07 旅の途中(7) -日常
「もう、どうしてこう上手くいかないのかしら」
カナ達の朝は、だいたいこの声で始まる。
この商隊にいる女性はカナ達だけなので、女中頭のアナ様と一緒に全員が同じ天幕で寝る。
いつ寝ているのか分からないアナ様が、毎朝、起きる時間に手を二回叩いて、起こしてくれるが、若い娘達がその音で目覚めるはずも無く、ミラのよく通る声にいつも助けられる。
器用に髪を纏めている様に見えるが、何かこだわりがあるらしく、彼女がこうして髪を整えている間に、寝ていた者も起きて身支度を整える。
お仕着せに着替え、荷物や夜具をまとめ、天幕の中を片付けて出発の準備をするのだが、自分の髪型に満足したミラは、用意が出来ていない娘の髪や片付けを手伝ったりするので、それを見た他の娘達も何となく周りを助ける様になっていた。
それに自分達が天幕を出た後、それを騎士達が片付けてくれるので、少しでも綺麗にしたいという意識もある。
仕事は食事の用意や片付けが殆どだが、旅の間は、スープとパンそれに焼いた肉くらいで、数十人分の食事と言ってもこちらも人数がいるのだからそれほど大変なものでは無い。
何より同じ年頃の子と過ごす機会の少なかったカリーナにとって、何人かで集まってお喋りしながら野菜を切るだけで面白い。
彼女達は明るくお喋りで、カリーナの知らない事も良く知っている。
それになかなか厳しい目も持っていて、騎士たちの評価も面白い。
ロアンお義兄様やアレス様は忙しくてなかなか会う事も出来ないが、騎士達の様子は使用人でも知ることが出来る。
剣の手合わせを覗き見したり、食事の道具を片付ける時にはどうしても彼らと話す機会があるからで、その中でも相変わらずファリス先生の人気が高いのには驚かされる。
そのファリス先生と話をしているのを見られて心配したが、ミラはそれ以上聞いてくる事はなく、カリーナは毎日を楽しんでいた。
その中で、カリーナはラナと言う娘と何となく一緒にいる事が多くなった。
ちょっとのんびりした彼女をカリーナがよく手伝っていた事もあり、カリーナが望んだと言うより懐かれたのだが、目上の人との付き合いが多かったカリーナはそれさえも嬉しく感じていた。
夜眠る時もラナが隣に来るので、彼女と小さな声で話すことが多い。
「もうすぐメサに着くわね」
「メサ?」
「サウストリアの街よ」
「知っているの?」
「メサは知らないけど、昔、少しだけサウストリアにいた事があるの」
「ふ〜ん」
「懐かしいわ」
「何があるの?」
「花が咲いてるわよ」
「花?」
「とっても、、、いっぱいの花」
本当に懐かしい。
よくお母様の目を盗んで、花摘みの手伝いをさせて貰った。
ロートアに行くなら、ミュールの街には行かないがそれでも花は咲いているだろう。
ふふっ、ローズやモラの花が一面に咲いている様子を見たら、きっとみんな大騒ぎして喜ぶわ。




