15 サウストリア(15) -ミラside
ミラは装うのが大好きだった。
自分に似合う化粧をし、一番似合う髪型に整え、ニッコリと笑う。
目鼻立ちのはっきりしたミラは、それだけで結構美人に見られたし、そんな自分が大好きだった。
仕事中はお仕着せを着る必要があるので、髪型は重要だし、人に与える印象としてとても大切だと思っているので時間もかかる。
だが以前働いていた職場では、そんなミラを快く思わない娘達が多かった。
少しでも綺麗に見られたいし、騎士と結婚したいと思っているのも事実だが、それの何が悪いのかと思う。
そんな事は誰でも思っている事だし、彼らに向かってニッコリ微笑むとの、影からチラチラと除いて頬を染めてみせるのと何が違うと言うのか。
別に彼らの前で、スカートをたくし上げる訳でも無いのに、“ハシタナイ”と言われる意味が分からない。
他人の事を色々言う前に、もっと自分を磨けばいいのにと思う。
髪型を変えるだけで印象は随分変わるし、お仕着せを着ていても姿勢よく歩けば見え方だって違ってくる。
ミラは上背があるので、あまり姿勢がいいとちょっと大きく見えがちで、それだけでも羨ましいと言うのに、、、
結局、女中頭が同輩の娘達と上手くやれないミラをこの商隊に紹介してくれた。
自分のやり方を変えるつもりは無かったので、同じような年齢の娘達にまた何を言われるかと思っていたが、ここではそうならなかった。
毎朝、髪型を整えながらぶつぶつ言っていると、その声に助けられたと言う娘がいた。
「ミラがいて良かったわ」
その子がそう言うと、他の娘も顔を見合わせ同じように頷く。
確かにアン様の合図だけでは起きられない娘もいて、それからはもっと大きな声を出すようになり、それを合図にみんなが起きるようになった。
ミラの髪型を見ては、魔法みたいだと彼女が言うので、是非、彼女の淡い栗色の髪も纏めてあげたいと思うのに、ミラの支度が終わった時には彼女の髪はスッキリと纏められてしまっているので、ついつい他の娘の髪を纏めて鬱憤を晴らす事になる。
その様子をまたじっと見ていては、ミラを魔法使いのようだといい、髪を纏めた娘を見て、よく似合っていて可愛いと褒める。
『貴方の方がずっと可愛いわ』
弟はいても妹のいないミラには本当に可愛らしく、ついつい彼女の頭を撫ぜたくなってしまう。
それに彼女はいつも公平だった。
ミラには年上としての礼は尽くすが媚びるような事は無く、ラナの様にちょっと仕事の遅い娘を助けてもそれを誇示する事もない。
ブルーグレーの瞳の騎士が、彼女を気に入ったと知った時も羨ましいとは思わなかった。
それよりもウブな彼女が嫌な思いをしないか気になったが、彼も奥手なようでその点も彼女の相手にちょうど良いと思えた。
その彼女が公爵令嬢だと言う。
ロアン様やアレス様に引きずられるように連れて行かれた時は、驚きはしたが、何となく納得したのも事実だった。
それよりも残念で仕方がない。
彼女が公爵令嬢なら、もうミラが髪を整えてあげる事はできないだろう。
「ふふっ、また一緒に働いてもいいわよ」
「本当に?」
「もちろん!」
一緒に働く事なら大歓迎だ。
公爵令嬢であっても彼女の態度が変わるとは思えないし、そうすればミラが髪を整えるチャンスも生まれるだろう。
その時はどんな髪型にしようか考えるだけで楽しくなる。




