表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/101

第37話 ティナ、運よく新連携スキルを発動させてしまう


「まずい!!」


 アベルはティナとラドに向かって、傷ついた体を投げ出す。二人をかばうように覆いかぶさるアベル。その刹那、再びガーディアン・ドラゴンがストームを発動する。


「グゥッ!!」「きゃ!!」


 強烈な石つぶてが辺りを飛び交い、再びアベル達に襲い掛かる。アベルの頭や背中には多数の石がたたきつけられていく。その衝撃で、再び5メートルほどアベル達は吹き飛ばされる。

 アベルが体を投げ出したおかげで、ティナとラドがダメージを免れる。だが、3人とも満足に動ける怪我ではない。


「くっ、アベル、ありがと」


 ティナの声が弱弱しい。かなり体力が減っているようだ。アベルは苦痛に耐えながら立ち上がる。ガーディアン・ドラゴンは再び《ストーム》の発動準備に入っている。――戦況はかなり悪い。回復の切り札である《ヒール》は、一人ずつしか回復できないからだ。いくらティナが連続で《ヒール》を詠唱出来ると言っても、3人全員が負傷する《ストーム》に対しては、回復が間に合わない。

 最早、なすすべがない。それが、アベルの判断だ。


「さ、作戦変更だ……ティナとラドは部屋の隅で《パワーショット》を発動。壁を壊したら、逃げてくれ」


「アベルはどうするの!?」


「僕は……ガーディアン・ドラゴンを食い止める。……命に代えても!」


「な!! バカなこと言わないでよ!!」


 アベルの提案に、ティナは強い口調で抗議する。


「あんた、やっぱり何も分かってない!! 一人で全部背負い込まないでよ! 仲間を、私たちを頼ってよ!!」


「キュウ!!」


 ラドも傷ついた体を起こし、アベルを真っすぐ見つめ、抗議の声を上げる。ティナがよろよろと立ち上がり、大きな声を上げる。


「こんな傷! 私がいくらでも治してあげるわ! 《ヒール》!!」


「無理だ! 《ヒール》じゃ間に合わな……」


「キュウ!!」


 ティナの《ヒール》に合わせて、ラドが《ストーム》を発動する。ボウッと白く光り輝くラド。アベル達の周りを、ピンク色の優しい風が包んでいく。3人の傷が、一気に癒えていく。


――《ストーム》の効果で、《ヒール》に全体化及び持続効果が付与されました。

――連携スキル《ヒールウインド》が発動します。


「へ!?」


 ティナが、間の抜けた声を上げる。ボス戦での、まさかの連携スキル発動。


「すごい、全員回復してる……」


 アベルが驚きの声を上げた瞬間、ガーディアン・ドラゴンの《ストーム》が発動する。ゴオッという轟音とともに、石の弾丸がアベル達に襲い掛かる。


「いたたたたた!! って、あれ!?」


 ティナが痛みにたまらず声を上げる。だが、その声はさっきまでと違い、余裕がある。


「これ……《ヒール》がかかりっぱなしになってない?」


 アベルが苦痛に顔を歪めつつ、驚きの声を上げる。石つぶてでダメージを受けるや否や、ピンク色の光がたちまちアベル達の傷を回復していく。連携スキル・《ヒールウィンド》には、治癒の持続効果まであるようだ。これなら、ガーディアン・ドラゴンのストームにも耐えられる。


「はは……なんかすごいスキルができちゃったわね。……それで、作戦は何でしたっけ!? アベルさん?」


 ティナがふふんと得意気な表情を浮かべる。回復したラドも、モフモフの毛を膨らませながら胸を張っている。


「ごめん、二人とも……作戦変更。持久戦で行く! ストームに耐えつつ、発動後のスキをついて僕が攻撃する! ティナとラドは回復をお願い!」


「よろしい!」「キュウ!」


 ティナとラドがうんうんと頷きながら納得の表情を浮かべる。ストームの発動が終わるまでひたすら石つぶてに耐える3人。風が収まった瞬間、一足飛びにドラゴンに飛び込み、アベルが流れるような斬撃を加える。ドラゴンの皮膚からウロコが剥がれ落ち、鮮血が噴き出す。再び敵が《ストーム》の発動を始めるとアベルは距離をとり、再び敵の攻撃に耐える。『ヒット&アウェイ』戦法だ。


 その後、10分ほど『ヒット&アウェイ』を繰り返すアベル達。アベルの斬撃は確実にダメージを与えるものの、なかなか致命傷とはならない。


「ティナ、ラド! 大丈夫?」


「ええ! まだまだいけるわ! でも、ちょっと分が悪くなってきたわね」


「キュウ……」


 少しずつ、ティナとラドに疲れが見え始める。一方のガーディアン・ドラゴンは《ストーム》の発動が少しも鈍らない。持久力と言う点で、アベル達が不利なようだ。


 ヒット&アウェイを繰り返しながら、ドラゴンに致命傷を与える方法をアベルは考える。ふと、鍛冶屋のバズの言葉がアベルの脳裏に浮かび上がる。『魔剣士は多くの魔力を刃に宿すことができ、その分剣は強力になる』、確かバズはこう言っていた。つまり、刃に込める魔力を増やせば、威力は増すということだ。それなら――


「《魔力強化》」


 アベルを蒼い光が包み込む。アベルは、()()()()()を向上させるために、自らの魔力を向上させる。


「さあ、勝負だ」


 アベルは口元に笑みを浮かべながら、ガーディアン・ドラゴンに向かって静かに語り掛けるのだった。


お読みいただき、ありがとうございます。

次回、ガーディアン・ドラゴン戦、決着です。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] またラドがあの時みたいになるのかと思ったけど今回はティナもいるからな。 [一言] 少しでも傷が付けれて尚且つダメージレースで最終的に競り勝てるとかならもっと粘れそうだな。 反動で凄い疲れそ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ