第11話 アベル一行、レッサードラゴンを軽く蹂躙する
「よし、反撃開始だ! ラド、いくよ!!」
「キュウ!!」
目の前には、3体のレッサードラゴン。ちょうどフレイムを吐き終わった直後で、体が硬直している。このチャンスを逃すアベルとラドではない。
ラドがまず先行する。軽い身のこなしで目の前のレッサードラゴンAの顔面付近に近づく。ドラゴンの両目に向かって、前足で2連撃。目つぶしを食らったレッサードラゴンAは、地面に倒れ、のたうち回る。まずは一体を無力化することに成功する。
アベルは、その左隣にいるレッサードラゴンBに狙いを定め、右手に持つブロンズソードを振り下ろす。狙いは、首。見事に一刀両断し、レッサードラゴンBを倒す。すかさずアベルは、ラドが目つぶしをしたレッサードラゴンAに近づき、剣を振り下ろす。レッサードラゴンAの頭部を突き、2体目を戦闘不能にする。
ラドはと言うと、既に最後の一体、レッサードラゴンCに向かって駆けだしていた。あっという間に距離を縮め、その喉元にかぶりつく。鋭い牙が、レッサードラゴンCの首元に突き刺さる。レッサードラゴンCは最後の力を振り絞り、首を大きく振ってラドを引き離そうとする。しかし、ラドの牙は喉元をしっかりとらえており、ラドを振り払うことはできない。そのまま、ズゥン! とレッサードラゴンCが地面に倒れこみ、絶命する。
目の前の3体を殲滅したアベルとラドは、すかさずティナのもとに戻る。レッサードラゴン1体がティナに迫ってきているからだ。
「ラド!!」
「キュワーー!!」
ラドが《威圧》する。ティナに迫っていたレッサードラゴンの動きが止まる。その瞬間を見逃さず、アベルが一閃。レッサードラゴンを一刀両断する。
「ありがと、アベル! ラド!」
「どういたしまして。それじゃ、残りも片付けようか、ラド!」
「キュウ!」
アベルとラドがレッサードラゴンに襲いかかっていく。フレイムを封じられたレッサードラゴンは、アベル達の敵ではなかった。あっという間にレッサードラゴンを殲滅し、12体の肉片は光り輝く粒となって消えていった。
「ふう、終わったわね」
ティナが安堵した表情を浮かべる。
「キュウゥ」
ラドも、甘えるような鳴き声でアベルに近づいてくる。足に身体をこすりつけた後、定位置の右肩に上り、ゴロゴロとリラックスした鳴き声を上げている。
「色々、整理したいことがあるわ。まず、ここは何なの? レッサードラゴンの巣ってのは聞いたけど」
「ああ。黒曜の洞窟は、実は地下4階まであるんだ。危険すぎて、Bランク以下の冒険者には解放されてないけど。地割れに巻き込まれて1階層落とされるなんて、ついてなかったね」
「ま、まあ、それはいいわ。何とかなったから。それで……」
一呼吸おいて、ティナは続ける。
「さっき、《アダプテーション》が《ウォール》に強化されたわよね」
「《連携スキル》って言ってたよね。ティナは何か知ってる?」
「知らないわ。連携スキルなんて聞いたことないもの」
「そっか。うーん、もしかしたら、《連携スキル》は幻獣使いの能力かもしれないね」
「なんで、そう思ったの?」
「《ウォール》が発動したとき、ラドが白く光ってたんだ。だから、幻獣を介してメンバーのスキルを連携させるのが、《連携スキル》なのかなって思ったんだ」
「なるほどね。アベルが《魔力強化》を唱えたときは、ラドはいつも通りだったわ。私が《アダプテーション》を詠唱した瞬間、ラドが白く光った。辻褄は合うわね」
ティナは、ラドに目をやり、じっと見つめながら、そう言う。
「そして、《連携スキル》が発動すると、詠唱したスキルは、ランクアップした別スキルになるんじゃないかな。だから、《アダプテーション》が《ウォール》になった」
「なるほど。それが正しいとすると、《連携スキル》ってかなり便利ね」
「うん。後で色々と試してみようよ。もしかしたら、もっとすごい連携スキルが見つかるかも」
実際、《ウォール》の効果はすさまじかった。レッサードラゴンのフレイムを完全に防いでいたのだから。ティナは《プロテクション》も持っているし、色々と連携の試し甲斐がある。もしかしたら、掘り出し物の連携スキルもあるかもしれない。
「それと、もう一つやることがあるでしょ?」
「キュウ!!」
ティナの言葉に、ラドが『ありがとう』と言わんばかりにティナに体をすり寄せていく。フカフカの毛をなでるティナ。ほのぼのした光景に、頬を緩ませるアベル。
「そうだね。魔石を探そうか」
アベルは、レッサードラゴン達が倒れていた場所に向かって歩いていく。魔石が落ちていないか、確かめるためだ。12体全て確認したところ、1つだけだが魔石を見つけることができた。
「早速、使ってみる?」
ニヤっと笑いながらアベルとラドを見るティナ。その目は、好奇心に満ち溢れていた。
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次回、更なるチートスキルが発現して怒濤のレベルアップです!