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友達が家に来る時

休みの日。今日はプリマちゃんが家に遊びに来てくれる日です。前世も含め、友達を家に呼ぶなんて初めての事です。あ、ソフィーとレンは家族みたいなものなのでノーカウントで。王子は論外。楽しみだな~。


ちなみに時間はお昼過ぎ。昼食後に来てもらう様にしました。しょうがないよね!ただでさえ少ない食料がつい最近の唐突な訪問のせいでなおさら少なくなってるからね!卵一個に泣きを見るよ!っと、色々考えてたらチャイムが鳴りましたね。せっかくだしお出迎えしようっと。


「いらっしゃ~……い?」


開けた玄関の先には人がいち、にぃ、さん、…ろくにん?


即座に扉を閉めました。


……………。


え!?何!?どゆこと!?おかしいね!?私呼んだのプリマちゃんだけのはずだけどなぁ!?ソフィーの関係者もれなく全員揃ってた気がするなぁ!?…お、落ち着け、落ち着くんだ私。何も問題は無い。仮面を着けて再度いつもの様にすれば………仮面?着けて?今、見られた?


仮面を着けて即座に扉を開けました。そこには先程見た通り気まずそうなプリマちゃんの周りに笑顔のソフィーとレン、それにこちらを睨みつける王子とミスティル様とスノー様まで勢ぞろいでした。


「…何か見ましたか?」

「え?」

「お姉さま?」


とりあえず全員に向けて全力で威圧して誤魔化す事にしました。


「な・に・か!み・ま・し・た・か!」


皆懸命に首を横に振ってくれました。…レンだけは後ろで腹を抱えて笑い出すのをこらえていたようだけど。いつか覚えてろよ~。


とりあえず来てしまったのはしょうがないので前と同じく客間にお通ししました。とはいえこんな人数来るのも初めてなので一部の人(王子達3人)には立っててもらいましょう。…だって椅子無いし。


「それで?随分と大人数で来ましたけれど。どういったご用件なのかしら?」

「遊びに来ました!」

「気軽過ぎるわよ!!」


あの子があまりにもいい笑顔で言うもんだからついツッコんでしまった。


「私はプリマさんだけお呼びしたの。それをこんな大人数を連れて…」

「俺達が居ると何か問題があるのか?」


大ありだよ!!王子も王子で攻略対象全員ついてくる事許すな!!少しぐらい独占欲でも見せなさい!大丈夫なのかなこの国。お偉いさんの子供達が暇を持て余しているよ?


「私はプリマさんとお茶会をしたくてお誘いしたのにこんなに殿方がいては会話の花が開きませんわ。」

「お前が何か吹き込む可能性もあるだろう。」


警戒心高いのはいいけどここまでされると腹が立ちますね。いやまぁ、一番の問題はあの子が来てしまう事なんですけどね。少なくとも王子のルートでこんなに頻繁に悪役令嬢の家に行く事なんて無かった。そりゃいじめられている相手の家に行くわけないよね普通。やっぱり幼馴染になっている事が何か関係してるのかな。うーん。


「お姉さまはどうするのですか?」

「え?あらごめんなさい。あまり話を聞いていませんでしたわ。」

「え?あんなにしっかりお話していたのに?」

「何の話をしていたんだったかしら?」

「もぉ、来月に行われる魔力測定とそれに伴ったパーティーについてですよ。」

「あぁ、その事ですの。」


学園が始まってもう半年近くになってるんですね~。もうひたすらいじめを妨害していて時間の流れって早~いな。って言ってる場合じゃない!もう来月か!


魔力測定とパーティー。それはこの物語最初の鬼門。攻略対象の好感度が一定値超えていないとバッドエンドに直行する。正直私自身あの子のそばにはいない為、どの位仲良くなってるかよく分からない。とりあえずその件についてプリマちゃんに確認を取りたかったんだけど、このザマですよ。ははは。まぁ、どうあっても当日私のする事は変わらない。本来とは違う行動を取ろうと考えている。


「別に、いつも通り過ごすだけですわ。何か特別な事が必要あって?」

「お姉さまはドレスどうするんですか?」

「……………。」

「ソフィー。それは一体?」

「お姉さまは昔からおしゃれに無頓着だから追加が無ければろくなドレスを持っていないはずなんです。今着ている服だってマリアさんが買ってきた服ですよね。」

「ど、ドレスならありますわ!失礼な事言わないでもらいたいわ!」

「お嬢様。ドレスとは、これの事ですか。」


マリアが明らかにサイズの合わないドレスを持って立っている。そのドレスは小さな子が着るようなサイズで4、5歳ぐらいが着るものだ。


「…マリア。何故あなたがそれを持っているの?」

「話の流れから必要になるかと思い、お嬢様の部屋から拝借してきました。」


マリアーーーーー!!!なんてことをーーーーー!!!


「私は両親が頑張って買ってくれるって話になって、お姉さまは絶対気にしないなぁと思ってたんですけど、当たりみたいですね。」

「ここここれから買えばいいだけですわ!」

「お言葉ですがお嬢様。現在の資金では食料を買う事すらままならないのにドレスを買える余裕があるとお思いですか?」

「…はぁ。…別にドレスでなくてもいいですわ。制服で十分ですわよ。」

「「「は!?」」」


もういいや。買えないし。別に制服で壁の花してれば目立たないでしょ。なんか男性陣がレン以外目を見開いてこっち見てるけど。何か問題あるかね?レンは机に顔伏せたまま机叩いてるけど、レンそれ絶対笑ってるでしょ。腹立つなぁ~この~。


「お前本気で言っているのか?」

「何がですの?」

「本気で制服で出るつもりなのか?パーティーに?」

「別に?いいじゃありませんの。何か問題がある訳でも無いでしょう?」

「いいわけあるか!!大問題だ!!」


王子が大きな声を出すから耳を塞ぐ。うるさいなぁもう。


「いいか!?お前がドレスじゃ無かったら俺の印象が悪くなるんだ!ドレスで来い!」

「…無い袖は振れない。という言葉をご存じでしょうか。」

「なんだそれは。」

「お金が無いんだからどうしようもないという事ですわ。」

「お前公爵家の娘だろう!!自分で準備出来ないなら他から借りるとか…」

「無い物は無いんですの!!いい加減にしてくださる!?」


聞いていれば次から次へと人の気にしている事を掘り出して!どれだけデリカシーが無いの!?


「…お帰り下さい。」

「は?」

「あなた達全員お帰りなさい!!不愉快ですわ!!」


人の苦労も知らないで好き勝手言って!これ以上このまま居たらもっと突っかかってしまうかもしれない。そう思った私は後ろから聞こえる声も無視して急いで部屋から出て自分の部屋のベッドに入り込む。ベッドは私の体温で暖かくなっていくけど私の心は冷たくなっていく一方だった。知ってはいた。私は公爵令嬢で周りから裕福な暮らしをしていると思われている事。友達もさぞ多いのだろうと思われている事。でもいざ正面から言われてみると深々と心に突き刺さる。王子の言葉は最もだろう。他人の話だけで理解するのだから。これからもそれは続く、いや、続けて行かなくてはならない。これが私の選んだ道。体の全身が、心が、たとえ茨に包まれた森だとしても。


「…頑張ろ。」


昼なのにも関わらず疲れ果てた私はそのまま眠りに落ちていく。あーあ。楽しいお話、出来ると思ったのになぁ。

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