いじめの始まり
後日、私があの子に嫌がらせを行ったあの日から噂が広がり、あの子の周りで陰口が囁かれる様になったらしい。このままいくと害を与え始めるのも時間の問題だ。そう思った私はある日早めに登校しました。あの子の周りに細工を施す為に。
さて、私は月属性の魔法が使えると同時に属性魔法の一つ、闇魔法を使う事もできる。実はこの属性は珍しいものであり、使える人はかなり少ない。ゲーム上でもルナミリア以外は居なかったはず。ちなみに対極にある光属性も同じである。そして闇魔法で何ができるかというと結構色々できる。影に潜り込んだり、暗闇に紛れるなど、犯罪まがいの事が簡単にできるレベルで色々できる。私が行おうとしている事も一種の犯罪になるだろうか?まぁ気付かれないだろうし大丈夫だと思う。
「教室に廊下、トイレ、実験場や運動場、あのベンチ周りもしっかりとね。」
周りに人が居ない事を確認しながら作業を進める。今私は学園の所々に魔法陣を設置している。これは前世でいう防犯カメラで、魔法を置いて設定すれば任意で音、視界を共有できる。それにさらに設定を施してあの子のいる場所はすぐ分かるようにしてなお危険が迫れば反応できるようにする。そして最後に魔法陣に月魔法をかけて隠せば完璧。同じ闇魔法使いが居なければ気付かれる事も無いと思う。…こうしてみると本当にできる事恐ろしいなぁ。ゲームのルナミリアも闇魔法の勉強を本格的にしていたらもっと恐ろしい存在になっていたかもしれない。
「こんな所かな。」
とりあえずありとあらゆる場所に設置した。これで少しでもあの子の危機に気付ければいいけれど。…そろそろ教師の増えて生徒も登校してくる頃だろうし教室に向かおう。
「………。」
現在私は教室で授業の予習をしています。点数はしっかり取らないと、補習とか受けることになったら大問題なので。しかし勉強している最中に頭の中でビーと警告音が響き始めました。今日設置したばっかりなのに…。場所は学園入り口で一つの貴族グループがあの子を囲んで詰め寄っているみたい。私は自分の姿が小さな黒猫に見える様にして現場に向かいました。
「あんた庶民のくせに生意気なのよ!ハイスカイ様の近くにいつもうろうろと!」
「別に私は…」
「目障りなのよ!庶民のくせに王子様と仲良くできるとでも思ってるの?」
「そんな事…」
…ずっと責め立てられてるみたい。でも私が助けに向かう訳にはいかない。今のところ手は出されていないみたいだけれど警告がなるぐらいの敵意が存在している以上油断はできない。準備だけはしておこう。
「あんたなんてこの学園に居る必要性無いのにね!」
「そうよそうよ!さっさと田舎にでも帰りなさいよ!」
「…いいえ。私はこの学園を辞めるつもりはありません。」
「は?なにあんた?対抗しようっていうの?」
「別に私は自分の事凄い人間だなんて思っていません。」
「そ、そんなの当然でしょう?所詮庶民の出なんだから。」
「では貴族のあなた方は特別な人間だとでも?」
「そ、そうよ。」
「ではあなた方が自慢できる事はなんですか?」
「それはもちろん貴族である事よ!」
「貴族というのは所詮肩書きに過ぎません。自分の事をしっかり見た事はありますか?今のあなたは親に泣きつく幼子と同レベルですよ。」
「このっ!言わせておけば!」
あの子いつの間にあんなに口論できるようになったのかしら。っといけないいけない。手を振り上げ始めたし、マリア直伝ストレートスロー!
私は手に持っていた石ころを月魔法で白い鳥に見える様にしてからマリアから鍛えられた力で真っ直ぐ投げた。白い鳥は真っ直ぐあの子と貴族グループの間を通り反対側の茂みに消えて行った。
「な、何!?今の!鳥!?」
「………。」
その場全員がこちらの方を向くが私は茂みの裏に居て猫の姿も見えない為、誰も理解ができず止まっている。そしてそこに…
「君は…何をしている。」
その声にあの子は振り返って驚いた顔をし、他の貴族令嬢達は顔が青ざめた。
「これはどういう状況だ?説明してもらおう。」
「ハイスカイ様!こ、これはですね…そう!ちょっとお話していただけですわ!」
「ふむ。内容は?」
「て、天気の話など…」
「それは本当か?ソフィー。」
「いえ、彼女達は私に不満があった為伝えに来てくれたそうです。」
「そうか。…何故嘘をついた?」
「ひっ。じゅ、授業の準備がありますので失礼します!」
貴族令嬢達はみんな急いで校舎へと向かっていった。それにしても驚いた。いつの間に愛称で呼ばれる程仲良くなっていたのだろう。そしてあの子のあの雰囲気…私は知らない。会わなくなってからあの子はどんな生活を送っていたのだろう。




