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第66話 Sランクダンジョン《グリニッド海底遺跡》

「アンナさん、『解牢かいろうの錠』がある《グリニッド海底遺跡》ってどこにあるんですか?」


 ティナの目の前にあるのは、空中に浮かぶ窓のような四角い枠。その枠に向かって、ティナは話かけている。枠の中にはマンチェストルにいるはずのアンナの姿。


「王都の東、グリニッド海の中ですね。王都からですと、馬車で3時間くらいの場所です。その遺跡の第二階層にあるみたいですよ」


 アンナがティナの質問に答える。アンナはいつものギルド職員服ではなく、私服だ。背景にはベッドが移り、どうやら自室からアベル達と話をしているようだ。


 今、アベル達が使っているのは、連携スキル《コミュニケーション》。離れた場所にいる人物と映像・音声をやり取りできる便利なスキルだ。王都へ旅立つ前、ギルダの屋敷に挨拶に行くと、『今後必要になるから』と《テレフォン》の黒魔石を譲ってくれた。テレフォンは離れた場所と音声をやり取りするスキルだが、《魔力強化》との連携スキルで、映像まで通信できるようになった。


「あ! 地図で詳しく説明しますね。えーっと、王都の東口からグリニッド海岸まで馬車で移動します。そこから、海上を東に約10キロほど行ったところに《グリニッド海底遺跡》があります」


 アンナが机の中からマップを取り出し、説明を加える。やはり映像を見ながらの方が情報のやり取りがスムーズだ。コミュニケーション、便利なスキルだ。


「よくここまで調べられましたね。Sランクダンジョンの情報なんて、ほとんどないはずなんですけど……」


 アベルが首をひねり、アンナに質問する。


「ギルドのデータベースに、セシリア様がグリニッド海底遺跡を探索したという記録があったんです。それで、セシリア様の書庫を漁ってみたら、冒険記録が見つかって。『解牢かいろうの錠』が第二階層にあることもそこに書かれてました」


 大聖女セシリアは、ティナの母親で、先代勇者のパーティーメンバーだった。アンナはギルド職員かつティナの同門なので、その情報網をうまく活用できたわけだ。


「アンナさん、お手柄ですね! ……でも、海底までどうやって行けばいいのかな?」


「セシリア様は、《アダプテーション》で海底まで潜ったって書いてましたよ」


「なるほど! ってことは、パーティーに聖女がいないとダンジョンにはたどり着けないってわけですね」


 ティナが得意気な表情でウンウンとうなずいている。


「ダンジョン内のマップの情報とかはありましたか?」


 アベルが問いかけると、アンナがポンッと手を叩く。


「ああ! ありました! セシリア様の冒険記録にマップが載ってました。ちょっと待って下さいね」


 アンナがそう言いながら、ゴソゴソと机の中を漁る。


「はい! これです! 第二階層までのマップです。それより深い階層のマップは無かったので、第二階層で探索をやめたみたいですね」


 アンナがアベルたちにも見えるようにマップを広げる。ティナがノートを取り出し、マップを書き写している。


「マップは第二階層までで十分です! 解牢かいろうの錠を手に入れるのが目的ですから! ありがとうございます!」


 ティナが元気な声でアンナに礼を言う。もうマップを書き終えたようだ。


「色々と情報、ありがとうございます。とても助かります! それじゃ、行ってきます!」


「キュ!」


 アベルとラドもアンナに挨拶する。


「アベルくん、ラド。ティナお嬢様を宜しくお願いします。皆さん、お気をつけて」


 アンナが少し心配そうにそう言う。相手はSランクダンジョン。気を引き締めて行かなければならない。


◇◆◇◆


「そう言えば、なんで王都のギルドには登録しなかったの?」


 馬車に揺れながら、ティナが不意にアベルに問いかける。


「国王の反応がちょっと気になってね。信頼できる人以外には情報を漏らさない方が良いと思ったんだ」

 

 アベル達は、《グリニッド海底遺跡》を探索する旨を王都のギルドに報告していない。理由は、謁見の場での国王の反応が気がかりだからだ。真実の鏡の存在をなぜ知っているのか? そして、そこに何が映っていたのかをなぜ気にするのか? 何より、王都に来てからラドの様子が少し変だ。謁見の場でも、常に周りを警戒している雰囲気があった。王都のギルドにアベルの動向を報告すると、それが国王まで伝わってしまうリスクがある。アベルはそれを懸念していた。


「確かに、国王の反応を見る限り、注意した方が良さそうね。ま、私たちにはアンナさんがいるから、サポートは十分だしね」


 ティナがアベルに同意する。ラドも尻尾をピンと立て、ティナの腕にスリスリしている。ラドも同じ意見のようだ。


「あ! 着いたみたいだよ!」


 アベルが馬車の窓を開ける。遠くに見える、美しい砂浜。微かに漂う潮の香り。馬車の目的地・グリニッド海岸に着いたようだ。


 アベル達は馬車から降り、海岸に向かって歩き出す。ティナがマップを開く。


「えーっと、ここから東に10キロだったっけ?」


「確か、アンナさんはそう言ってたね。とりあえず、《フロート》で飛んでいこうか」


「キュ!!」


 ラドの鳴き声と共に、3人の体が浮き上がる。そのまま海の上をゆっくりと東へ進んでいく3人。目指すはSランクダンジョン・《グリニッド海底遺跡》だ。


お読みいただき、ありがとうございます。

次回、《グリニッド海底遺跡》発見です!



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― 新着の感想 ―
[良い点] 流石にあんな対応する国王の事信用しろというのは無理だろうね。 何よりラドの事も心配だしアベルの立場からしたら寧ろ当然の判断だな。 [気になる点] 水没したダンジョンなのかな。 [一言] 海…
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