夜遅く別荘にて
買い物が終わって別荘に戻ってからはいつも通りの生活を送って就寝した。
その日私は夜中にふと目が覚めて水を飲みに台所へ向かうと、それは居ました。
全身黒色を主体とした服装をしていたそれは私達が今日買ってきた食料が入っている袋を持つ所でした。そしてその顔がこちらに向いてくると顔には猫の仮面が見えた。
…あっ、目が合った。
黒服の人物は私に向かって突撃してきました。私を突き飛ばしてそのまま逃げる算段でしょうか。でも私もみすみす盗人を見逃すわけにはいきません。せっかくなので魔法を試すことにしましょう。
「何っ!?」
ふふふ、戸惑ってる戸惑ってる。私が使っているのは幻を見せる魔法で、まるで私がそこにいるように見せたのです。お客さん、それ残像ですよ?
「これは一体!?」
今黒服さんにはどこにも出口が無い台所が見えていることでしょう。いいなあこれ使いやすい。黒服さんは周りをずっときょろきょろしてますね。こうしてみると私と同い年位に見えます。一体どちら様なのでしょうか。
「あなたは誰ですか?この家から盗みを働くなんて…」
「フン、貴族に名乗る名などない。」
「そうですか…マーリアー!」
「な、なにを!?」
うちの最強侍女を召喚させていただきます。タイムアップです。どやぁ。
「こんな真夜中にどうしたのですかお嬢様、おや?その方は?」
「お客様みたい。マリアは知ってる?」
「その猫の仮面から見るに最近話題の大怪盗フェレスとお見受けしますが…どうでしょうか?」
「………。」
反応を見る限り当たりのようですね。なんだか大物を見つけてしまいましたね。今日噂話を聞いたばかりの人物と出会うとは…噂をすればなんとやら?ちょっと違うかな?
「これだけは使いたく無かったがしょうがない。」
そうつぶやいた黒服さん、いやフェレスさん?は突如姿を消しました。
「これは…霧でしょうか。」
うん。霧ですね。そして霧って聞くと私には少し思い当たる節があるのですが、少し待った方がいいかもしれない。
魔法を消して少し待っていると霧が段々晴れてきた、そしてそこにいたはずのフェレスさんは居なくなっていた。
「ミスティル・ファント…かしら。」
「お嬢様、お知り合いですか?」
「あくまで前世の知識程度だけれどね。」
ミスティル・ファントは攻略対象の一人で無口なイケメンといったイメージをもつキャラクターでした。
無口ではあるけれど子供にやさしく貧しい人々には救いの手を差し出す。悪役令嬢にいじめられている主人公を助けそれ以降主人公のそばにいるようになる。まあほかの攻略対象も同じ感じで主人公と一緒になるんだけれどこの主人公ってなぜか一人でいる事が多いんだよね。昼休みとか、なんでだろう。