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第44話 第二階層のボス・鉄巨人


 第二階層奥の大広間。天井からは古びた大きなシャンデリアが一つ。床には赤い絨毯が敷かれている。薄暗くがらんとした空間に、目を引く大きな甲冑が3体。


 身長3メートルほどもある巨体。左手には2メートルはある大きな盾。良く磨き込まれていて、まるで鏡のようにキラキラと光り輝いている。右手には大剣と呼んでもいいほど大きなロングソード。とても人間が振える大きさではない。

 流石に第二階層のボスだけあり、リビングアーマーとは威圧感が違う。


「第一階層のガーディアン・ドラゴンは強敵だった。ここは注意していこう。今度のボスは、僕も初めて見る敵だ」


「ええ、分かったわ」「キュウ!」


 ティナとラドがアベルの言葉に返事をする。まずは戦略を立てる前に、相手の情報を収集する必要がある。そんなことをアベルが考えていると、ティナが何かを思いついたように笑みを浮かべながら口を開く。


「ねえ、アベル。ここから《パワーショット》で狙えるんじゃない? あの、鉄の巨人」


 アベル達は今、入り口を挟んで広間の外にいる。入口は、幅約1.5メートル、高さ約2メートル。とても巨大な甲冑が通り抜けられる大きさではない。しかも、敵は部屋の外にいるアベル達に気付いていない様子だ。部屋の外にいれば、ボスの攻撃対象外なのかもしれない。


「面白そうだね。それじゃ、中央奥にいる鉄巨人てっきょじんを狙ってみようか」


 3体の鉄巨人は、向かって左手前、右手前、中央奥に位置しており、まるで3角形を作るかのようなフォーメーションを取っている。まずは部屋の外から狙いやすい、中央奥の敵に攻撃を仕掛けてみる。


「連携スキル・《パワーショット》」


 ティナのクロスボウに膨大な魔力が集まっていく。鉄巨人はピクリとも動かない。やはり部屋の外にいるアベル達には攻撃しないようだ。5秒間魔力をクロスボウに集結させ、パワーショットの準備が完了する。


「じゃあ、いっくわよー!! てぇーい!」


 青く光る巨大な矢が鉄巨人に向かって放たれる。飛来する大きな青い光に気付き、防御態勢を取ろうとする鉄巨人であったが、回避は間に合わない。そのまま青い光は鉄巨人の上半身を消し飛ばす。


「やった! このまま残り2体もやっつけちゃおう!」


「……いや、ダメみたいだ」


 ティナが喜びのガッツポーズを取った瞬間だった。残り2体の鉄巨人が直立したまま、白く輝く。その光は上半身が消し飛んだ鉄巨人の上へと集まっていき、白く光る玉となって宙を漂う。光る玉はカッと強烈な光を発したかと思うと、次の瞬間、何事も無かったかのように倒したはずの鉄巨人が復活していた。


「うそ! 復活しちゃった……」


 ティナがあっけに取られていると、3体の鉄巨人が突如右手に持った剣を高く突き上げる。


バリバリバリ!!


 その刹那、部屋全体が黄色く輝き、凄まじいスパークが包み込む。耳が痛くなるほどの轟音に、目を開くこともできないまぶしい閃光。


「ぐっ!! これはヤバいわね」


 ティナがまぶしそうに眼を細めながらそう言う。


「うん。強烈な全体カウンターだ。喰らったら一巻の終わりだね」


 アベルが腕を組み、考え込む。思ったより厄介な相手だ。色々と試行錯誤をしながら、戦略を練る必要がある。


「よし、一旦作戦会議だ。まずは情報をまとめよう」


 アベルが仕切り直す。


「鉄巨人が一体倒されると、残った2体が蘇生魔法を詠唱するみたいだね。恐らく、3体同時に倒す必要がある」


 アベルの言葉に、ティナが反応する。


「2対同時に倒せばOKって可能性は? 蘇生魔法を詠唱するには最低2体必要って可能性もあるんじゃない?」


 ティナの言葉に、アベルが頷く。


「確かに、その可能性もある。だけど、今回は3体同時に倒す前提で作戦を練った方がいい。万が一、残った1体で蘇生魔法を詠唱されたら、あの強烈なカウンターを食らって一巻の終わりだからね。1Fのボス部屋みたいに部屋の中に閉じ込められたら、それこそ逃げ場がない」


 ティナが腕を組み、渋い表情を浮かべる。


「確かに、パワーショットは壁に当たって消えちゃったわね。閉じ込められたら、脱出手段がないわ」


 鉄巨人を消し去った光の矢は、広間の壁に当たった瞬間に消失してしまった。どうやら、部屋の壁には魔法攻撃を無効化する特性があるようだ。


 アベルは、顎に手を当てて作戦の深堀りを始める。鉄巨人を3体同時に倒さなければならないというところまでは整理出来た。次は、どうやって倒すかだ。


「ティナはパワーショットで一体を倒せることは証明済みだよね。ラドは、鉄巨人を倒せそうかい?」


 アベルの言葉に、ラドは自信満々に「キュウ!」と鳴く。リビングアーマーを紙切れのように八つ裂きにしていたラドだ。鉄巨人も、似たようなものだろう。


「じゃあ、問題は僕か――2、3日、修行しないとな」


 アベルはボソッとつぶやく。やることは見えた。未完成のあの技を、確実に鉄巨人を倒せるレベルまで向上させる必要がある。


 ヒントは《居合》。翌日からの3日間、ガイアスからのアドバイスをもとに、新技を完全に習得すべく修行に励むアベルであった。


お読みいただき、ありがとうございます。

次回、第二階層ボス、決戦です!


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― 新着の感想 ―
[良い点] こういう時意地になって粘ろうとしないでちゃんと撤退できる、いい判断だ。 [一言] 三対同時に攻撃して倒さないと勝てないか。 同時切り安綱。
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