ハードモードに負けずに新しい街へ【SoF】#3
昨日は自分の配信をしていなかったこともあり、今日は家に帰って朝の10時半という微妙な時間から朝配信を始めた。真紀さんとは朝ご飯を食べてから解散して、家で準備をしながらSNSで配信の告知などをしていたらこんな時間になってしまった。
俺としても続きが気になるので始めていく。
「皆さん、おはようございます。絹田狸々です。昨日はコラボ配信はしても自分の配信はしてなかったので今日は配信しないとなーって思ってたらこんな時間になってしまいました。続きが気になるので『Spill over and Fall-fortune fallen doom-』をやっていきますね」
『リリがこんな時間って珍しいな』
『実は初?朝配信はいつも早かったし』
『リリおはよ!』
『3Dおめ!』
『土曜日だからな。こんな時間でも良いんじゃね?』
今日はちょっと長い時間配信をしたくて変な時間に始めてしまった。けどゲームの続きが気になるのでちょうどキリの良い場所まで配信となると土曜日に長時間配信がいいかなと思って枠を取った。
区切りにもよるけど、お昼ご飯も下手をしたら配信中に食べるかもしれない。それか枠を別に取るか。
3Dについては自分の枠で話すのは初めてだったので少し触れつつ、ゲームの準備をする。
『SoF』は前回までに地道に依頼をこなして次の昇級試験のために別の街へ行ってお使いをしつつ他のギルドへ顔を出せというもの。次の街のギルドで何かしらの依頼を受けて、それを終わらせた証拠を持って帰ってきて昇級になるようだ。
乗合の馬車があったのでそれで次の街『山岳交流都市ヴァルモニア』へ向かった。街同士で交流があると今回のように馬車が出ているようで、これで移動する冒険者も多いらしい。この馬車の護衛任務もあるようだが、今回はそれを受けなかった。次に昇級したら受けられる依頼のようだ。
馬車に乗っている間は特にイベントもなく次の街へ。今回は昇級のためだったのでお金は取られなかったが、次回からは馬車を利用するとお金がかかるらしい。
『山岳交流都市ヴァルモニア』は様々な街と交流のある商業都市で、山間にあるものの交通の便は良いらしい。この街を中継地点にして他の街へ行くことができそうだ。この昇級試験が終わったらこの街に来てたくさん探索してみても良いかもしれない。
街の中に何があるかを確認しつつ、目ぼしいものやサブクエスト的なものもなかったのでギルドへ向かう。どこもかしこもギルドは造りとしては変わらず、酒場が一緒になったような木造の建物だった。
そこでギルド長のバルドフから貰った推薦状をこっちのギルドの受付嬢に渡して、相応しいランクのクエストを選んでもらう。そんなイベントムービーを見ていたところで、まるで火事でも知らせるようにカンカンカン!と甲高い鐘の音が街全体に響き渡った。
【これ、何?】
【第1種戦闘警報……⁉︎フォイルさん、申し訳ありません!クエストは中止です!それどころか避難の準備を……⁉︎】
【避難?】
「あー、何か突発のイベントですかね?昇級試験のたびにイレギュラーが起きているような……」
『ゲームだからね』
『冒険者なのに避難を促される?妙だな……』
『第1種の重大性がそれほどだってことだろ』
受付嬢の案内に従って避難の準備をするフォイル。装備を纏った冒険者たちは一斉に外に向かっていった。受付嬢の話だと魔物の大群が現れ、その数なんと1000越え。ランクの高い冒険者は戦闘に駆り出され、ランクの低い冒険者は市民の避難を手伝えとのこと。
フォイル、まだ1つランクアップしただけのGだ。で、戦闘をさせられるのはE以上の冒険者。フォイルは大人しく土地勘もないために避難誘導を始める。街にはシェルターのようなものがあり、そこに市民を閉じ込めるらしい。魔物の波を観測して、穴がありそうな場所を通って他の街への避難もこれから検討するとか。
あとイベント始まってからBGMがこっちの恐怖心を煽るようなおどろおどろしいメロディが流れる。めちゃくちゃ不穏だ。
これ、絶対戦闘に巻き込まれるよなぁ。魔物が相手なら『狩人』のギフトを育てておけば良かった。前回が魔物だったから次のボスは人かなと思ってたのに。
避難誘導をしている中、空を飛べる魔物が街へ乱入してきた。弓や投石で地上に落とそうとする冒険者の攻撃をヒラリと避けてまだ避難している無防備な市民を狙う。
そこに小太刀を抜刀したフォイルが地面へ迫っていた鳥型の魔物へ顔面を斬り付けることで討伐。仲間がやられたと思ったのか似た鳥型の魔物が迫ってくるが、フォイルは建物の壁を走り魔物の高さまで上がって、翼をメインに斬る。
地面に落ちてしまえば他の冒険者でも倒せると思ったのか、彼女は建物の間を飛んだり、屋根から飛び降りることで魔物と空中戦を始めた。
「うわー、フォイルちゃん戦闘能力たっか……」
『幼女が孤軍奮闘しているの、バグだろ』
『まだこの子、新米冒険者よ?ベテランも同じことしてよ、ほら。先輩でしょ』
『そもそもギフトからして別格だからな、主人公』
フォイルに注目が集まったために、他の冒険者の攻撃が通る。遥か上空からプテラノドンのような魔物が火球を放とうとしたが、空中で止まっていたために冒険者の矢によって翼を撃ち抜かれた。
そんな感じで戦闘をしているムービーを見ていたらフォイルに合流する冒険者がいた。戦士っぽい格好の屈強な男性と、弓矢を持った明らかに弓兵のような冒険者だ。
【嬢ちゃん、よくやった!ここからは即席のパーティーを組んであいつらを倒すぞ!】
【こんな凄腕で幼い冒険者がいたら話題になっていてもおかしくはないんだがな……。お嬢ちゃん、どこの街から?ランクは?】
【『冒険砦グランベル』から来た。ランクはG】
【グランベル!いや、にしたってG⁉︎】
【年齢相応ではあるんだろうが……。いや、今はそれどころではない!戦うぞ!】
「あ、戦闘に入っちゃった!メニュー画面でギフトの設定させてよ!しかもパーティー組んでる⁉︎名前が戦士と弓兵なんだけど⁉︎」
『初仲間がモブってこと?』
『イベント戦闘の前にメニュー画面が開けると思ってるとか甘え』
『この人たち、強いのかな?HPとかフォイルちゃんより低くね?』
せめて経験値が入るギフトを変えたかったなぁ。ここで『狩人』をセットしておけば魔物を倒したボーナスで多めに経験値が貰えるはずだったのに。
ギフトのG-EXPは戦闘では倒した敵の種別によって貰える経験値が微増する。魔物を倒していると『狩人』の経験値が多めに貰えて、人型の敵を倒すと『殺戮者』が多めに経験値を貰える。【復讐者】は回復スキルを使うと多めに入るっぽい。
今は『殺戮者』を設定しているのでボーナス経験値は諦めた方が良いだろう。
初めてのパーティー戦ということで折角回復スキルもあるんだからこれで援護しながら倒していけばいいと考えて、パーティーのHPも気にしつつ戦う。
浮かんでいる敵は結構シビアに攻撃を当てないと当たっていない判定を受ける。それに浮かんで遠距離から攻撃をしてくるのが中々うざったい。パーティーのHPを気にしながら戦うの、割と厳しいぞ?リアルタイムバトルシステムだからNPCが適当な行動をしていると簡単に被弾していく。
「ちょ、ちょっと⁉︎味方が弱すぎ!」
『せめて回避してくれよ……』
『戦士のおっさん、役立たず』
『タンクにもアタッカーにもなれず、被弾しているだけ……。これリリ1人で攻撃した方がDPS稼げないか?』
『弓兵の人はチクチク攻撃しているけど、火力がないのか全然倒せてないな』
『マジでNPCガン無視でプレイヤー1人で攻撃した方が楽じゃね?』
『こんなところでハードモードを体感しとうなかった』
『ハードって、味方に恵まれないって意味だったの?』
味方がやられるとどうなるのかわからず、死なないように回復スキルを使いまくって、かつ攻撃はしっかりと当てて倒す。魔物がやられると補充されるタイプの戦闘で、10数体倒したところでリザルト画面で経験値とドロップアイテムを貰いつつ、イベントムービーが入った。
空からやってきた、10mはありそうな巨大な赤い飛竜。それが戦士を嘴で咥えるとそのままお腹から両断。血飛沫を撒き散らしながら死体は地上へ落下。そのあっけなさに呆然としていた弓兵は飛竜の放つ火球を受けて死体も残らない燃え滓になっていった。
「うわぁ、グロい……。あ、このまま連続戦闘⁉︎先輩冒険者が手も足も出なかったんですけど⁉︎」
『ランクいくつだったんやろな、先輩方』
『味方気にしない方が楽じゃね?』
『ボス戦は逆に楽かもな』
『無能な味方もなし。時間差攻撃をしてくる敵もいない。これはもろたで!』
『でもこのゲームのボスって大体めちゃつよでは?』
『それはそう』
戦闘ではさっきまで戦っていた飛んでいる魔物の強化版みたいな感じだった。モーションパターンも増えて攻撃力がかなり上がっていたのでリジェネでは間に合わず、攻撃は当てているのに全然倒せない。
このゲームの回避とダメージコントロールが上手くなってきたなと思っていたらようやく倒せた。8:36というタイムがリザルト画面に出る。経験値もたくさん貰えてレベルは16に。『殺戮者』のレベルも5に上がった。
飛竜が倒れるイベントムービーの後に、街を見渡すと冒険者たちの防衛網が崩されたのか街中に魔物が雪崩れ込んでいた。避難している市民が殺されたり、冒険者が戦っていながら街のあちこちから火の手が出たり、建物が崩れていって街の崩壊をまざまざと見せつけるムービーが流れつつ、建物の上にいたフォイルは街の状況を見て呟く。
【まだ依頼も受けてない。わたしは早く昇級して、わたしたちを苦しめた奴らを殺さないといけないのに……。わたしの邪魔をする奴は、殺さないと。それに、このままじゃまたわたしたちが産まれる……】
「孤児がたくさん出るってことですかね?あ、操作できるようになった。まずはメニューでギフトを『狩人』に変えて、セーブとかって……できないですよね。探索全然できてないなあ」
『街じゃなくてダンジョン扱いなんじゃね?』
『レベルアップしたしいけるやろ!』
『来たばっかの街が崩壊するとか、辛えわ』
『貴重なアイテムとかあったんかね?崩壊しちまったらわからんか』
『こうなる前に全部探索しないといけないのか。メンド』
『これでアイテムなかったらなかったで崩壊フラグとかの裏読みできちゃいそう……』
街にはシンボルエンカウントっぽい魔物と、倒れた人の姿があちこちで見られる。目的地は先程案内のあったシェルターのようだ。ミニマップが生きていて、目標地点のナビゲーションがあるのは助かる。
目に付く魔物は全部倒していこうか。
魔物を倒すと、襲われていた人から感謝されつつアイテムを貰えるというイベントがあった。貴重なアイテムも貰えるかもしれないのでシェルターに向かう前に積極的に魔物のシンボルに当たりにいく。時間制限とかも多分ないだろう。
魔物自体はさっきの飛竜よりは弱かった。群で来た鳥系の魔物よりは強かったので時間はかかるものの倒すのは問題ない。
目に付く魔物を倒していくと、一際大きいティラノサウルスのような恐竜っぽい魔物がいた。これも倒せるかなとシンボルにぶつかると、今までの通常戦闘ではなく飛竜と戦った時のようなボス戦のようなBGMが鳴り響く。
「げっ、ボスクラス?」
『大きさ的にね』
『ボスラッシュだ!』
『でも避けられはしたんだよな』
『これ負けたらどこからやり直しよ?』
『あー、やり直しリスクは確かに高いか?』
やるっきゃないか。
レベルも結構上がったので魔物用の攻撃スキルもたくさんある。MPを回復させるアイテムがないので使い所は考えないとダメだけど、切るならここだろう。回復スキルを使わず、回復はリジェネと回復薬任せでMPは全部攻撃に回す。
MPは宿屋に泊まるか、時間経過での回復しかないからかなりきつい。戦闘中でも歩いていても自動でMPは回復するので、自動回復で回復スキル1回分は戦闘中に溜まってくれないだろうか。
ティラノサウルス改め、『強大なる暴君龍』はとにかく素早い。それに火力も高かった。結構レベリングしているはずなのに一発で7割持っていくな。強攻撃でもないのにそんなのやられたら、攻撃範囲が見えている強攻撃は即死じゃないか?
どうにか回避を繰り返して攻撃スキルを当てる。結局のところこれでしかない。魅せる攻略とかじゃないのは申し訳ないけど、ゲームが凄い上手いわけじゃないから許してほしい。
突進、強靭な顎での噛み付き、踏みつけに尻尾での回転アタックなど様々な攻撃パターンがあったものの、とにかく避ける、回復する、攻撃の繰り返しでひたすらHPを削る。HPバーが見えていて、こっちの攻撃ではミリ単位でしかHPを減らせなかった。
「え、なにこのカットイン⁉︎は、流星を降らせる⁉︎奥義⁉︎」
『必殺技だー!』
『そういうのあるの⁉︎』
『最初の奥義が敵なのかぁ』
『避ける範囲狭え!』
ティラノサウルスが咆哮をするカットインが画面中央に表示され、技名らしき『奥義・いつか焦がれた流星群』なる技でフィールドに隕石が落ちてくる。しかも多数。
攻撃予測範囲は出るのでそれに沿うようにダッシュで避ける。だが一発は避けられずに直撃した。
「あっぶな!HP23しか残らなかったんだけど!すぐ立って回復薬!」
『レベル次第では即死?』
『装備とかギフト次第かもな。防御上昇系のギフト持ってたら余裕で耐えられたかも』
『リカバリー間に合うか?』
『ダウンしてるとメニュー開けないの、割とやべえよな』
どうにか回復薬を使って回復するものの、回復薬が残り少ない。薬草も若干数あるとはいえ、回復量が足りなくて連続で攻撃を受けたら負けそうだ。
奥義は何回も使ってこないようで、それ以外の攻撃をしてくる。それは見慣れたので回避をし続けて、回復薬でHPを満タンでキープしつつトドメを刺した。
かかった時間は18分21秒。ボス戦やっば。
あ、でも経験値めちゃくちゃ貰ってレベル20になった。バーストアーツなるものが解放されたっぽい。攻撃スキルを使う際にR2ボタンを長押しすることで溜め攻撃ができるようだ。隙を作ることになるものの、大ダメージらしい。
後で使ってみよう。
『強大なる暴君龍』を倒したらイベントムービーが挟まった。肩で息をするフォイルの前で身体がグズグズに溶けていくティラノサウルス。そのティラノサウルスが消えたと思ったら、全身が焼け爛れた裸の男が現れる。
燃えるような赤髪に、それと全く遜色ないほど紅く煌びやかな宝剣を手にした男性。
「魔物から人間出てきたんですけど……?」
『これは初めて、だよな?』
『剣持ってるやんけ』
『まさか……?』
【クカカ……。儂を倒したのが、こんなお嬢ちゃんなんて……。こいつを、持ってけ】
【おじさんは、悪い人?】
【おお、悪い悪い。あんの化け物になって、人を殺してきた。まさしく暴君じゃ】
【じゃあ、殺すね】
しわがれた声の壮年の男性。立つ気力はないのに終わりを迎えられたのが嬉しいのか笑っている。
そして躊躇のない主人公。
男性から剣を受け取り、紅く輝く剣で男性の心臓を貫く。
剣に滴る赫い血を振って落とし、近くのロープで背中に固定。亡くなった男性は、それは晴れやかな笑顔だった。
【……変な人。殺されたのに、笑うなんて】
称号『暴君を止めし者』とアイテムとして『宝玉儀礼剣アコレード』を手に入れつつ、主人公が訝しむ終わり方だ。特殊なボスだったっぽい。
手に入れた物は確認する。剣だから装備できないかなと思ったら装備できた。
そこに書かれているのは『攻撃力プラス75。敵への気絶耐性弱体化50%。人型からの攻撃25%カット』とかいう効果欄。
ちなみに今装備している小太刀の攻撃力はなんと27だ。
あとフレーバーテキストに『本来は戦闘で使わない、王位継承のための至宝。その価値は著しく落ちたものの、だからこそ戦いに用いるべきだ。今やこの剣は血に塗れているのだから』という、ありがたい剣が武器に成り下がったということが書かれている。
こんな剣を持っていたあの人、まさか王族?そんな人が何で魔物になっていたんだ。
「えー、最強とさせていただきます」
『つっよ』
『攻撃力めっちゃ上がるやん』
『付随効果がなかなかに良いのでは?』
『イベントアイテムつえー!』
『フレーバーテキストが不穏』
『あの人何者よ?』
もちろん装備させる。今までは腰に武器をつけていたものの、今回の剣はフォイルの背丈からしたら大きいからか、背中に括るように装備していた。
鞘がないから抜き身なんだよな。
そして魔物から人が出ていたことについてちょっと考察してみる。
「あの、恐ろしいこと思いついたんですけど良いですか?」
『ええよ』
『こういうのは考察するのが面白いんだぜ』
「『殺戮者』を獲得したのってブローカーを倒した後じゃなくて街の外にいた魔物を倒した後のリザルトだったじゃないですか。で、今回魔物が人を含んでいたのか、人が魔物になっていたのかわかりませんけど、多分さっきの人の言葉的に人が魔物になっていたんでしょう。となると『殺戮者』を獲得した時のあの魔物も人だったんじゃ……?」
『あー……』
『『狩人』の時は魔物を倒しまくってたもんな』
『数の問題とか討伐数とかたまたまかと思ってたけど、そう考えるとタイミング的に確かに……?』
『魔物って人だった奴とただの魔物がいるんか?イベントで倒しても人が出てくることは今回が初めてだったわけだし』
まあ、確証はない推論だ。でも今回のイベントってかなり重要な気がするんだよなあ。
考察している間にMPも若干回復したので、改めてシンボルエンカウント狩りをする。バーストアーツは当たれば敵のHPをゴリっと削れたために、これからも頻繁に使っていこうと思う。デメリットは溜めだけだから、その間に攻撃されなければいい。
それにアコレードのおかげで相手が気絶しやすくなった。気絶している相手の目の前でバーストアーツを放つのは中々に爽快だった。
見える範囲のシンボルエネミーを倒して、シェルターに向かう。ここでイベントムービー。どうやらシェルターに入るのではなくむしろ出てくる人が多数で、大きな団体で2つに別れているようだ。
ギルドにいた受付嬢がフォイルに気付いたようで手を振ってくる。
【フォイルちゃん!無事だったのね!】
【これ、何してるの?】
【……この街を放棄して、二手に別れて脱出するの。グランベル方面とクイニー方面に。もう魔物がいっぱい入り込んでるでしょ?だから街を魔物にあげて私たちは逃げるの】
【わかった。グランベル方面についていけばいい?】
【ええ、そうして。Aランクの冒険者もたくさんいるから、安心はできないでしょうけど大船に乗ったつもりでね。あと、これ回復薬。無茶はしちゃダメよ】
あ、HPとMP全快にしてくれた。それに回復薬を10個も。消耗してたから本当にありがたい。
逃げる準備ができたところで南北に別れて脱出。魔物は東西から攻め込んでいるようなので南北からは逃げられるようだ。
フォイルは避難民の護衛として団体の横側面に配置。他にも冒険者がいたが、イベント戦闘が起こる。
ここでも名無しのNPCがパーティーを組みつつのイベント戦闘。とはいえボスクラスの敵はいなかったので2回のイベント戦闘の後はイベントが終わりのようで団体が駆け足で逃げながら街が燃え盛るのを遠目にして逃げる様子で暗転。
セーブしますかと聞かれたので速攻セーブ。セーブができて良かった。ここで章の一区切りということだろう。
セーブが終わると避難民でごった返すグランベルのムービーが始まる。
ギルドではギルド長のバルドフがヴァルモニアのギルド職員と状況について確認していた。
ヴァルモニアは崩壊。魔物に占拠され、あそこが魔物の一大拠点になりかねないということ。しかも様々な街に繋がる場所なので要所としても重要な場所だ。そして魔物の数もそうだが質も問題だという話が最高ランクのAランク冒険者が苦言を呈する。
【なるほど……。まずはギルド全体で調査隊を組んで、奪還作戦をいつ実行するか、というところかの。まだこっちの大穴の調査も終わってないのに何でああもこうも問題が起こるのか……】
【一筋縄ではいかない、という結果が出るでしょうね。……ちなみにバルドフギルド長。この子は何者です?本当にGランクですか?】
Aランク冒険者ヴェーラーが視線を向けたのは水を飲んでいるフォイル。
5歳くらいの幼女、という意味ではなく多分強さについて言及されている。それとも回復スキルのことがバレたか。
フォイルは気にしていないが、バルドフの目線が強くなる。
【どういうことじゃ?】
【明らかに強すぎる。よっぽど良いギフトにでも恵まれましたか?撤退時に戦った敵はDランクでも苦労する魔物ばかりでしたが、彼女は難なく倒せていました。特例で彼女を昇級すべきだ。奪還作戦でも戦力になる】
【馬鹿野郎。特例なんて与えたらギルドの規律はどうなる?それに嬢ちゃんの年齢を鑑みろ。今回の昇級試験は非常時につき合格とする。だがそれだけだ。フォイル、おまえさんは今日からFランクじゃ。その次のランクアップはこの非常時につき、グルメダンジョンに行って食料を集めること。これを課題とする。もちろん困っている人を助けたり、クエストをこなしてもいい。ひとまずしばらくは休め】
【ん、わかった。おやすみ】
イベントはここまで。ここからは自由行動で、やることとしたらクエストをこなしたり、街で発生しているサブクエストを進めたりというところだろう。
良い武器は手に入れられたのに、防具系が貧弱すぎる。その辺りもちょっと考えて準備をしたいな。昇級に関してはほぼ必ずボス戦が来るってわかったし。
セーブもして区切りとしよう。
「4時間も経ってましたか。一息入れたいので一旦配信を閉じます。そうですね……。17時再開にさせてください。枠を立て直してまた配信します。この枠は終わりということで、また後で」
『そんなやってたか』
『戦闘にめちゃくちゃ時間かかるからな。しゃーない』
『17時にまた会おうぜ!』
配信を止めて遅いお昼ご飯を食べていると、KP7先輩からチャットが来ていた。なんだろうと見ると、さっきの配信を見ていてくれたらしい。
「ヴァルモニアでの撤退戦でシンボルエネミーを倒さないで最速でシェルターに行くと強制バッドエンドだったぞ。やり直しにならなくて良かったな。俺はやり直した」
「えー、そんな仕様もあるんですね。あの一連の戦闘のやり直しは1時間くらい下手したらロスします?」
「それくらいかかったな。それにしてもあのティラノ倒したらそんなアイテムくれるんだな。やり直しが怖くて俺はスルーしてた。あれ時間限定サブクエストか?」
「どうでしょう?俺が見付けたオアシスとか行ってみました?小太刀貰えるやつ」
「あれはクリアした。武器とか結構貧弱だからギフトでどうにかするか、大金払ってアイテム買うか、サブクエストこなすしかないんだろうけど。お互い頑張ろうな」
「はい」
いや、ほんと。かなり凝ってるな。SNSはあまり見ないようにしているけど、まだイージーモードくらいしかクリア報告がない。あっちは30時間くらいあればクリアできるらしいけど、ノーマルとハードはまだクリア報告を見ていない。
ハードほどとは言わずとも、ノーマルもそこそこに難しいらしい。それでシナリオも長ければクリアなんてまだ出ないだろう。
ハードだけでもクリアするにはどれくらいかかるんだろうな?




