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12 サウストリア(12) -ダナーside

 人を見る目はあるつもりだった。

 周りの人間の感情にも敏感だと思っている。

 そのおかげで、ティジィスの跡継ぎに選ばれたのだと言っても過言ではない。


 それなのにレオーナが珍しく男の腕の中にいるので、カリーナの様子が変な事に気付くのがちょっと遅れた。


 どうやら彼女は、二人を見て落ち込んでいるみたいだった。

 レオーナに恋人がいてカリーナに落ち込む理由はないので、あの男の方を見て、という事だ。


 カリーナの義兄の友人、仕事仲間で、ノア商会の主。

 レオーナが気に入るくらい確かにいい男だし、何年も前のドロテアの剣術試合の話は、今でも聞かされる。


『さて、どうするかな』


 あの男が姉上を選び、レオーナが名前も知らない男の事を忘れて、彼を選ぶならダナーにとってはいい話だ。


 カリーナは落ち込んでいても、まだそれが何なのか、どうしてなのかも分かっていない様で、それに気付かせない様にすればいい。


 だがレオーナが彼を選ばす、彼もカリーナを手に入れたいと思ったなら、どうすればいいだろう?


 カリーナが大好きだし、彼女に選ばれる為に努力もして来たが、彼女が辛い思いをするのは嫌だし、誰よりも幸せになって欲しい。


 その為にはどうすればいいだろう?


『まぁ、今、分からない事を考えても仕方がないな』


 やっぱり側にいるのが一番いいし、その必要がある。


 あの男がカリーナをどう思っているか知る必要があるし、姉上の為にも、昨日会った男が、あの"風使いのファリス"と同じ奴なのかも確かめる必要がある。


「もう、ダナー!」


 頬を膨らまして怒っているカリーナも、相変わらずで可愛らしい。

 サウストリアにいた時も、ダナーがちょっと困らせると、こうして頬を膨らませた。


「そうだわ、どうしてファーネ様達を叔母上って呼んでいるの?

 レオーナ様とも血縁関係なかったと思うけど、、、間違えてる?」


「レオーナとは一緒に育ったからな、姉みたいなものなんだよ。

 一応、立場的にはレオーナ様って呼ぶべきなんだけど、なんかしっくりこなくてさ、それで姉上と人前では呼んでる」


「ラミーネ様達も?」

レオーナ(あね)の両親だけど、父上、母上ってのも変だろう? ティジィスの親父がいるしさ。

 で、なんとなくね。ファーネ様はさ、昔“ばばさま”って読んだら叩かれたんだぜ、それ以来、ファーネ様も叔母上さ」

 

「ダナーって変わらないわ」

「好きになれそう?」


「もう!」

「ハハッ、ごめん、ごめん。そうだ、アイツの名前教えてよ」

「アイツ?」

「カリーナの先生」


「、、、ファリス・ラングロアよ」

「ウエストリアのラングロア家か、、、」


「手合わせしては、いけないって」

「分かってるよ、これから同じ商隊で働かせて貰うからね。少しくらいどんな奴がいるか知っておきたいだけさ」


 何を聞かれるのかと心配そうなカリーナが、安心した顔をする。

 彼女を困らせる必要はない。


 ロートアに行けば、スーの者が誰かいるはずだ。

 二年前、スーの海軍にいた“風使いのファリス”顔を覚えている者も誰か見つかるだろう。


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