表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

75/101

第73話 帰還、そして大聖女・セシリアの下へ


 その後、アベル達は魔道具を操作して中身をさんざん調べてみたが、これ以上有用な情報は見つからなかった。文書は全て暗号化されており、解読不可。映像も、偶然見ることが出来た『第12回・最終決戦の記録』以外は再生することが出来なかった。


 アベル達は隠し部屋を出て、アイアン・ベヒーモスと闘った大広間に戻る。そして、マップに記してある海底遺跡の出口へと歩いていく。数歩歩いたところで、ティナがポンっと手を叩き、声を上げる。


「そう言えば、このダンジョン『踏破』にならないわね。もっと深い階層があるのかな?」


 実は、アベルも同じ疑問を持っていた。《ミラージュの塔》は、最上階のボスを倒した瞬間ダンジョン化が解除された。いわゆる、『踏破した状態』になった。だが、Sランクダンジョン・《グリニッド海底遺跡》はボスを倒したにも関わらず、『踏破した状態』にならない。


「いや、《索敵》をしてみたけど、これより深い階層はないみたいなんだ。ダンジョンは、これで終わりだ」


「え? じゃあ、なんで『踏破』したことにならないの?」


「分からない。Sランクダンジョンは、やっぱり特別な存在なのかもしれない」


 アベルは、アンナの言葉を思い出す。――《ミラージュの塔》をSランク指定するように国王に依頼したが、何度申請しても却下された――確か、そう言ってたはずだ。Sランクダンジョンは、天然型でも踏破型でもない、全く異なるダンジョンなのかもしれない。


「まあ、今考えても仕方がないわね。とりあえず、帰りましょうか。」


 アベル達は、大部屋の反対側へと歩いていく。壁際に扉があり、そこを開けると小部屋へと繋がっている。その小部屋の端に、赤色に光る球体がある。海底遺跡の入り口にあったものと同じものだ。


「これが出口ね。《アダプテーション》」


 アベル達の体の周りに空気の層が出来たのを確認したあと、アベル達は目の前にある球体に触れる。その瞬間、ブンッという音とともにアベル達の体が消える。


 気付くと、海底の中。どうやら、グリニッド海底遺跡の外に出たみたいだ。そのまま海面へと浮上していき、《フロート》で空中へと浮かび上がる。


「キュウ!!」


 ラドが《テレポート》を唱える。アベル達一行はすさまじいスピードで空を飛び、1分ほどで王都・セイントベル入口に着地する。


「王都まで帰ってきたね。それじゃ、早速セシリア様が行方不明になった神殿にでかけようか」


「えーっと、お母様のいる神殿って、王都の西側だったっけ?」


 ティナの質問に、アベルがコクっとうなずきながら答える。


「確か、アンナさんはそう言ってたね。詳しい行き方を聞こうか。ラド、お願い」


「キュウ!!」


 ラドが《コミュニケーション》を詠唱する。ヴンっという音共に、ウィンドウが現れる。映っているのは、今まさに自宅で昼ごはんのパスタをほうばっている最中のアンナの顔だ。


「んん!! ティ、ティナお嬢様!?」


 アンナが驚きのあまり、ケホケホとむせている。まあ、突然目の前に通信用のウィンドウが現れれば、当然な反応だ。


「あ! 食事中のところ、ごめんなさい! アンナさん!!」


 ティナがアンナに向かって頭を下げる。


「い、いえ! 大丈夫です。はあ、それにしても、入浴中とかじゃなくてよかったぁ……」


 確かに、今後何らかの事故が起こりかねない。《コミュニケーション》については、映像をオフにしたり、音声を一方通行にするなどの改良が必要だ。後でラドと相談してみよう。


「すみません、アンナさん。配慮不足でした」


「いえ、大丈夫ですよ、アベルくん。それで、何の用ですか?」


「えっと、お母様のいる神殿への行き方を教えてもらえませんか?」


 ティナの言葉に、アンナは驚いた表情を浮かべる。


「あ! もう《グリニッド海底遺跡》の探索は終わったんですか?」


「はい! 『解牢かいろうの錠』も手に入れましたよ!」


「さすがティナお嬢様です!」


 ティナと言葉を交わしながら、アンナがごそごそと引き出しの中を漁る。


「えーっと、王都西の神殿へは、馬車で2時間。ハートウッドの森の前で降りてください。そこからは、徒歩でハートウッドの森を西に3時間進んでいけば、神殿に着きます」


 アンナがマップを見せながら、アベル達に行き方を伝える。ティナはアンナのマップを手元のノートに書き写している。


「OK! ありがと、アンナさん! それで、いつ出発する?」


「今日は一旦宿で休んで、明日の早朝に出発しようか」


「了解!」「キュ!」


お読みいただき、ありがとうございます。

次回、王都西の神殿の探索です!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ダンジョンに関してはまだ未知の部分が多いって事ね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ