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悪役っぽく

さて後の問題は、今部屋にいる二人にも私が悪役であると勘違いしてくれる方向で説明しないといけないんだけど、どう説明しようかな。


「お待たせしましたわ。話はまとまりましたので先程のお話はお気になさらず。」


二人はそのまま座って待っていたようだ。


「お姉さまとソーラ様は婚約破棄してしまうのですか?」

「いいえ?しませんわよ?せっかく王子の婚約者になれたのですもの。する訳が無いではありませんか。このままでいれば私はこの国の王妃になれるのだもの。素晴らしい事だとは思わない?」

「お姉さま?」

「私にケガをさせた責任として婚約してもらったの。そう簡単に破棄されてたまるものですか!」


私は何かに酔っているかの様に話す。その方が悪役っぽいかなぁと思って。


「そう!私はいずれ王妃になるのよ!あなたに渡す気なんて無いわ!だからあまり馴れ馴れしくしないで下さる?不愉快なのよ!」

「お姉…さま…。」

「貴様それでも誇り高き貴族の令嬢か!!」


ソフィーがとても悲しそうな顔をしているのを見て、私の心がキュッとなる。王子様は怒りを露わにし私に掴みかかって来る。私はそれを躱して言葉を返す。


「ええ!私は誇り高き貴族の令嬢ですわ!あなたには分からないかしら!?貴族の令嬢なんて皆そんなものですわ!親に強いられて王子の婚約者の座を狙う者もいれば、あなたの見た目に惹かれて自分の意志であなたの婚約者の座を狙う者もいる!たとえ上辺が綺麗だとしても、その奥底にはドロッとした感情が渦巻いているものよ!」


そしてその被害を受けるのは…、いけない。少し本音が混ざってしまった。涙が流れない様に我慢する。声も、揺れないように注意して。王子様達も私を見て固まっている。これ以上はちょっと厳しいかも。


「…申し訳ございません。少し興奮してしまったようです。今日の所はお帰り願えるでしょうか。私も、少し休みたいので。」

「分かったよルナ。二人とも、今日はもう帰ろう。」

「お見送り致します。」


レンが二人を促し、マリアは玄関まで三人を見送りに行く。私はそのまま立ったままだった。

しばらくしてマリアが戻ってくる。まだ立ったままだった私の事を見て正面に回り込んで顔を覗き込んでくる。


「お嬢様。仮面を…外して頂いてもよろしいですか?」


マリアに言われて私は仮面を取る。


「やっぱり…そんな我慢をして…。もうここには私しかいません。思いっきり、泣いていいんですよ。」


私はマリアの胸に飛び込み泣いた。あの子には笑顔でいて欲しい。出来る事ならずっと笑っていて欲しい。その笑顔を私が作ってあげたい。そう思っていたのに…。


「私っ!ソフィーにあんな顔させちゃった!あんな冷たい事…言っちゃった…。」

「お嬢様は立派ですよ。ソルウィ様の未来の為に、ご自分を犠牲にしてらっしゃるのですから。ですからどうか、ご自分を責めすぎないで下さい。あなたが倒れたら、誰がソルウィ様を見守ってあげるのです?」

「うぅ、マリアぁ~~。」

「大丈夫ですよ。私がいますから。」


それからもしばらく泣き続けた。気付けば眠っていて起きた時には外は夜、場所はベッドの上だった。起きて厨房に行くと、マリアがもう食事の準備を終わらせていた。


「お嬢様。起きましたか。ちょうど準備が終わった所ですよ。」

「マリア。」

「?どうかしましたか?」


私はさっきと同じ様にマリアに抱き着いた。


「…大好き。」

「…はい。」


その後、二人で食事を取って少し話してから再び眠りについた。

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