4 ぼ、僕はどうしちゃったの?!
「王子!追っ手がかかりません!奴等本当に古の約束は忘れておるようです」
「重畳。だが油断はするな!土地縛りはどこにでも存在する!」
ジーク様の国を出る時、キルリス様のお供の人達が僕とキルリス様に何か魔法を沢山かけていたみたいだった。
「カイ、おいで」
恥ずかしかったけれど、僕はキルリス様に抱っこされて、国を出た。
「にゃっ?!?!」
ばちばちっと何かが弾けた音と警報の音みたいな嫌な音が僕の中で聞こえた。
「カイさん、少し我慢して。ありました、やはり逃走防止の警報です。今、無効化しますね」
5人がかりで何かむにゃむにゃ呟いていたけれど、だんだん音は小さくなって消えて行った。
「静かになりました……」
「ふう、流石古代魔術。てこずりましたよ」
額の汗を拭って魔法使い達はニコニコと笑った。僕のせいで何かさせてしまったのに、なんだかごめんなさい。そう言うと
「平気ですよ!国についたら、沢山遊んでくださいね!」
「へ?」
よく分からないなぁと僕は首を傾げたが、キルリス様まで
「私のカイだからな!ちょっとだけなら遊ばせてやるけど!!」
本当によく分からなかった。
走って走って。そしてキルリス様の国、カッツェに到着した。
「国境に入るぞ!!」
「はい!!」
国境を越える、超える!僕は目を丸くした。
《いらっしゃい!力ある猫よ!まあ!可愛い!》
《おおおー!素晴らしい猫がきた!猫だ!》
《やったの!キルリス!お前は出来る子じゃ!》
ぶわり!と透明な猫達が僕たちを包み込んだ。
「祖霊様!頑張りましたよ!カイは私の婚約者です!」
《素晴らしい!やはりそれくらいの括り付けは我慢して貰わねばのう》
《まあまあ!真っ黒!なんて力の強いケットシーなんでしょ!》
《きゃわゆいのお!!何故ワシには実態がないのじゃーすうすう出来ぬーーー!?》
「にゃっ?!?!」
「あ!キルリス様、カイさんが猫に!」
「こ、これは美猫……!人の時もなかなかの美猫っぷりだったが、ああ……こんな美猫が私の婚約者……た、堪らない!」
「にゃー?!お、お腹の匂いを嗅がないでぇーーー!」
僕は真っ黒で金の目の、尻尾が5本もある猫、ケットシーになっていた。
「5本尾?!?!キルリス、お前はなんと幸福で完璧で素晴らしく仕事が出来る王太子なんだ?!もう王になる??王位譲るし?!」
「いえ、もう少し仕事しててください、父上」
「凄い方をお連れしましたね、キルリス。母としてわたくしも誇らしいです。あ、王にはもう少し仕事はさせますので安心なさい」
キルリス王子のお父様とお母様はとても素敵な方で、
「か、カイさん……触っても?」
「え、あの、はい?というか僕って猫だったんですか?」
こてん?と首を傾げると
「かわ!かわゆ……っ!」
王妃様がひっくり返りかけたので僕は慌てる。そんな僕をひょいっと優しく抱え上げて、キルリス王子は背中を撫でてくれた。
「そうだよ。ずーっと昔にうちの国から誘拐されたケットシーの子猫、それが君だ。カイ」
「僕、猫?!」
「うん。この国の王家は猫が大好きでね?稀にケットシーが降臨してくれるんだ」
話を聞くと、産まれて間もなく誘拐された僕は魔術師に捕まり、言うことを聞くように洗脳され続けていたらしい。そしてジーク様の国に縛り付けられ……指輪と婚約という形で完全に縫いとめられていたんだって。だいぶ昔に連れ去られた僕をこの国の王族はずっとずっと探し続けていてくれたらしい。
「ジーク王子の心が離れ、王宮のカイを縛る結界も薄れ、土地の結界も……やっと守りが緩んで見つけることが出来た。大変だったろう?猫の性格で、人間と同じことを強要されてもこなせるわけがないんだから」
「ぼ、僕が勉強出来なかったのは……」
「猫に何時間も椅子に座らせる事だけでも拷問だ」
「食事のマナーだって」
「猫にスプーンを持たせるなんて悪魔の所業か!」
「歩く時姿勢が悪いって」
「猫としては完璧で美しい姿だよ」
「カイはどこに出しても恥ずかしくない私の婚約者だ」
「ふえぇぇ……!」
僕はやっと僕のことを認めてくれる人に出会う事が出来たんだ。




