子のことをお腹で受け止めるフォイル。


【ママー!おかえり!】


【ただいま、レミア。大きくなったわね】


「ま、ママ⁉︎実子⁉︎フォイルの子⁉︎」


『え?マジ?10歳くらい?』

『子供いたの⁉︎』

『あ、あー!ノーマルモードでレミアのことなんでか見覚えあったけど、フォイルの子どもなのか‼︎』

『紫の目って、アルビオンの元の色だっけ?髪の色が金なのもアルビオンの色では?』

『ああ、そっか。フォイルもアルビオンも白髪だからどういうことって思ったら、アルビオンってギフトで髪と瞳の色変色してるんだっけ?』

『つまり、それが答えってことですよね?』


 レミアと呼ばれた少女は全体的なパーツはフォイルの幼い時にそっくりだが、髪や瞳は幼い時のアルビオンにそっくり。

 つまり、そういうことか。フォイルもアルビオンも良い歳だから子供がいても……。嫌でも、それにしたって10歳の子は大きくないかな?


【パパもおかえり!サフィラちゃんといいいも!】


【ただいま、レミア。よっと。まだまだ軽いなぁ】


【あなたが力持ちなだけですよ。ドライグ団長】


【その通り。団長は馬鹿力。オレよりも】


【ふむ。2人はこの休暇、レミアと接触禁止にするか?】


【私からお嬢様を取り上げると⁉︎お嬢様もサフィラと遊びたいですよね⁉︎】


【ここまで来て姫と遊ばせないとは……!この鬼!悪魔!龍!】


【ドムニスはそれが悪口だと思っているのか?……レミアが悲しむから、普通に遊べよ】


 なんというか、和気藹々としている。正直全員の境遇は悲惨なもので、そんな彼らが笑い合える場というのはあまりない。教会では職場であり、フォイルがふざけるわけにもいかないので厳粛な空気のまま。

 仲間の3人も近衛隊ということもあって、騎士の手本でなければならない。そういう事情もあって家族団欒という温もりを見られるのは貴重だ。

 そんな彼らに近付く、2人の影。


【おう、帰ったかフォイル】


【お帰りなさい。皆さんも】


【ただいま、お爺様、お母様】


【お前なぁ。何で俺はお爺様で、カミさんはお母様なんだよ?】


【だってギルド長はギルド長だし、女将は女将だし?ねー、レミア】


【そうそう!お爺ちゃんとお母ちゃん!街の皆も言ってるよ?】


【歳は取りたくねえなぁ……】


 ギルド長だったバルドフと奥さんの女将だ。20年経ってるから相応に老けている。とはいえまだまだ元気で、フォイルが子供を預ける相手となったらこの2人しかいないだろう。

 まさか教会で聖女の子を育てるわけにもいかないだろうし。

 そんな家族団欒を過ごしていると、ドアを叩く音が聞こえる。レミアが返事をすると入ってきた人物に驚いてしまった。


【レミアちゃん、頼まれてた『弟切草』を持ってきたよ】


「ノーマルモードの主人公⁉︎」


『マルス君やんけ⁉︎』

『いやまあ、冒険者だからここがホームタウンだし居てもおかしくないけど』

『あっ(察し)。この場面かぁ』

『フォイルたちのお忍びの格好見て、順番にプレイしてたら気付くよねぇ』


 え、マルスとも関わるの?ということはノーマルモードでレミアって結構重要なキャラだったりするんだろうか。弟切草って回復薬の素材だ。それを採ってくるクエストでもあったんだろうか。

 部外者が現れたことで空気が一瞬止まる。その様子をマルスのパーティーメンバーらしき人たちが呆れていた。


【あれ、ランダ兄さん?どうしたの、こんなところで。クエスト?それともバルドフお爺様に用事?】


【フォーか。久しぶりじゃの。なに、ちょっと面白い原石に出会っての。年長者として見守ってる】


【えー?Sランク冒険者のランダ兄さんともあろうものが、こんな若い子のお守り?確かに才能はありそうだけど……】


「え、ランダってノーマルだとパーティーに入るの?僕が育てたんですけどぉ⁉︎しかもSランクって何⁉︎」


『20年前にはなかったけど、ノーマルではあったぞ』

『というかSランクが目標だし』

『ランダが奪われたみたいになってるじゃん』


 なんか見覚えのあるドワーフがいるなと思ったら本当にランダだった。あのヴァルモニア解放戦だけのゲストキャラは勿体無いと思っていたら、ノーマルで仲間になるからこそのパーティー入りだったんだろう。

 元から老けて見えたからか、ぶっちゃけ装備とか見た目とか変わってないし。流用ってやつだ。


【ママ、マルスお兄ちゃんってグランベルでも将来ゆーぼーされてる凄い冒険者なんだよ?クエスト達成率も良いんだって】


【ふーん?まあ、強い冒険者が産まれることは良いことか。がんばってね、冒険者クン。これ娘のために採ってきてくれたの?優しいのね。クエストなら報酬を渡さないと】


【報酬は私が渡すから、ママは払わなくていいの!】


【あら、そう?ちゃんとお小遣い足りてる?無駄遣いしてない?】


【しとらんよ。今回のクエストも適正じゃ。それは儂が断言する】


【お爺様が言うならそうなのね】


 フォイルはそれで納得し、レミアが弟切草を受け取って、報酬のお金を渡す。

 それで用事は終わりだろうと思っていたが、マルスのパーティーは家の前から動かない。そのことを訝しんだフォイルが声をかける。


【何か?】


【あ、いえ。皆さんも冒険者?なんですか?レミアちゃんの親って初めて聞いて】


【そんなところ。世界中行ったり来たりしてるからお爺様たちにレミアを預けてるの。ここの冒険者は一番信用できるから、もしもなんてないでしょうし】


【それは、ここが英雄フォイル発祥の地だから?】


【英雄フォイルねぇ。あなた、フォイルに憧れてるクチ?】


【え、はい。誰にも破られたことのないAランク到達最年少。当時はAが最高ランクだったために、そのまま冒険者を続けていたらSランクは確実だっただろうと言われる、ヴァルモニア解放の英雄。憧れない冒険者は居ませんよ】


【憧れない冒険者なんてこの街にたくさんいるじゃない。そもそもフォイルは冒険者を見限って騎士になって、早々に死んだバカな子供よ。冒険者としての誇りなんて捨てて、自分の信念しか考えないで消えた子供。それがフォイル。憧れる冒険者じゃないわ】


 えー、自分のことそう言っちゃうんだ。というか公的にはフォイルってそういう形で死んだことになってるの?

 9歳でAランクになって、騎士になって戦死したって、それはそれで伝説のような。

 フォイルに憧れる冒険者や子供がいてもおかしくはないだろう。

 それにこの街の冒険者がフォイルに憧れないのは冒険者を辞めさせられたことを知っているからだろう。むしろこの街の冒険者はフォイルの代わりにと冒険者稼業を頑張っていた。

 これは冒険者を続けられないフォイルの、嫌味なんだろうか。


【おうおう。オレの恩人に随分な言い草じゃねーか?フォーよ】


【別に真実でしょ、ランダ兄さん。あの子が冒険者になった理由、知ってるでしょ?利己的も利己的。自分の感情を発散したいがために冒険者になっただけ。本当の冒険者はこの街の皆やあなたのような高潔な人のことを言うのよ】


【じゃあ、自分は高潔ではないと?お前さんらがこの20年で潰した違法組織、幾つあると思っとる?世界の守護者が謙遜するのは、1冒険者として気持ちいいものではないな。お前さんと共闘したことが誇りのオレからしてもな】


【……】


「いやあ、いくら悪ぶっても理解してくれるランダ、好き。ノーマルだと仲間にできるんでしょ?これはやる気増しますね」


 これまで冒険者としては活動していないと、フォイルが直々に独白していた。だからランダが言っているカテゴリーH周りの話は聖女としての行動の結果だろう。

 ランダは諸々知っているからこそ、フォイルが自虐するのが許せないんだろう。とはいえ、姿を隠す理由も知っているために苦言を呈するだけ。

 ノーマルの主人公であるマルスがこうもフォイルのことを尊敬しているのであれば、ノーマルモードの際にかなりフォイルの名前が出ているんじゃないだろうか。そういう他のモードでの発見とかもやっていたら面白いんだろう。


 そうなるとやっぱりイージーモードから進めるべきだったか。それともこうやってフォイルのことを知って他のモードをやると、フォイルの話がそこら中に転がっているんだろうか。イージーは聖女で、ノーマルは過去の凄腕冒険者。

 多分そういう発見がいくつもあるんだろうな。


【……ホント、ランダ兄さんには敵わないわ。それを引き合いに出されると何も言い返せないわね。皆さん、娘の依頼ありがとうございました。何かありましたらわたしにも恩返しさせてください。次いつ会えるか、わかりませんけどね】


【なら今返してもらおうか。1対1でマルスと戦ってくれ】


【はい?それがお礼?わたしでいいの?アルじゃなくて?】


【アルよりもフォーと戦った方が良いだろ。どうだ?】


【まあ、恩を残しておいたママだとアレだからそれで良いなら良いけど……】


【全力でぶつかれ、マルス。彼女はフォイルにも劣らぬ歴戦の冒険者だ。良い経験になる】


【もしかしてSランクですか……?】


【残念。Aランクよ】


 なんか戦うことになった。ノーマルでもきっとこのイベントがあったんだろうな。

 多分向こうのシナリオ的には謎の先輩冒険者くらいだろうか。それとも正体がバレたりしたんだろうか。

 戦闘になったのだが、マルスは短剣を2本逆手に持った軽戦士スタイルだった。攻撃魔法も使う、才能の塊のようだ。とはいえ、レベル32程度に負けるわけがないんだけど。

 こっちのレベル、もう58だからなぁ。それにギフトもシナリオで貰ったものは全部マスターになっている。今はドリーから貰えるだけのギフトを貰ってそれを育てているところだ。


 アルビオンとドムニスは呪いでギフトを与えられたためにギフトを変更できない。そのためギフトにお金を使えるのはフォイルとサフィラだけで、あとは防具とか消費アイテムにしかお金を使わない。

 しかもサフィラは流石に与えられるギフトは1個だけなので、かなり厳選して良いギフトを手に入れてからはそれしか育てていない。となるとサフィラもお金が掛からない。

 で、サブクエストや依頼をこなしていると普通にお金が溜まっていく。フォイルがパーティー全体にかかるオートリジェネがあるために回復アイテムはあんまり買い足さなくても、拾えるアイテムで事足りる。


 そうなるとお金の使い先はフォイルのギフト取得が最優先だ。フォイルはギフトを持っていれば持っているだけ強くなれる。

 しかもフォイルって戦闘回数をこなしたりとか、攻撃スキルを一定数使うとギフトを取得したりする。とにかく世界のルールから外れている主人公だ。

 イベント戦だったけど、簡単に倒せた。苦戦も特にしなかった。攻撃がわかりやすかったこともあって、あと純粋にフォイルが強すぎて楽勝。

 ボス敵だと苦労するけど、雑魚敵には苦労しなくなった。ソロじゃないってすっごく楽だ。


【ま、まいりました……】


【うん、筋は良いんじゃない?ランダ兄さんによく師事して強くなるといいよ】


【お母さんってこんなに強かったんだー!すごーい!】


【それはそうですよ、お嬢様。フォー様は我々の中で一番強いのですから】


【では団体戦ではどうかな?オレも久しぶりに戦いたくなった】


【えー?もう1戦?わたし今日休暇だからレミアとゆっくりしたいんだけど?】


【堅いこと言うんじゃねえよ、フォー。お前さんも今のギルドの現状を知りたいだろ?】


【ランダ兄さんっていうトップ層は知ってるから十分だと思うけど。これが最後だからね?】


「あ、今度はパーティー戦ですか?」


 ハードモードのパーティーと、ノーマルモードのパーティーで戦うらしい。あちらは6人だが、ランダ以外レベル30前後。ランダだけ55。

 純粋にタンクとして面倒なんだよなと思いつつ、全体のレベル差がありすぎたのでこちらもランダ以外圧勝。ランダには奥義をぶつけて倒した。

 これ、ノーマルモードの時には勝ちたいな。勝てるようなイベント戦にされているんだろうか。

 まだまだ高みは遠いとわかったノーマルモードの面々はこれからもクエストに修行に頑張ると意気込んで、退散していった。この日はレミアとゆっくり過ごして終わり。


 そしてアンジェリカに戻って、アンジェリカに主流派が攻め込んできた。騎士団やギルドの冒険者と協力して戦ったが、カテゴリーHを大量に投入してきたこともあって死傷者をかなり出し、しかも魔物が元々人だった可能性があるということが世間にバレた。

 ギルドや騎士団にはそういう魔物も少数いると伝わっているが、一般人はほぼ知らず、しかも今回のカテゴリーHは50体以上いたことがわかって、全然少数ではないと言うことから混乱が起きて、正教とギルド、そして行政府との会議が行われた。

 一方その頃、という暗転が入り、騎士団は基本的に戦場の処理を担当した。アルビオンとドムニスが騎士団に指示を出して死傷者を運び出していた。騎士団長と近衛隊なのだから陣頭指揮をしなければならなかった。


 サフィラはフォイルの護衛だ。

 そこで問題が起こる。隠れ潜んでいた主流派の人間が人間爆弾という自爆特攻に合わせてアルビオンに呪術をぶつけ、左腕の秘密を暴いた。黒龍に置換されている腕が露出し、更にギフトの老化を進めるという呪術を使った。

 実行犯はドムニスが速攻で気絶させて、取り押さえて屯所にぶち込んだ。だが問題のアルビオンがギフトで暴走し、黒龍としての姿に変貌してしまった。40mは超えそうな巨大なドラゴン。アンジェリカを1体で滅ぼせそうな、古代から伝わる暴虐の化身。

 その姿を、会議中のフォイルでも確認することができた。


【そんな……!】


 フォイルはすぐに会議を脱出してサフィラと一緒に街の外に向かう。彼女はサフィラとの会話で困惑を隠せなかったが、それは俺も同じこと。


「ギフトの暴走⁉︎嫌な予感しかしないんですけど、マジで主流派は何がしたいの⁉︎」


『まーだ神の器を諦めてないんか?』

『というか意志を失ったら器にならなくね?』

『そもそもここでアルビオンを暴れさせた時点で、その後に神様ですって名乗り出ても信用なんてされねえだろ』

『ただの八つ当たりで暴走させた?』

『あ、アルビオン大丈夫なの?』


 超特急で都市の外壁部に辿り着く。そこではドラゴンになったアルビオンを止めるために騎士が奮戦していた。

 あ、イージーモードの主人公が吹っ飛ばされた。ドムニスが戦うのではなく、誘導するように幻術などの妨害系魔法を使うように指示をしていたが、フォイルの到着に気付いて近寄ってきた。


【デメテル様!ドライグ様が……!】


【ドムニス、詳細は後で。……完全にカテゴリーHに変貌しています。2人とも、下がっていて】


【危険です、デメテル様!お1人では……!】


【お願い、アルと約束したの。ああなったら、誰かを殺そうとする状況になったら、わたしが殺すと。──お願い】


 フォイルのその言葉に2人は苦悶の表情を浮かべた後に、頷いた。そのまま騎士団ややってきていた冒険者へ指示を出していく。

 フォイルも剣を抜き、アルビオンに向けた。


【ごめんね、アル。誰かを殺す前に……わたしが殺す】


 そして戦闘へ。【暴走龍アルビオン】の名前で、ボス戦なのに専用BGMなのかOPのオルゴールアレンジが流れ始めた。

 動かないと死ぬから動くけど、感情が追いつかない。


「え、倒さないとダメ⁉︎倒したくないんだけど⁉︎というか出会ったばかりの頃の約束、本当に実施しようとしないで!あんなのフラグにしないでよー‼︎」


『何のイジメですか?』

『夫で相棒で腹心の部下殺せとか、畜生かな?』

『マジで救いねえの?異形になったらおしまい?』

『多分特別なギフトに目覚めでもしないと……』


 アルビオンは空を飛ぶわ、その状態で火球を放ってくるわと、何もかもが強かった。ステータス確認をしたらレベルも99になっていたし、火力も何もかも別格の相手。

 アイテムを使いまくって、奥義も使いまくって心情的にも強さ的にも1番苦戦した。ボス戦とかだと会話がボイス付きであったりするんだけど、龍としての唸り声とアルビオンの名前を呼ぶだけの、悲痛な会話しかなかった。

 かかった時間は34分。やったとかではなく、純粋に心が折れる。


 戦闘終了後、イベントが始まる。黒龍は倒れて、人間は全員避難させられていたために誰も声をあげなくて。そんな静かなことが嘘かのようにフォイルは黒龍に駆け寄り、黒龍もいつも通り身体がグズグズに溶けてアルビオンの姿が現れる。

 身体のほとんどが炭化しており黒焦げ。それでもどうにか身体の全体像は見えて、フォイルがすぐに回復のための緑の光を当て始める。


【アル!嫌よ、目を開けなさい!】


【……しくじった、なぁ……。気を、付けろ……。奴ら、人間爆弾を、使ってくる……。ドムニス、も、同じ呪術に、やられるかもしれない……】


【わかった、わかったから!いつもの治癒力はどうしたの⁉︎仮にもドラゴンのギフトでしょ⁉︎デメリットばかりで、こんな時くらい役に立ちなさいよ……‼︎】


【自分、のこと、だ……。限界もわか、る……。愛してるよ、アリア(・・・)。レミアには、ごめん、って……】


【自分で伝えなさい!そんなことを言わなくても良いように、今わたしが治すから……!アル?──アルっ!目を覚まして!お願いだから、置いていかないでぇ……!】


 アルビオンはそれ以降、ピクリとも動くこともなく。穏やかな表情で眠っていた。

 そんなアルビオンを抱きしめるアニメ絵のスチルが表示される。

 フォイルの慟哭が響き渡り、暗転。そしてポップアップが表示されて【愛する者を喪った者】という称号と、【龍殺し(ドラゴンスレイ)】というギフトを手に入れていた。

 そしてセーブしますかと聞かれたので、セーブをしつつ叫ぶ。


「いやいやいや、人の心ないのでは⁉︎この2人が何をしたと⁉︎邪神を否定しただけでは⁉︎」


『(絶句)』

『蘇生魔法とか、ないんですか⁉︎』

『ゲーム的にはあるけど、あれって気絶から起こすためのものらしいから』

『イージーモードだと主人公がトドメの一撃で剣を振り下ろして、暗転したら龍を倒していたってことになってたけど』

『多分情報操作。聖女が戦えるって知る人少ないんじゃね?』


 続きは気になるものの、今日はこれ以上続けられる勇気がなかったためここで終わりにすることにする。

 いやいや、こんなことやって良いのか?

 これでハッピーエンドみたいなものを見せられたら情緒はどうなるんだ。いや、娘が生きていればどうにかなりそうだけど。

 でもアルビオンがいないエンディングかぁ。それでハッピーエンドと言われて納得できるか。どうなるんだろう、このゲーム。


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