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偽りの月光 ※ルナミリア不在

正確には居るよ。喋らないけど。

誘拐が起きてから少し後、ソルウィが居ない事に気が付いた王子達は会場中を探し回っていた。


「ソフィーはいたか?」

「いや、どこにも居ない。」

「こっちも居ない。」

「一体どこに?」


ソルウィの行きそうな場所を考えていると庭へと出ていくスターレンの姿が見えた。


「あいつは何をしているんだ。」


そういえば庭は確認していなかったなと思った王子はレンを追って庭へと向かう。一方ルナミリアを探して庭に出たレンはプリマが何かを探しているのを見つけた。


「プリマさん。何をしているんですか?」

「フィナイト様!」

「探し物ですか?それとも人ですか?」

「………。それが…誰も居ないんです。」

「誰も居ない?それではまるで誰かが居るはずだったように…」


プリマは青ざめた顔をしてレンに縋りつく。


「助けて下さい!きっと二人とも攫われてしまったんです!」

「攫われた?それも二人?…!まさかその二人は!!」

「ソフィーと…」


レンはソルウィの名前に驚いたが続いたもう一人の人物に目を見開く事になった。


「ルナミリアさんです。」

「……………。」


話を聞いて硬直するレンの元に王子達がやって来た。


「何してるんだお前ら。こんな所で逢引か?そういうのは…」

「ソフィーとルナが攫われた。」

「…何!?ソフィーが!?」

「彼女が証人だ。どこに攫われたか知っているか?」

「もし本当に攫われているのだとしたらもう城には居ないはずです。どこかまでは分かりません。」

「そうか。ありがとう。王子、城の捜索は兵士たちに任せて俺達は城の外を探しましょう。」

「分かった。行くぞ!」


王子一行はプリマはその場で待機するよう話してから城の入り口に向かった。入り口の門番に話を聞けば二人の関係者を名乗る黒フードの一団が出て行ったという話だった。


「くそ!一体どこを探せばいいんだ!」

「ソーラ。こっちだ。こっちの森の中、馬車の通った跡がある。」

「でかしたスノー!」

(動物達の話ではルナミリア嬢は捕まっていなかったらしい。どういう事なんだろう。)


馬車の後を追っていくとどんどん町から離れていき、森の奥へと深く入って行く。王子一行は全速力で森の中を駆け抜けている。


「ぜぇ…はぁ…俺達も馬車を使うべきだったか。」

「無い物ねだっても意味はありませんよ。体力づくり位はしているでしょう?」

「そうは言うがレン。もう10分は全力で走っているぞ。」

「それぐらいでバテるのでは訓練不足ですよ。」

「何だと!?」

「二人とも言い合いは止めて下さい!しょうがありません。私の魔法を使います。」

「どういう事だ?」

「王子ももう知っているでしょう?私は天性魔法使いの一人です。既に知っていたのでこの魔法の使い方は熟知しているのです。行きますよ!」


ミスティルが魔法を発動すると皆の体が浮遊する。


「これは!?」

「霧魔法の応用です。作り出した霧の濃度を濃くしてほぼ固形にして乗れるようにしているんです。代わりに魔力は大幅に使うので戦闘での活躍は期待しないで下さいね!」


霧に乗った一行は走っている時よりも早い速度で森の中を移動していった。しばらくそのまま進んでいた時、遠くで大きな光が輝いた。空高くに打ち上げられたその光は、まるですぐ近くに月が出来たのかと錯覚するレベルだった。そしてその光を見たレンは頭痛を感じ目を閉じた。その瞬間、信じられない光景が脳裏に焼き付いた。


それは木に寄りかかったルナの姿だった。近づくと、これ以上染まらないのではと思うほど血で赤く、ボロボロになった制服。地面には彼女を中心に大きな血だまりが出来ている。さらに近づいて彼女に触れば、傷だらけの体は冷たくなり、顔はまるで眠る様に穏やかで、胸に手を置いてみても鼓動は感じられない。彼女はもう死んでいた。助けに来るのが遅すぎたのだ。


(いまのは!?)


気が付けば霧の上に戻っていた。大きな光はまだ残っている。色々分からない事があるがさっきの光景については自分の直感がこう告げている。あれは実際に起きる未来の光景であると。


「光魔法!?つまりあれはソフィーの魔法か!」

「場所を教える為の行為かもしれません。つまり危機的状況かも。もっと飛ばします!」


霧はさらにスピードを上げて光が打ちあがった場所に向かって行く。そしてその途中で息絶え絶えで地面に座り込むソルウィを発見した。


「ソフィー!」

「ソーラ様!」


ソーラはソルウィを抱きしめ、良かった。とつぶやいた。そんな状況を見ながらもレンは周りを見渡す。しかしルナの姿は無い。


「ソフィー。ルナは?」

「まだ牢屋の中。早く助けに行かないと!それに…」

「それよりも君の安全の確保が優先だ!」


ソーラはソルウィを抱き上げ引き返そうとする。ソルウィは疲れた体で抵抗も出来ずなすがままになる。レンはソーラが動き出す前にソルウィに聞く。


「…ここまでどうやって来た?捕まっていたんだろう?」

「青い仮面をした男の人に助けてもらったの。私を太陽の巫女って呼んで、私を守る為にその場に残って…それで…。」

「…くそっ!!」

「レン?」


レンは突如走り出す。


「おい!レン!どこに行く!?」

「ソフィーは任せた!」


レンは光の上がった方へ再び向かう。そこに彼女が居るはずだから。


(ルナは知っていたんだ!少なくともソフィーが攫われる事は!)


しばらく走れば開けた場所が見えて来た。そこには木に寄りかかる青い仮面の男とそれを見下ろし刃物を振り下ろそうとする布巻の男、ジャックが居た。仮面の男と先程のルナの姿が重なる。


「うおぉぉぉぉぉ!!」


レンはジャックに向かって手から岩石を飛ばす。ジャックは後ろに飛んで回避する。


「また邪魔者ですか。忌々しいですね。」

「お前は誰だ。」

「さぁ?誰でしょう?」

「誰の差し金だ。」

「秘密です。」


レンとジャックは睨み合う。


「邪魔者はさっさと消すことにしましょう。どうせすぐに終わります。」


ジャックの姿が消えた瞬間、殺気を感じ即座に右腕を顔の前に構えた。構えたと同時に右腕に傷がつけられた。


「…いつの間に!」

「そうですね。これが普通のはず…どうやって躱していたんでしょうね。」


ジャックが考え込んでいるのを隙と見たレンは左腕で岩を飛ばす。ジャックは紙一重でそれを躱しながらレンの方へと向かってくる。そしてその姿が消えた瞬間、レンは再び魔法を使用して自身の体を岩で包んだ。岩に刃物が弾かれる音が響く。音が止んだ時に解除すればジャックは苛立った様子でレンを見ている。


「不愉快ですねぇ。攻撃をかわされるのは中々面白かったのですが、防がれるととっても腹が立ちますよ。」

「それは褒めてくれていると受け取っても?」

「口の減らないガキですねぇ!」


ジャックの姿が再び消えて、突っ込んでくると感じたレンは全身を岩に包み、手に岩が繋げられた剣を持つ。二人が交差する直前、広場に何かが飛んできた。砂煙が舞い、視界が見えなくなる。お互い動かずその着弾地点を見つめる。砂煙の中に一つの人影が見えた。ジャックは自身の最速でその人影を切り刻む為に動いた。だが切りつけたジャックの手元には自身の持ち物であるナイフが存在しなかった。


「…これは、一体?私のナイフはどこに?」

「お探し物はこれかしら?」


ジャックの鼻先にナイフが掠る。ジャックは痛みにすぐ飛びのき砂煙が消えるまで待った。砂煙が消えたその中心にいたのはどう見てもこの場に会わないメイド服を来た女性、マリアだった。


「ま、マリアさん!?」

「感謝しますレン。あなたが時間を稼いでくれたおかげでお嬢様を助けるどころかこの不届き者を確実に…殺すことが出来ます。」


マリアの瞳はそこが見えない程の怒りに満ちていながら、隙を全く感じさせない動きでジャックへと歩み寄っていく。


「久しぶりね。あなたはルークだったかしら?いや、今はもう裂傷のジャックという名前があるのかしら?」

「お前は!何故ここにいる!!お前が裏切ってから俺らの組織は行動範囲が大きく縮小したんだぞ!!キングであるお前が逃げ出したから!!」

「はぁ。どうでもよかったですね。死んで下さい。」

「俺が死んで組織が黙っているとでも思うのか!?」


じりじりと後ろに下がるジャックに対し、スタスタと距離を詰めていくマリア。その顔に先程の様な怒気は含まれておらず、ただひたすらに無表情であった。しかしその顔がジャックに異常な程の恐怖心を与えた。


「お嬢様に危害を加えるなら、皆等しく、消すまで。」

「ひぃ!!」


恐怖心に耐えられなくなったジャックは脱兎のごとく逃げ出し、その場から消えた。しかしマリアが右手を不規則に動かすと、森の中から再びジャックが姿を現す。逆さ吊りになり、宙に浮いた状態で。よく見てみれば、無数の細い糸が全身に巻き付いている。


「離せ!離せぇ!!」

「相手を間違えたのですよ。あなたは。」


引き寄せられて来たジャックにマリアは語り掛ける。


「私は、本当に仕えるべき相手に出会いました。あの人と、その娘であるお嬢様に。私は今、とても幸せなのですよ。この幸せを守る為なら、私は国すら滅ぼせます。」


そしてマリアは開いた右手を空に掲げる。それと同時にジャックの体には糸が食い込み始める。


「レン。目をつぶりなさい。過程をあなたが見る必要はありません。」


マリアの言葉通りにレンは目をつぶった。それを確認したマリアはジャックの喚く声を気にも留めずその右手を握った。


レンが目を開けるとジャックの姿は無く、代わりに血だまりがあった。レンはその血だまりが何か分かりながらもマリアの姿を探した。マリアはボロボロになったルナを抱えていた。


「マリアさん。俺にも説明してくれませんか。ルナが何をしようとしているのか。」


マリアはレンに向き直る事もせず、ただ淡々と指示をした。


「レン。あなたはあちらに戻り、お嬢様は既に居なかったと伝えなさい。牢から逃げ出した後だったのだと。」

「マリアさん!!」

「あと!!」


詰めるようなレンの呼ぶ声を打ち消す様にマリアは声を上げた。


「明日屋敷に来なさい。あなた…一人で。」


そしてマリアはルナを抱えたまま森の中へと消えて行った。

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