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08 サウストリア(8)

 とっても不機嫌な先生が後ろにいるので、庭を歩きながらダナーが耳元で話しかけてくる。


「カリーナ、怒ってる?」

「分かっているなら、どうしてこんな事するの?」


「彼を誘ったのは、薄暗い庭を二人で歩くわけにはいかないからだよ」

「どうして?」


「それは僕が、カリーナに手を出したら困るから」

「何が困るの?」


「困らないの?」

「私だって手くらい出すわよ、ほら」


 ダナーに添えている手を前に出して見せる。


「ふ~ん、なるほどね」

「なぁに?」


「いや、ちょっと色々考えてるとこ」

「いやだわ、もうあんな事しないでね?」

「あんな事?」


「緑蛙を部屋にたくさん放したでしょう? 虫の抜け殻があった時も本当にびっくりしたのよ」

「あぁ、あれか。あの時はいい考えだと思ったんだよ」

「全然、いい考えじゃ無かったわ」


「今度は、ローズの花を部屋いっぱいに贈ろうかな」

「絶対、()めてね」


「あれ? 好きな花だったよね」

「お掃除、大変だもの」


「ひどいなぁ、僕が贈った花、片付けちゃうの?」

「だって緑蛙みたいに部屋に置くんでしょう?」

「信用ないなぁ。じゃぁ、一本だけ」


 そう言って、庭の花を水刃で切り落として渡してくれる。


「これなら飾ってくれる?」

「ずごい、水刃って始めて見たわ、ありがとう、ダナー」

「どういたしまして」


 そのまま庭園のガゼボに連れて行かれ座らされる。


「さてと、ここなら叔母上にも聞こえないからな。

 どうして使用人の服を着て、商隊にいるのか、ちゃんと説明して貰おうかな」


 失敗した。

 こういう時、納得しないとダナーは決して許してくれない。

 おまけに誤魔化しが通じるような人でもない。


 結局、最初から話をさせられ、いつの間にかアレス様の商隊にダナーを同行させる事になっている。


「私が決められる事では無いのよ?」

「うん、分かってる。カリーナは紹介してくれるだけでいいよ」


「ロアン義兄様にまだ知られたくないのに、、、」

「それは大丈夫だよ、あの家の事は僕が良く知っているからさ、忍び込むのもお手のものさ」


「もう、、、」

「仕方ないだろう? カリーナが商隊と一緒に行きたいっていうんだから」


「だからって付いて来なくても」

「せっかく会った幼馴染みと、もう少し一緒にいたいと思うのはダメ?」


「そうじゃないけど」

「それにちょっと役にも立つよ? ほら、花がもう少し欲しいときとかさ」


 そう言って、また近くの花を切って見せ、ウインクしながらカリーナに渡してくれる。


「ね?」


 彼には敵わない。

 二年と言う短い時間だったけど、その間、一番長くカリーナの側にいて、一番困らせたのも彼だったけど、一番笑わせてくれたのも彼だった。


 そう言えば、カリーナが葉っぱの上にちょこんと座っている緑蛙を見て、可愛いと言った事があった。

 そして、部屋にたくさんの緑蛙が放されていたのはその翌日だった。


「ふふっ」

「どうしたの?」

「何でもないの、ちょっと昔の事を思い出しただけ」


 そう言えば、カリーナの嫌がる事をするダナーでは無かった。

 今度、虫の抜け殻の話も聞いてみよう。

 あの頃のダナーが何を思って、虫の抜け殻を贈ってくれたのかちょっと聞いてみたい。


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