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第23話 クロスボウの改造②

再び、アベル視点に戻ります。


~前回のあらすじ~

カルディア平原にてワイバーンに襲われていた商人、ギルダを発見したアベル達。

何とか逃走に成功し、防塞都市マンチェストルへと帰ってきたのだった。


「バズさーん! 魔石持ってきましたよぉ!!」


 ティナが大きく手を振りながら、バズの武器屋へと入っていく。商人のギルダを助けた後、アベル達はそのまま馬車に同乗させてもらい、マンチェストルへと帰ってきた。その日は宿で休息をとり、翌朝バズの武器屋へ来たのだった。


「やるな、嬢ちゃん! それじゃ、早速クロスボウの改造するか!?」


 カウンターに寄りかかりながら、バズがニカッと豪快な笑みを浮かべる。

 バズの姿を捉えるや否や、ラドがシュッとアベルの肩から飛び降りる。タタッと床を駆けていき、カウンターの上によじ登る。そして、バズの腕に体をすり寄せてながら、ゴロゴロと喉を鳴らしている。


「ラドもいらっしゃい!」


 カウンターの上にいるラドを優しくなでるバズ。心なしか表情が緩んでいる。


「こんにちは、バズさん。『キマイラの髭』、手に入れましたよ。それに、魔石を4つ。このうちの3つは、バズさんへのお土産です」


 アベルはそう言いながら、バズにキマイラの髭と魔石を手渡す。


「って、ちょっと待て! 魔石はクロスボウの改造に使うんだろ? 一つで十分だ!」


「だからぁ、お土産って言ってるじゃないですか。魔石3つ、商売に使ってくださいな! もちろん、お代は結構ですよ♪」


 ティナがニカッと笑いながら言う。


「さすがに、タダで貰うわけにゃ……」


「バズさん、貰ってください。……まだまだ、通商が再開するには時間が掛かりそうなんです。昨日も、ギルダさんという商人が僕たちの目の前でワイバーンに襲われていましたから」


「な、ギルダ!? あいつ、大丈夫なのか!?」


 ギルダの名前に驚くバズ。


「はい、なんとか無事でしたけど……知り合いなんですか?」


「ああ、昔からの馴染みでな。……あいつ、ムチャしやがって! 今は危険だから来るなってあれほど……」


 アベルの言葉に、バズはトントンと机を指でたたく。苛立ったような、心配そうな表情を浮かべている。


「アベル坊、嬢ちゃんにラド。ギルダを助けてくれて本当にありがとう。オレからも礼を言わせてくれ」


 バズは急に真剣な面持ちになり、アベル達を真っすぐに見ながら語りだす。


「あと、魔石も本当にありがとうな。やっぱり貰っておくよ。ギルダには、『魔石はなんとか間に合ってるから大丈夫だ』って言っておく。またギルダにムチャされちゃ適わんしな。……お礼はいずれ必ず、10倍にして返してやるよ」


 バズはじっとアベルの目を見つめ、力強い声で話す。その目からは、鍛冶師としての矜持があふれ出ていた。


「どういたしまして、バズさん。お礼、期待してますよ」


 アベルも真剣なまなざしでバズに応える。アベルの目を見るや、バズはニカッと笑みを浮かべる。


「それじゃ、早速商談だ。『キマイラの髭』を使った威力強化と、『キマイラの魔石』を使った連射性能向上だな。占めて、1000ゴールド! 割引はなしだぜ!」


「え、1000ゴールド? バズさん、桁一つ違いません? それじゃ安すぎ……」


 ティナが目を丸くしている。前回、威力強化だけで6000ゴールドしたはずだ。1000ゴールドなんて、いくらなんでも安すぎる。


「いーや、正規料金だ! お前ら、特別のな」


 プイっと後ろを向きながら、バズは言い放つ。アベルはフッと口元に笑みを浮かべる。鍛冶師の矜持なのか、頑固なのか。意外と面倒な性格なんだな、と心の中で呟く。


「それじゃ、バズさん! 強化よろしくお願いします! 1000ゴールドも払うんですから、期待してますよ!」


「へ、アベル坊! 言うじゃねえか! 期待して待ってな! 改造は3時間くらいかかるから、昼過ぎに取りに来な」


 バズはニカっと満面の笑みを浮かべ、早速作業に取り掛かる。


「3時間……ね。アベル、どうする?」


「一旦、ギルドに行こうか。討伐の報告をしとかないと」


 3人はバズの工房を後にし、ギルドへと向かっていった。


◆◇◆◇


「はい、討伐手続き完了です。報酬の2万5000ゴールドをどうぞ! もうすぐ二人ともBランクですねぇ♪」


 アンナはそう言いながら、キマイラ5匹分の報酬を手渡す。Cランクになってからの報酬は、合計で4万4000ゴールド。Bランクへの昇格条件は5万ゴールドなので、ワイバーンを一体討伐すれば、Bランクに昇格決定だ。


「あ! そう言えば、商人のギルダさんから品物が届いてますよ! はい、どうぞ。アベルくん」


 アンナは小さな箱をアベルに手渡す。アベルは箱を開けると、小さな袋が一つと封筒が一通入っていた。アベルは封筒を開け、中の手紙を読む。

 中身は、ワイバーンの襲撃から助けくれた礼と、粗品を渡すので役立てて欲しいという内容だった。


「袋の中身は……っと。え? これ、魔石よね!?」


 ティナが袋を開けると、そこにあったのは黒色に光る魔石だった。アベルは手紙の続きを読む。


「えーっと、『追伸。お礼の品は、マンチェストルの別荘に保管してあった黒魔石です。黒魔石を防具に加工すれば、特殊な効果を付与することも出来ます。きっと皆さんの役に立つでしょう。他にも困ったことがあれば、遠慮なくマンチェストルの別荘を訪ねてください』だってさ」


「ふーん、黒い魔石、ね。バズさんに色々聞きたいことが出てきたわね」


 アベル達3人は、さらなるお土産を手に入れ、もう一度バズの店へと向かうのであった。


お読みいただき、ありがとうございます。

次回は、クロスボウの強化完了と、魔石の情報を少し出します!



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