漫才「フラグ」
二人「どうも~よろしくお願いします」
ボケ「よろしくお願いします! よろしくお願いします!」
ツッコミ「どうしたの、今日ずいぶんご機嫌だね」
ボケ「聞いてよ!」
ツッコミ「お、どうした? 落ち着け」
ボケ「俺さ、今日この仕事終わったら、焼肉食べ放題行くんだ……!」
ツッコミ「それ大丈夫?」
ボケ「え?」
ツッコミ「なんか、映画とかで『俺、この戦いが終わったら結婚するんだ』って言って死んじゃうやつみたいになってたけど」
ボケ「え?」
ツッコミ「死亡フラグみたいになってるけど」
ボケ「え、なに、焼肉食べ放題なんて行ったら太るよって言いたいの?」
ツッコミ「その脂肪じゃねえよ」
ボケ「なに、あ、一緒に行きたいの?」
ツッコミ「いや別にそうじゃないけどさ」
ボケ「なんだよ、素直に言えばいいじゃん。行こうぜ」
ツッコミ「え、うん。ありがとう」
ボケ「俺ら最近、コンビニ弁当ばっかりだからね。ゴチになります」
ツッコミ「俺が奢るの?」
ボケ「そうそう、コンビニで思い出したけど」
ツッコミ「俺が奢るのね、わかった」
ボケ「この間コンビニでプリン買おうとしたら最後の一個でさ。急げ!って取ろうとしたら、隣から別の人の手が伸びてきてさ、触っちゃったんだよね、お互いの手に」
ツッコミ「おお、恋愛フラグ?」(ニヤニヤ)
ボケ「顔見たらかーちゃんでさ」
ツッコミ「お前の?」
ボケ「いや、お前の」
ツッコミ「は?」
ボケ「あ、ごめんなさい、どうぞ。いえ、そちらこそどうぞ。あ、いいんです、別に……ってなんか変な雰囲気になっちゃって」
ツッコミ「俺のかーちゃんと?」
ボケ「じゃあ、半分こします? ってことになってさ」
ツッコミ「なんでだよ! フラグへし折れよ! (取り乱して)え、一緒に食べたの? ねえ、俺のか―ちゃんとプリン半分こして、あーん、とかやったの? ねえ!」
ボケ「(プリンを差し出すしぐさをして)これ、そん時のプリン。半分かーちゃんに渡してくれる?」
ツッコミ「やだよ! いらねえよ、賞味期限切れてるだろ!」
ボケ「3日くらい大丈夫だって。心配すんなよ。このプリンさえあれば、きっとお前のかーちゃんは助かる。俺のことはいいから、早く行くんだ!」
ツッコミ「(ノリノリで)バカ野郎、お前を置いていけるか! ……ってなにこれ、おかしいでしょ、また変なフラグ立てようとしたなお前」
ボケ「え?」(聞いてなかった)
ツッコミ「ノってやったはじから飽きてんじゃないよ!」
ボケ「いや、もういいかなって。俺食べるね、プリン」
ツッコミ「やめとけよ、腹壊すって」
ボケ「なんだよ、さっきから文句ばっかじゃん。俺の言うことにいちいちツッコんできてさあ」
ツッコミ「仕事! ツッコむのが俺のお仕事!」
ボケ「もうこんなとこで漫才やっていられるか! 俺の言うことにいちいち文句言うやつと一緒にいられるかよ。俺は楽屋に戻るからな!」(背を向けて帰ろうとする)
ツッコミ「うわ、ミステリーでよくあるフラグだこれ」
ボケ「俺は絶対にツッコませないからな!」
ツッコミ「よくわからなくなってる」
ボケ「……」
ツッコミ「……」
ボケ「ツッコめよ!」(戻ってくる)
ツッコミ「どっちなんだよ!」
ボケ「……ごめん、俺、お前がツッコんでくれることに甘えてて。ごめん、ちゃんと伝えなきゃいけなかったのに」
ツッコミ「なによ、どうしたの急に」
ボケ「今まで言えなかったんだけど」
ツッコミ「言えばいいじゃない」
ボケ「この仕事が終わったら、俺、お前にちゃんと伝えることにするよ!」
ツッコミ「だから今言えよ!どんだけフラグ立てるんだよ!もういいよ!」
二人「ありがとうございました」