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片思い

作者: kaHo
掲載日:2020/06/25

早朝。

歯を磨いてから、顔を洗う。

飯はお袋がいつものように昨日から準備してた朝ごはんを食べ、また準備されている弁当を持って鞄にいれる。

片方の靴だけはいてる最中だった。

「あっ」

と言うと、俺がとっさにやり残したことに気づいたため、洗面所に向かう。

ガチャと洗面台の棚から、コンタクトを取り出す。

ちょっと時間はかかったが、ソフトコンタクトを右目から入れる。

よしっ、と気合いをいれて2回頬を叩き、学校へと向かう。

チャリ通学なので楽々と裏道を通り数十分で学校の自転車置き場に着くと、チャリを無造作に止め体育館に向かう。

ーー

まただ。

いつものように、バスケ部の練習のため早めにつくのに体育館は開け放たれている。

ボールの準備もネットもしっかりされているのに対し、誰もいない。

俺は高校2年生である。

先輩でもあり、後輩にあたるので2年に上がってからは早朝練習している。

はじめは俺が体育館を通り越した職員室にいき鍵をもらい、体育館を明けていた。

しかし、この頃はだいたい体育館が開いている。

不思議だ。

まるで見透かされてるみたい。

でも、顧問の先生に誰が開けたんですか?と聞くより練習がしたくてうずうずしているため聞き逃していた。

今日こそは聞こうか?

そう思っていると、後ろから背中を叩かれた。

「よっ、いつも準備万端で助かるは。早く練習しようぜ!」

と、同級生のバスケ部の大井翼が声をかけてきた。

「お、おう……」

俺はまた聞く機会を逃したなと少し項垂れてはいたが、翼とはレギュラーあるなし関係なく接してくれるいいライバルで親友だ。

急いで二人して着替えながら昨晩のテレビの話やバスケの事について盛り上がる。

俺は翼のお陰で、人と馴染むのも早くなった。

話上手のやつがそばにいるだけでいろんな事が知れる。

クラスは違うが、卒業しても親友なんだろうなと思う。

ーーーー

でも、翼は凄い。

1年の時、あまり喋らない俺に対して何気なく話しかけてくれた。

俺はスポーツ推薦で入ったからそこそこできるし2年にしてベンチでいるが、翼はレギュラーではない立場なのに臆せず1年の時のように話してくれる唯一の親友だ。

皆レギュラー争いのなか、翼は俺だけには明るくいろいろ話してくれる。

だからだろう。

俺も明るく話すようになり今ではクラスではまぁまぁ話ができるので、クラスで目立つ方にいる。

モテ期ってやつなのかな?

自慢じゃないが、2回コクられたこともあるくらいだ。ーーーー

時間がたつのは早く、準備運動からシュートの練習などしていたらあっという間に朝練が終わった。

「はぁ、今日もいい気分だな」

と、俺は汗をぬぐいながら言った。

「いつもありがとな、健! やっぱり一人じゃはかどらないから助かる。それに俺よりうまいからコツとしてもらってなんかラッキー♪」

「いいってことよ。俺も2年になれば朝練したいと思ってたし。声かけて正解だわ」

俺ら二人はニヤニヤ話ながら、後片付けをしてそれぞれのクラスに向かう。

ーーーー

あー、退屈だったなぁ。

欠伸をしながら、いつものようにクラスの友達と授業等忘れるくらい男同士の話をしてる。

女子は雑誌等見てはしゃいでいる。

そんな雑誌見て何が楽しいんだか。

ふと、窓際にいる一人の女子に気づく。

片瀬だ。

あいついつも本ばかりで楽しいのか?

それに三つ編みにメガネ。

どうみても、オタク。

一応バスケのマネージャーだからたまに見るが、明らかにバスケのマネージャーたちも片瀬と業務連絡以外話してるの見たことない。

社会人になったらやっていけるのかと、他人事ながら見ていた。

「…い、おい、聞いてるか? 畠はさ、どうなると思う?◯◯の次の展開! 」

つい一瞬、上の空になっていたが話はテレビ◯◯の連続ドラマの事について話していた。

「あぁ、俺は多分青葉が怪しいな。犯人青葉じゃね? 」

慌てて、返事をする。

「だよな! 俺もそう思うわ」

と、クラスメイトである戸木がそれに賛同する。

いつものたわいない、いつものように話しをしているとチャイムが鳴った。

皆慌てて、自分達の席につく。

次は桜井先生だからな。

ちょっとでも大人しくしてないと、数学の問題を前に出て解かされる。

ーーーー

「やっと、部活に行ける。さぁ、授業の発散でもすっか! 」

そういう俺は必要な物を鞄にいれる。

「健! 今日も私たち応援行くね! 」

と猫なで声で一部の女子たちが言う。

「おぅ、よろしく」

と返事は愛想よく返すが、本音のところ気持ち悪い。

普段のように喋ればいいのに。

「おうおう、モテモテは辛いな」

と林が捲し立てる。

一瞥して、俺は体育館に向かう。

別に俺のクラスの女子は俺だけが目当てではない。

先輩の高坂努さんというキャプテンの人がいるからだ。

たまに俺も応援してくれるから、まぁ嬉しいけど。

別のクラスでは応援してくれてる子もいるからそれはそれで有り難い。

窓際を見ると、もう片瀬はいなかった。

ーーーー

いつも通り、バスケの練習して終わった。

はぁ、疲れた。

でもこの疲れも気持ちいいんだよな。

やりきった感があって。

「なあなあ、この後マクトに行かね?」

俺は、翼に声をかける。

「おぉ! いいね!行こうぜー」

明るく返事が返す翼。

「ねぇ、マクトいくの? 私たちもいきたいなー」

と、上から見物していた別のクラスの女子がキャッキャッと返事を待っている。

そこに顧問の先生が片付け当番だと言われ、内心忘れていた俺は焦った。

俺のバスケ部はマネージャーの女子だけでは、できそうにないことがあるので当番で部員の一人が手伝う仕組みである。

「翼、ちょい待っててくれる? 」

と、俺はばつが悪そうに翼に言った。

「あぁ、いいよー」

と、軽く返事をしてくれる翼。

俺は見物の女子に向かって

「悪い! 今日は無理そうだわ。また今度な! 」

と言うと、

「えー」

と、ぶつくさと女子が言った。

申し訳ないが、仕方ない。

マネージャーの女子たちはというと、キャプテンにメロメロであることは言うまでもない。

片付けの際、マネージャーの女子はどこへやら。

多分、キャプテンについて行ったんだろうな。

手伝えよ、と思いながらもせっせと片付けを行う。

すると後ろから、

「ごめんなさい、飲み物片付けてたら遅くなってしまいました」

と女子が言う。

聞き覚えがあるなととは思いながら振り向くと、そこには片瀬がいた。

そういえば、こいつもマネージャーだった。

「いや、来てくれて助かるよ。他のマネージャーどっか行っちまうし」

と、本音か冗談かのように俺は言う。

本音だけど。

それから、二人で黙々と片付けてた。

うーん、どうしよう。

黙りもなんかなぁ、何か話題ないかな?

と思いながら、適当に話しかけることに俺はした。

「そういえば、片瀬って下の名前なんなの?」

聞いたあと、俺はしくじったと思った。

気などないのに、これだと気があるようではないか!?

「尚子。尚更の尚に子供の子」

と、普通に片瀬は淡々と返すから俺は、

「へぇ、尚子ね。そういえば、何でバスケのマネージャーやってんの? 楽しい? 」

と、疑問をぶつけてみた。

すると、

「バスケ好きなの。この学校では女子バスケはないでしょ? だから、マネージャーに」

意外だった。

片瀬、クラスではあんなに陰気な感じなのにバスケするんだと驚いた。

「片瀬、もしかして中学バスケ部?」

と聞くと、コクりと首を縦にする片瀬。

片瀬って俺とおんなじなんだ。

そう思った。

中学の頃の俺は、眼鏡で髪もボサボサで、クラスではあまり喋らないグループでいた。

"バスケはうまいのに陰気なオタク"と呼ばれていたほどだ。

クラスでは、バスケはそんなにうまくないのに明るく人気者の男子がいていつもちょっかいを出されていたものだ。

そのためか、俺はアニメに逃げていた。

それが余計にオタクと呼ばれる結果になるのだけれども。

中学卒業後は、ストレスがなくなったからなのかはたまたオシャレに目覚めたのか。

コンタクトを買ってもらい、オシャレな雑誌を買い高校デビューしたのだ。

幸い、俺の高校は同じ中学の奴はほとんどいない。

翼もいて明るく話すようになると、まぁ不思議なことになかなかの人気者になってしまった。

そのため、片瀬への親近感は凄くわいた。

だからと言って、何になるわけでもないけど。

ーーーー

それからだろうか?

こっそりと片瀬を観察するようになったのは。

真面目なんだよな。

片付けも何一つ文句言わずにするし、勉学にも手を抜かない。

ぼーと窓際ばっかり見るもんだから、先生に叱られることもしばしば。

眼鏡外せば美人じゃね?

なんて考えるようになり、バスケのマネージャーとしてはじめは話始めた。

はじめは女子たちに煙たがれていた片瀬だか、なんとか俺がフォローしていた。

ーーーー

日がたつにつれて、夏に入る時期。

もうすぐ夏休みだ。

片瀬との関係はと言うと、友だちだ。

でも、なんか気が楽になる友だち。

落ち着く。

練習の後の片付け当番のときは、日が重なるにつれいろいろ話してくれた。

本はバスケ関連の小説などを読んでることが多いこと。

卵焼きが弁当にあると内心嬉しいらしいこと。

たまに、夜にはママさんバレーならぬママさんバスケをしていることらしい。

地元の小学校の体育館でしているとか。

普段俺は話題をだすのが苦手だったが、片瀬にはなぜだが話せる。

多分、俺の素は落ち着いた方が好きなんだろうな。

ワイワイ喋るのもいいが、ワイワイ喋ったあとはなぜか虚しくなるし疲れる。

楽しいはずなのに、それはよくわからない。

ーーーー

夏休みが近くなった頃、相変わらず翼と練習する。

夏休みが終われば先輩がバスケを卒業するため、俺はレギュラーになるのは決まっていた。

できれば、翼と一緒にレギュラーになりたいものだ。

昨日も夜遅くに翼と一緒にしたいなと電話していた。

だが、いつの間にか寝てたのだろう。

そのため、早く起床してしまった。

少しの間一人で練習することになるが仕方ない。

朝練のため、朝の身支度を終えて学校に向かう。

いつものようにチャリを置き、体育館に向かっているといつもと違った。

いや、不思議な現象が途絶えたと言うべきか。

体育館は静まり返り、扉もしまっていそうである。

いつも聞きたかったことだ。

つい、翼との練習を優先して考えてはいなかったが、なぜこのところバスケの準備が万全であったか、顧問に聞くことができる。

そう思い、体育館をぬけ、職員室に向かおうとすると重たい扉が開く音がした。

後方からだ。

振り向くと、そこには体育館を開けたはなす片瀬がいた。

「あっ……」

と恥ずかしそうに、体育館に入る、片瀬。

俺は職員室に向かうのをやめ片瀬を追いかけ手をとる。

「あ、あの、その、いつも片瀬が朝練の準備してくれたのか? 」

と、俺は何故か心臓をばくばくさせながら片瀬に問う。

「……うん」

戸惑いながらも、片瀬が頷きながら返事する。

俺はなんだか高揚してきて、

「どうしていつもしてくれてたんだ? 」

とより問いただす。

「畠くんだから、その、いうけど……」

この間が凄く長く感じた。

俺はなんだかウキウキしてきて、満面の笑みをしようとしたときだった。

「大井君の事が好きなの。私みたいな人が釣り合わないとは思っているけど、好きだから何かできることはないかなって思って! これ、大井君には内緒だよ?」

うるうるとした真っ赤な顔でこちらに手を合わせてお願いされた。

俺は心のなかのガラスが割れたように感じた。

お互い沈黙。

「……畠君?」

と、未だに泣きそうな片瀬が俺の顔を覗く。

俺は後頭部に手をやり、

「あぁ、そうなんだ。わかった、内緒にしとくよ!なんなら俺がキューピッドでもやろうか? 」

なんて、心にもないことを言ってしまった。

「ほんとに!? ありがとう!」

と、俺の手を両手で握る片瀬。

すっごい幸せそうな顔をしてる。

俺はなんだか幸せそうな顔見れて嬉しいのに、なぜだろう。

心では大きく割れたガラスの破片が突き刺さったみたいに心臓が痛い。

「じゃあ、練習頑張ってね! 」

と、その場をあとにする片瀬。

そこで俺は堪えていたのだろう。

体育館に入ると、口を噛み締めて試合に負けたあとのように涙を溢していた。

あぁ、俺片瀬が好きだったんだ。

このとき、初めて片瀬を本気で好きなんだと感じた。

でも、レギュラーでもない翼と俺、何が違うんだ?

悔しい。

勉強だって翼に何か劣ってるモノもないはずなのにーーーー

そのときだ。

俺は気づいた。

俺、翼を見下してたんだ。

親友だと言い聞かせながら、実は俺は何でもお前より上だぞって威張ってたんだ。

そのとき、また大きな溝が心にできた。

涙をぬぐい、体育館の端っこで項垂れていると翼が来て、

「……健? 大丈夫か? どこか怪我でもしたのか? 」

と、本当に心配している翼を手で振り払い、俺はチャリに乗り人気のない場所に行った。

どうしよう。

立ち直れねぇや。

ーーーー

これが俺の初恋であり、失恋である。

今は別に彼女ができている。

彼女というか、今日から俺の奥さんとなる静香だ。

静香も落ち着いていて、運動が好き。

あまり群れたりせず、狭く深くに友だちを作るタイプ。

今の俺と同じ。

多分、俺は高校のとき、いきがってたんだよな。

カッコつけたかっただけなんだと今は思う。

だが、今は幸せだ。

あんな格好さらしたってのに、俺と静香の結婚式に来てくれてる翼と片瀬。

片瀬はもう、早くから大井という名字に変わって子供もいる。

まるで、実の兄弟を見るように送り出そうと泣いてくれている。

やっぱりバカだ、俺。

こんな大事なときに、失恋のことを思い出すなんて。

でも、俺は二人から素直に生きることを学ばせてもらった。

そのお陰で今がある。

あぁ、曲が鳴り始めた。

俺たちの新たなスタートへの始まりだ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] うまく言えませんが高校生の日常と青春、心情がうまく描けていると思います。 [一言] 途中まで健と片瀬がいい感じに見えたのに、片瀬が翼のことが好きといった場面ですごく切なくなりました。 4人…
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