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進む為の嫌がらせ

マリアと計画を練り直してから数日後、今後の準備も色々整えて遂に実行する日が来ました。実行時間は必ずあの子が一人になる昼休み。ゲーム内と違いが無ければあの子は校舎裏のポツンとあるベンチで一人黙々とサンドイッチやらを食べているはず。そこに私が出て嫌がらせをすれば助けが来るはず。詳しい日にちまでは覚えてないけど別に多少ずれてても問題は無いと思う。あのゲーム好感度上げるのは人付き合い初心者の私ですら簡単だったから。


昼休み。あの子お気に入りのベンチに私は向かう。あっ、いた。一人で浮かない顔をしながらサンドイッチを頬張っている。私が嫌がらせをするまでまだいじめは起きないはずだけど…。クラスに馴染めないからだろうか。とても気持ちは分かる。誰一人として味方のいない教室は肉食獣の檻の中に吊るされた羊のような心境だから。…いけないいけない、私の事は置いといて行動に移さないと。


「あら、あなたこんな所でお食事していますの?流石庶民の出ですわね。感心してしまいますわ。」

「あっ、お姉さま。」

「私はあなたにお姉さま呼びされる関係では無いと思うのだけど?」

「いえ、ルナミリアお姉さまです。私の中でそれは変わる事の無い認識です。いくらお姉さまのお願いであったとしてもそれは覆りません。」


とても真剣な目で私の事を見てくる。正直そう思われていることがとても嬉しくて泣きそうになってしまう。でも私はその気持ちに本音で答えることはできない。


「そう、その心構えがどこまで続くのか見物ね。これから私が言う事を聞いてもそう思っていられるかしら。」

「?」

「私があなたに評価を下してあげるわ。」

「評価、ですか?」

「そう、評価。この学園であなたがどう思われているか私が教えてあげる。」


そう言って私は息を吸って突き放す為に強く言う。


「あなたのような貴族の礼儀も、マナーもできていない者は歓迎されていないわ!!」

「!!」

「あなたのような庶民がこの学園に入るのは稀な事。私達にとって常識であることを欠片もできないというのなら、この学園を…!」


最後の言葉を放つ前に私達以外の声が遮った。


「そこで何をしている!」


その声はあの子の将来の夫候補であり、現在の私の婚約者でもある、ソーラ王子の声だった。

正直ほっとした。この言葉が終わったらもう話すことが無くなるところだった。何も話さず無言でいることになったらどうしようかと思ってた。ソーラ様、ナイスタイミングです。


「ルナミリアか。何をしているんだ。」


王子がジッと睨んでくる。印象は最悪のようですね。…そうでないと困りますが。


「私はただ、そこの娘と少しお話していただけですわ。お話も済みましたので私は失礼しますわ。」


私はそう言って逃げ出す様に立ち去った…ふりをして二人から死角になった瞬間月属性魔法を使用して自分の姿が他の人からは石ころに見えるようにしてからこっそりと顔を出して二人を見守る事にする。

少し遠くて声は聞こえないけれど表情を確認することはできる。見始めた時にはすでに王子はあの子の隣に座っていて、あの子の表情は始めは悲しい顔をしていたけれど、王子に慰められたのか笑顔になっていった。…うん、やっぱり笑顔が一番あの子には似合う。小さい頃はよく見たその笑顔をこれからは近くで見る事が出来ないのだと気付くと私の方が悲しくなった。でも仕方がない。あの子を笑顔にする役目はこれからは王子の役目だ。私はその笑顔が遠い未来まで続くよう私の生を全うしよう。そう何回目か分からない誓いを立てていた時、後ろから何かにぶつかられた。


「うぇ!?ふぎゅう!」


痛い。しゃがんでいたから胸から地面にダイブする形になった。痛い。


「?誰か居るのかい?」


声が聞こえた。とても聞き馴染みのある声が。振り返るとそこには私とあの子のもう一人の幼馴染み、スターレン・フィナイトの姿があった。…なんで彼がここに!?私、とても、パニックです!ってそんな考えしている場合じゃない!早く彼から距離を取らないと…


ポンッ。


えっ?


「どこに行くんです?ルナ?」


バレてる!?えっ!?バレてる!?そんなはずは無い!ぶつかられたぐらいで私の魔法は解除されない。魔法が解除される条件は私の意識が無くなる時ぐらいのはず。


「いい加減姿を現してくれてもいいんじゃないですか。ルナ。」


横から通り抜けようとした私の肩ががっしりと掴まれている。これは…逃げられない。というか魔法は解けては無いっぽい。じゃあ何故私だと?


「ル~ナ~」


ひぃっ!幼馴染みが物凄い顔してる!怖い!冷静に!冷静に!石ころ解除!


「ごきげんようスターレン様。私になにか用でしょうか。」

「やっと姿を見せてくれたね。隠れる魔法なんて初めて見たけど、どうやったんだい?」

「申し訳ございません。それは秘密ですので。」

「そうか。今の君は秘密が多いね。昔一緒に居た時は三人で秘密を共有していたのに。」

「残念ながら私には記憶がありませんので。」

「残念だなぁ。三人でトランプのポーカーをして君だけいつもビリだった事も、扉の角に頭から足まで順番にぶつけた事がある事も忘れているなんて。」


いやぁぁぁ!的確に私の黒歴史を暴いてくるぅぅぅ!


「私には何の事だかさっぱり分かりませんね。午後の授業も近いので失礼します。」


これ以上暴露される前に逃げよう。二人の事をもっと見守りたかったけど戦略的撤退です!実際時間も近いし、私は教室に戻る事にしました。私が立ち去った後の彼の呟きは私には聞き取れませんでした。


「…やっぱり分かりやすいな、ルナは。」

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