3 僕は素敵な王子様の手を取った
「僕……外に出たいです」
「ならば私の婚約者になって我が国へいらしてくださいな?」
ジーク様を見るとニヤニヤ笑いながら
「どことなりと行け」
そう言われて、僕の心は決まった。
「分かりました。キルリス王子の婚約者として、一緒に参ります」
《キルリス》
《うん、キルリス。変更だ。指輪を出せ》
僕の頭の中で声がする。
「キルリス王子、指輪が必要です」
キルリス王子はにこりと満足そうに微笑んだ。
「ジーク王子。カイさんの持ち物に指輪はございませんでしたか?古ぼけてあまり価値のない指輪です。カイさんと共にそれを貰い受けたい」
指輪?ジーク様はふと考え込んだが王妃様が声を上げた。
「宝物庫にあったやたら豪奢な箱じゃ。ジークにしか開けられぬ中に汚い指輪が入った箱の事か?」
すぐさま箱は届けられ、確かにジーク様しかあけられない不思議な箱だった。
「これかね?」
ぱかりと蓋を開けると中に小さな金の猫目石が嵌った汚い指輪が一つ入っていた。
「にゃっ!!」
「おっと!危ない!」
僕の体は反射的にその指輪に手を伸ばした!取れると思った瞬間、キルリス王子に取り上げられた。
《あれさえ!あれさえ!!》
「にゃっ!それを返せ!」
「ダメだよ?カイさん。皆、少しカイさんを押さえて!」
「はっ!」
「にゃーー!離せっ!」
僕はキルリス王子の部下に取り囲まれた。
「カイさん!ほら!小魚ですよ!」
「カイさん!またたびです!」
「カイさーん、ほら、ふわふわのちりんちりんですよー?」
「にゃっ?!」
僕はとにかくキルリス王子のお供達に囲まれてもみくちゃにされ、周りの人から見えなくなっていたようだ。
「さて、ジーク王子。この指輪頂いても?」
「あ、ああ。なんの価値もない汚い指輪だ」
その言葉を聞いてキルリス王子はにんまりと笑ったようでした。
「では遠慮なく。指輪とカイさんは私がいただいて帰りますね。さて、主人は今から私です、カイさん。よろしくお願いします」
すぽっと古臭い指輪を指に嵌め、キルリス王子は満足げに笑いました。
「にゃう……よろしくお願いします、キルリス様……」
キルリス王子のお供の人達から解放された僕は、キルリス王子の側に行きます。
「ふ、良かったな!すぐに次が見つかって。私もこのノイエ・ベルワイト嬢と婚約を結ぼうと思う!」
「嬉しいですわ!ジーク様!」
今まで、ジーク様のお役に立てなくて悲しいと思っていた気持ちがすっかりなくなって、隣にいるキルリス様のことが気になり始めていた。僕って結構薄情なんだろうか??
「では、私はこれで失礼しますね。カイさん、皆、行きましょう」
キルリス王子は僕の手を握って、華やかな王宮を後にしたんだ。衛兵に見送られ、見えなくなると、キルリス王子はテキパキと指示を出し始めた。
「急げ!我が国の高速馬車に乗り換える!国へ着くまで夜通し駆けるぞ!」
「はっ!」
慌ただしく馬車を乗り換え、僕たちは走り出した。そんな揺れる馬車の中でもキルリス王子は僕を撫でたり触ったり
「あまり休憩も出来ませんが我慢してくださいね。バレると大ごとなので。早く国へ入ってしまえば結界である程度守れるからね」
喉の下をこちょこちょされると気持ちが良いことを初めて知った。あの王宮でそんなことしてくれる人は一人も居なかったからね。
僕は叱られないのを良い事に、うっかりキルリス王子の膝の上で眠ってしまった……なんて気持ちの良いお膝なんだろう。ジーク様のお膝にも乗りたかったけど、絶対叱られるから乗ったことはなかったなぁ。
「んんっ!カイは可愛いなぁ……」
キルリス様も僕のことを撫でてくれる。ああ、僕、キルリス様の物になれて良かったぁ。




