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02 旅の途中(2) -ファリスside

「何をしているのですか?」


 この一年、魔力の使い方を教えて来た可愛い弟子が、使用人の服を着て料理を運んでいる。


「おい、こっちも頼む」

「は〜い、ただいま〜」


 見つかった相手は、しまったと言う顔をするが、他の兵士に呼ばれて離れて行く。


 何を考えているんだ! この隊列の兵士達は、比較的規律がしっかりしているが、旅の途中付いて来た使用人に手を出す者もいる。


 そのまま妻に迎える者もいるので、相手もそれを分かっていて、領地を持たない騎士とは言え、それなりの俸禄があるので誘うような娘もいる。


 兵士の中には、食事を運んでいる彼女を明らかに目で追っている者もいて、今すぐ彼女をどこかに連れて行って隠してしまいたい。


「だいたい仮にも公爵夫人の娘が、どうしてこんな所にいるんだ?」


 確かにこの隊列の責任者は、彼女の兄に当たる人だが、その人がまさか妹を使用人として連れて来る訳がない。

 それに辺境伯や公爵夫人が、この事を本当に知らないなどあり得るだろうか?


 だが、ファリスは何も聞かされてはいない。

 いや、辺境伯にミリオネアに行く事になったと報告した時、彼は何と言っていた?


『ノア商会か、キミはミリオネアの事も良く知っているからね。キミに頼んだ仕事はしばらく出来なくなりそうなので、丁度良かったかな。まぁ、色々よろしく頼むよ』


 “キミに頼んだ仕事=カリーナに魔術の使い方を教えること”

 おまけに“色々よろしく頼む”とまで言われている。


 やられた。

 あの人がどう言う人か分かっていたはずなのに、全く気付かず、彼女に会えなくなった事を残念に思っていたら、その人がすぐ近くにいた事になる。


 伯が彼女を一人で送り出すはずも無く、誰かが護衛に付いているなら、自分はその護衛の手の回らない所を助けてやれと言うことなのだろう。


 彼女はその事に気が付いていない様なので、それを彼女に気付かせないように。


 声をかけてしまったのは仕方ない。

 何とか上手く誤魔化すしか無いと思っていると、少し離れた所から心配そうに覗いている人が見える。


「ごちそうさまです」

「もういいのか?」

「はい、少し体を動かして来ます」

「相変わらずだな、やり過ぎるなよ」


 ここ数日、食事の後、剣を振っていたので怪しまれること無く集団から離れる。


 カリーナに近づいて行くと、嬉しそうに手招きする様子が見える。


 くそっ。


 こんな暗がりで呼ばれると、別の意味に取る人間だっていると言うのに、全く分かっていないのだから困ったものだ。


 彼女はウエストリア伯に憧れていて、男性は全て彼の様に女性を守ってくれるような存在だと思っているみたいで、こちらが全く別の感情を抱いているとは考えてもいない。


 少し幼く見えても柔らかく可愛い娘が側にいて、何も感じない男なんていない。

 こっちだって何時迄も見ているだけでいられる訳じゃ無い。


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