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第89話 作戦、始動!!


「ついに、始まるわね。アベル抜きの戦闘かぁ……ちょっと不安ね」


 ティナが少し緊張した面持ちで口を開く。


「はは、しっかり僕を守ってよ、ティナ」


 アベルが少しいたずらっぽい笑みを浮かべながら、ティナを茶化す。


「アベル君は余裕だねぇ。僕も、可愛い弟子のために体を張らないとねぇ!」


 ガイアスがニヤっと笑いながら、アベルに目をやる。


「師匠に守ってもらうなんて、本当に久しぶりですね。頼もしいです」


 アベル達は今、《ことわりの地下神殿》近くの荒野にいる。辺りには大きな岩がぽつぽつと散在している。足元はむき出しの赤土が広がり、草木はほとんど生えていない。まるで生き物の存在を感じられない荒れ地が続く。だが、その風景とは裏腹に、アベル達はとても和やかな雰囲気だ。


「そろそろ、作戦の時間だ。ダンジョンの防護結界前まで進もう」


 アベルの言葉に、ガイアスとティナが頷く。そして、ゆっくりと歩きだす。500メートルほど歩くアベル達。そして、アベルの目の前には、青く透明な巨大な壁が広がる。敵の防護結界だ。その結界のすぐ先、手を伸ばせば届きそうな距離に、黒い箱のようなものがある。恐らく、これが防護結界を制御している魔道装置だ。


 ガイアスが右手に持つ黒い棒状の物体に向かって、話しかける。他の3パーティーと連絡を取るための《テレフォン》だ。


「皆さん、準備は宜しいですかな?」


「OKですわ!」「いつでも大丈夫です!」「準備できてますよぉ」


 セシリア、アンナ、匿名ヒーラーの3人が同時に返事をする。全員、準備万端のようだ。


 今回の作戦では、結界内の4つの魔道装置を同時に無効化する必要がある。そのため、ダンジョンを東西南北に囲むように配置された魔道装置に対して、ティナ、セシリア、アンナ、匿名ヒーラーをそれぞれ配置している。また、それぞれのパーティーには、Sランク及びAランクの冒険者を3~40人程度配備し、大きめのパーティーを組んでいる。


「それでは、作戦開始!!」


 ガイアスの掛け声とともに、ティナが《アダプテーション》を発動する。ティナの周りに空気の層が現れ、そのまま防護結界に近づいていく。


バチ!!


 鋭い音を立てながら、ティナの《アダプテーション》が防護結界に接触する。ティナの周りを、強力な魔力の流れが包み込む。


「く! かなり強いわね!! ゆっくりと安定させて……ふう」


 どうやら、上手くいったようだ。ティナの《アダプテーション》は防護結界に融合し、うまく制御できているようだ。


「ガイアスさーん! 結界に穴開けましたよ! 《ジャミング》を発動しまーす!」


 ティナが懐から黒い呪符のような装置を取り出す。バズお手製の《ジャミング》魔道具だ。ティナが念じると、黒い呪符が赤く光り輝く。すると、鈍く青い光りを発していた黒い魔道装置の光が失われる。どうやら、魔道装置の無効化に成功したようだ。


「こちらガイアス、魔道装置の無力化に成功。他の状況は?」


「こちらも無力化完了ですわ!」


「私の方もバッチリです!」


「ちょ、ちょっと待ってよぉ。今がんばってるから! ……ふう、やっと安定したぁ! 今、《ジャミング》を起動しま~す!」


 その直後、シュン!! と言う音と共に、目の前の青い壁が消える。結界の解除に成功したようだ。


「突入開始!! 冒険者たちは前へ!! 《理の地下神殿》入口まで、一気に駆け抜ける!!」


 ガイアスの号令に、ウオォォ!! という雄たけびが沸き上がる。それと同時に、前方からモンスターの群れが出現する。結界周りに数百匹のモンスターが集結しているという情報通りだ。


 前方にいるのは、グレーター・キマイラにクァール、アーク・オーガ。B級上位~A級モンスターばかり。思ったより強力な顔ぶれだ。だが、こちらのパーティーも少数精鋭。士気も高い。大きな唸り声と共に、モンスターと冒険者たちの攻防が始まる。


 そんな乱戦の中、アベル、ティナ、ガイアスの3人は戦線を離れ、一気に数百メートル先のダンジョン入り口へと駆けていく。アベル達の体力を温存するため、地表の敵は集結した冒険者たちに任せるというガイアスの作戦だ。


 ガイアスが先陣を切り、周りのモンスターを蹴散らしながら一直線に《理の地下神殿》へと進んでいく。そのまま全力疾走で戦地を駆け巡り、なんとか神殿入口へとたどり着く3人。


「はあ、はあ。やっと、着いたわね」


 ティナが息を切らしながら、ニコッと笑う。ティナの様子を横目で見ながら、アベルが《索敵》を発動する。


「――ここからが本番だ。今のところ、近くに敵はいないよ」


 アベルの言葉を聞いて、ティナが安心したような表情を浮かべる。


「あ、《索敵》は使えるんだ! 良かったぁー」


「《索敵》も《魔力強化》も《筋力強化》も使えるよ。援護は任せて!」


「頼もしいねぇ! そう言えば、アベル君の援護スキルを見るのは初めてだねぇ。楽しみにしてるよ」


 最終決戦とは思えないほど和やかな雰囲気を醸しながら、3人はダンジョンの中へと消えていった。


お読みいただき、ありがとうございます。

次回、《理の地下神殿》上層の探索です!



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― 新着の感想 ―
[良い点] 使えるのはその三つか、十分十分。 [一言] 避けては通れないという点を除けばただの通過点ではある。 でもスムーズに進めるのは前準備が万全だったからだな。
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