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第48話 第三階層、探索開始


「《ヒールウィンド》」

「キュウ!」


 アベル達の周りを、ピンク色の優しい風が包んでいく。ティナの《ヒール》とラドの《ストーム》の連携スキルだ。これで、アベル達は自動で回復し続ける。仮に敵の奇襲を受けても、すぐに傷を癒してくれる。


「よし、じゃあ、進もうか」


 アベルがそう言った瞬間だった。ラドが大きな声を上げる。


「キュウウ!!」


 ピョンピョンと飛び跳ねながら、右前方を見つめている。アベルとティナもラドの見つめる方向に目を凝らす。そこには、約30m先で草むらに隠れているクァールがこちらを伺っていた。


――クァール。ひょうのような体に、長い髭をもつ獣系モンスターだ。ランクはAで、似たようなタイプのキマイラよりも格上だ。クァールはスキルをもっていないが、とにかく素早いのが特徴だ。性格はとても狡猾。隠れながら冒険者に近づき、間合いに入るや否やすさまじい速度で攻撃を仕掛けてくる。


「うわ! ラド、よく見つけたわねー」


 ティナが驚き、ラドの頭をなでなでする。気持ちよさそうに目を細めるラド。


「じゃ、作戦通り行こうか」


「OK! 《マジックアロー》」「キュ!!」


 ティナが《マジックアロー》を、ラドが《ライトニング・バースト》を詠唱する。連携スキル・《ボルティックアロー》の発動だ。バチバチとスパークを放ちながら、黄色い矢がクロスボウに生成される。


「それじゃ、いくわよ。てぇーい!」

 

 ティナの掛け声とともに、凄まじい速さで矢が放たれる。バチッと言う音とともに、スパークを放ちながら雷属性の矢がクァールに向かって飛んでいく。いや、飛んでいくという表現は正しくない。矢が放たれた瞬間、クァールの額は雷の矢で貫かれていた。目にもとまらぬどころか、目に見えない程の速さ。素早さがウリのクァールですら反応出来ない。


 矢で射抜かれたクァールは、無言のまま後ろに倒れ込む。青白い光を発し、そのまま光の粒となり消えていく。


「やった! 《ボルティックアロー》、結構いい感じじゃな……」


 ティナがガッツポーズをして喜んだ瞬間だった。アベル達の右、左、後方より、3匹のクァールが飛び掛かってくる。どうやら、アベル達は4匹のクァールに囲まれていたようだ。


「キュウ!!」


 事前の作戦通り、ラドが即座に《ライトニング・バースト》を詠唱する。ラドの半径10メートルの範囲に、黄色い強烈なスパークが出現する。飛び掛かってきたクァールたちは、無残にも強烈なスパークに飛び込んでいく。


バリバリバリ!!


 クァールたちに強烈な稲妻が襲い掛かる。ビクビクと痙攣しながら苦悶するクァールたち。真っ黒に焼け焦げ、地面へとドサドサと落ちた後、3匹のクァールは青い光となり消えていった。


「ふぅ、びっくりしたぁ! ラド、ありがとうね!」


 ティナがウィンクをしながらラドにお礼を言う。ラドはどういたしましてと言わんばかりに、モフモフの体をティナの右足にこすりつけてくる。ティナにお礼を言われたことが嬉しいようだ。尻尾がピンと立っている。


 ふと、地面がキラリと光る。魔石が3つ、落ちているようだ。アベルは腰を下ろし、魔石を拾い上げる。


「黄色い魔石だ。また、ティナの武器強化に使えるかもしれない」


 ティナがパァッと嬉しそうな表情を浮かべる。


「やった! 帰ったらバズさんにお願いしないと! で、キマイラの時は『髭』でクロスボウの威力が増したわよね。クァールの髭も、もしかしたら……」


 ティナがニヤニヤと笑みを浮かべている。どうやら、武器改造はティナのお気に入りのようだ。


「うん、試してみようか。今度クァールが飛び掛かってきたら、僕が髭を斬り落としてみるよ。ラドのライトニング・バーストの詠唱前に斬り落とせば、素材として回収できるかもしれない」


 アベルの言葉に、ティナはニンマリ満足気な顔を浮かべている。


「よし! じゃあ、ちゃっちゃと先に進みましょうか!」


 俄然やる気が出てきたティナの言葉を皮切りに、第三階層の探索を再開する。慎重にフロアの奥へと進んでいくアベル達。途中、12体のクァールに遭遇するも、作戦通り《ボルティックアロー》と《ライトニング・バースト》で難なく敵を殲滅していく。その間、3本の《クァールの髭》の回収に成功する。


 探索を始めて2時間。第三階層最奥まで到達したアベル達だったが、一つ大きな問題に直面していた。


「うーん、見つからないわね。ボスの居場所」


「キュウゥ」


 ティナとラドが疲れた声を上げる。第三階層のボスを見つけられずに立ち往生しているのだ。

 第三階層は、ジャングルのような見た目。通路も無ければ、部屋も無い。あるのは、ツタをまいた木とひざ下ほどの高さの草だけだ。延々と同じような景色が続く。しらみつぶしに第三階層を調査するのは厳しい。


「《索敵》が使えればボスの位置は一発で分かるんだけど……」


 アベルは腕を組みながら考え込む。このまま、《索敵》なしで探索を続行するのは難しい。


「うーん、《ジャミング》について情報を調べてみる? もしかしたら、解除する方法があるかも!」


「そうだね。ギルマスなら、何か知ってるかもしれない。明日、ガイアスさんを訪ねてみようか」


「OK! じゃ、今日は一旦お開きね。バズさんの工房に行って、クロスボウの改造もしなくっちゃ!」


 探索を切り上げ、マンチェストルへと帰っていくアベル達。明日は、クロスボウの改造と《ジャミング》についての情報収集。忙しくなりそうだ。



お読みいただき、ありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 場所が場所だからか一気に進まずコツコツ探索してるな。 [一言] 索敵が出来ない状態での発見って事は素で見つけたのかな。 ラドは目も良いみたいだな。
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