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アミス伝 ~聖獣使いの少年~  作者: 樹 つかさ
7・魔力の壺
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レッサードラゴン

登場人物

◎ラス・アラーグェ

 元ハーフエルフのエンチャントドールの青年

 水系と氷系の精霊魔法を使う魔法戦士


◎リン・トウロン

 白虎のシェイプチェンジャーの女戦士

 身の丈より長いヘヴィランスを振るう華奢な見た目以上のパワーファイター


◎ジーブル・フラム

 氷の神イエロに仕える神官の少女

 一時的に同行中


◎サンクローゼ・セルシェル

 盗賊職の青年

 素早い動きを活かして回避力に長けた短剣使い


◎ウェディック・バールソン

 今回の仕事・遺跡探索の依頼主だったが、それは魔力の高い冒険者を誘き寄せるための罠だった

 高位の魔法使いであり、レッサードラゴンを召喚できる

 流石にこの展開は想定していなかった。

 目の前に現れた巨大な生き物に、流石のラスも恐怖を感じていた。 

 幾ら充分な広さがある空間だからといって、(ドラゴン)が呼び出されるなんて想定外にもほどがある。

 ウェディックの召喚の術により目の前に現れたその竜は、現れて早々に冒険者の存在に気付くと、直ぐに威嚇の咆哮を上げた。

 咄嗟に耳を塞ぐラス達だったが、その一吠えで気を失い戦力外となった冒険者も居た。

 ジーブルと2名の冒険者が彼等に駆け寄り抱きかかえる。

 気を失った状態で竜のブレスを受けては助かる訳がないので、ジーブルは他の冒険者を守るように前に立ち、対火炎用の防御結界を張った。

 氷の女神イエロの力を借りたその結界は、その属性の効果もあり対炎を対しての防御力だけは高いものだった。


 (それでも、何度も防げるわけではないだろうな……)


 何度もブレスを吐かせるわけにはいかない。

 特にラスやリンが立つ最前線はジーブルの結界範囲外であり、もし直撃を受ければただでは済まされない。

 ラスは最悪な結果を想像をしながらも、冷静に竜の動きや周囲の状況を観察する。

 まずは竜を呼び出したウェディック・バールソンに意識を向ける。

 ウェディックは悠々と空中へと逃げ、上空から高みの見物している。


 (竜がいれば充分な相手と思われているってことか……)


 それを強く否定できる立場ではなかった。

 アミスやレン、ラミルという魔法使い系が姿を消した状況下で、自分達だけでどうにかするのは正直厳しく思えた。

 だが、それでも何とかしなければならない。

 ラスが無理な相手と思っている竜に対して、臆せずに攻撃を仕掛けている者が居た。

 一人はリン・トウロン。

 竜に対して、身の丈より大きなヘヴィランスを振るっている。

 半獣化して白虎の耳と尻尾を生やしたその姿は、見た目の可愛さとは異なりとても頼りがいがあるように見えた。

 高位の魔法使いが居ない現状下では、白虎のパワーを持つ彼女が攻撃の要となる。

 そんなリンと共に攻撃を仕掛けるサンクローゼ・セルシェルの姿もあったが、短剣で固い竜の鱗をどうにかできるとは思えなかった。

 実際に、サンクローゼの攻撃に対して竜は何の反応も返しはしなかった。


 「ならば!」


 サンクローゼは竜の体を足場に高く跳び上がった。

 その行動の狙いはラス達には直ぐに判った。


 「おい! 無茶だ!」


 サンクローゼの狙いは鱗で覆われていない竜の目。

 そのままでは届かない高い位置にあるその目を狙う為に、高く跳び上がったサンクローゼだったが、竜の視界内で正面から跳び上がる行動は、そのラスが言う通り無茶な行動でしかない。

 空中で体の自由の利かなくなった状態では、サンクローゼ自慢の回避力を充分に発揮することはできないからだ。

 巨体に見合わぬ素早い鉤爪での攻撃は、曲芸じみた動きでギリギリで躱すことができたが、続いて

上空から振り下ろされた尾による攻撃はサンクローゼに襲い掛かる。

 一回目の回避行動で完全に態勢を崩しているサンクローゼにはどうにもできない攻撃だった。

 咄嗟にジーブルが対物理系の防御結界を飛ばすが、咄嗟に生み出されたもので竜の攻撃を防ぎきることができるわけもなく、サンクローゼはそのまま床に叩きつけられる。


 「大丈夫か!?」


 咄嗟に駆け寄ろうとしたラスだったが、続いて自分に向けられた尾による攻撃を躱すことが精いっぱいでそれは叶わない。

 リンが続く竜の攻撃をカウンター気味の反撃ではじき返し、竜の攻撃が漸く止まる。

 そのチャンスを逃さずに倒れるサンクローゼへと駆け寄るラス。

 再度呼びかける声に反応して、サンクローゼの体は動きを見せた。


 「とりあえず、ジーブルの結界まで下がって!」


 リンにそう言われずともラスはそのつもりであり、まだ立ち上がる事の出来ないサンクローゼの体を無理やり引きずっていく。


 「ちょ、待て、いて、自分で、立ち上が、いてて」


 サンクローゼは自分で逃げることを提案しようとしていたが、それを待つ余裕はなかった。

 最後はほおり投げるようにジーブルの結界内にサンクローゼを連れて行ったラスは、すぐに前線へと戻る。

 短い時間だったが、それでもその間一人で竜を相手にしているリンのパワーの凄さにラスは感嘆する。

 それは上空でその戦闘を観察しているウェディックもだった。

 正直、感じ取っていた魔力などから見て、直ぐに決着がつくと思っていた。

 強い魔力を感じ取れる相手が、ラス一人だけだったからだ。

 だが、半獣人化するリンの戦闘力と、意外に強力な防御結界を張る事ができるジーブル、そして、空回り気味だが、その素早さで攪乱するサンクローゼにより、思ったより戦いが長引いている。

 本来なら竜のブレス一つで、何人かが餌食になっていてもおかしくない状況なのだが、絶え間なく繰り返される攻撃が、竜にブレスを吐かせる間を与えない。

 予想通りには進んでなかったが、ウェディックは慌てはしない。

 思ったより高い戦闘力を持っていたとしても、今いる冒険者達に目の前の竜を倒せるとは思えないからだ。

 レッサードラゴン。

 竜族の中でも下位に位置する存在だったが、その頑強な鱗を纏った身体と鉤爪や尾による強力な攻撃、そして、口から吐き出される炎のブレス。

 十人ちょっとの冒険者が相手にできる存在ではないのだ。

 ただでさえ大半の冒険者達は恐怖に身を竦ませて戦力になっておらず、ほぼ4人で戦っているようなものだった。

 しかも、ジーブルはその戦力外の冒険者を守る結界を張る事に集中していて、あまり援護の魔法を使えないでいる。

 ウェディック側の立場から見ても、ラス達側の立場からも、じり貧の状況にしか思えなかった。

 中でも、リンがその思いが強かった。

 半獣人化のリスクがあるからだ。

 シェイプチェンジャーという種族特有のその能力の事を詳しく知る者は少なく、仲間としてリンの戦闘力を頼っているラスでさえ、半獣人化による体力の消費の事は知らない。

 長引けば長引くほど、リンのパワーや動きは衰えていく。

 リンの動きが焦りからやや強引になっているのに気付いたラスが、

 

 「リン! 焦るな!」


 そう制しながら横に並ぶ。

 そして、リンの呼吸が乱れてきている事に気付いた。


 「大丈夫か?」


 竜を相手に真正面から殴り合っているのだから、消耗が激しいのは仕方なかったが、ラスの目に映るリンの消耗度合は予想以上でラスに違和感を与えていた。

 だが、リンを休ませる余裕は無い。

 竜に間を与えてしまえば、ブレスを吐かれる恐れがある。

 リンの重い一撃があるからこそ、その間を与えていないのだ。

 ラスやサンクローゼの武器による攻撃では威力が足りず、ラスが威力のある魔法を使う為の溜め時間は、ブレス用の溜め時間を生んでしまうかもしれない。


 アミスとレンが居れば……


 そう思わずにはいられないラスだったが、実際に居ない者を当てにするわけにはいかない。

 

 「リン! 少し時間をくれ!」


 ラスのその言葉をリンは迷う事もせずに受け入れる。

 リンは力を振り絞ると、竜への攻勢を強めてその意識を自分に向けようとする。

 彼女の思惑通りに竜の攻撃はリンに集中し、その隙をついてラスは長い呪文の詠唱に入った。


 (!? あの呪文は……)


 ウェディックはラスの詠唱の妨害をするか一瞬悩んだが、その魔法でレッサードラゴンをどうにかできるのかという好奇心が勝り、黙ってそれを許した。

 ラスは呪文の詠唱の終了に合わせて竜に近づく。

 ラスを狙う竜の尾による攻撃をリンが全力ではじき返し、ラスはそれから生まれた隙をついて魔法を発動させた。

 両手から至近距離で放たれた光がレッサードラゴンを包む。

 レッサードラゴンが苦しみの咆哮を上げ、暴れるように動き回る。

 ラスとリンは暴れる大きな体に巻き込まれないように咄嗟に離れて距離を取ったところで、レッサードラゴンがゆっくりと前のめりに倒れだした。

 普通の攻撃魔法では、膨大な体力を誇る竜を倒しきれないと判断したラスが選んだ魔法は、精神に対しての攻撃魔法。

 ラスの高い魔力で放たれたその魔法は、竜の精神力を削り切った。

 と、思われたが、レッサードラゴンはギリギリでそれに耐え抜き、倒れそうな体を再びゆっくりと起こし上げる。


 「だ、駄目か……」

 「いや、充分に効いてる。

 ラス、今ほどのじゃなくていいから、もう一度」


 諦めかけたラスに対して、リンが発破を掛ける。

 ありったけの魔法力をつぎ込んだラスは、もう一度できると思っていなかった。

 だが、そう言って竜へ再度突撃するリンの姿を見て、額から脂汗を滲ませながらヘヴィランスを振るうリンの姿を見て、再度呪文の詠唱を始める。

 だが、今度はウェディックにそれを許すつもりは無かった。

 ラスが放った魔法は、ウェディックの想像の遥か上を行っていた。

 再度放たれれば、レッサードラゴンは倒されてしまうのは必然と思えた。

 故に妨害する為の魔法を放つ。

 ラスとリンが既に限界に近いのは明らかに見て取れた。

 故にそんなに威力の高い魔法はいらない。

 短い詠唱で生み出した【火炎球】を無造作に放り投げる。

 これで終わりと小さく呟きながら。


 火炎球が爆発する。

 そして、辺りは閃光に包まれる。

 まるで全てを飲み込むように……

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