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アミス伝 ~聖獣使いの少年~  作者: 樹 つかさ
7・魔力の壺
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冷静なる戦い

登場人物


◎アミス・アルリア

 本作の主人公

 複数の聖獣を使役する少年魔導士(見た目美少女)

 

◎レン

 ダークエルフの女魔術師

 今回限定でアミスと行動を共にしている


◎エル

 アミスと同い年(15歳)の女剣士

 その身に秘めた魔力を宿す


◎ロビック

 転移魔法で飛ばされたアミス達を待ち受けていた上級魔族

 常に冷静な分析することを信条としてる

 魔族ロビックの後方で大きな爆発が起こった。

 レンが作り出した【 火炎球 (ファイアーボール)】により起こったその爆発は、自らも魔力に長けた魔術師であるロビックにも冷や汗をかかせる程、高威力で大きなものだった。

 ロビックにとって、予想外のものが多過ぎる状況。

 ダークエルフの女魔術師の魔法のレベルの高さも、女剣士の素早さと技術も、女だと思っていた少年魔導士の高レベルな聖獣の存在も……

 それでも、焦る気持ちは無かった。

 ただ、今まで使う事のなかった、使う必要のなかったモノを使わなければならない状況になると、冷静さを失わない頭で考えていた。

 一瞬、魔族としてのプライドが邪魔をして否定しかけたが、ロビックの冷静な頭はそれを打ち消す結論を出す。

 人間や他の種族を下に見て、不覚を取ってきた魔族の話をいくつも聞いてきた。

 最初は油断しすぎだと馬鹿にしていたが、余りのも多く耳に入ってくるそんな話に、人間達も馬鹿にできない力を持っているのだと考え直していたのだ。

 それでも今まで相手をしてきた人間達は油断していても、間違っても不覚を取る相手ではなかった為、どうせまた大した相手ではないだろうという気持ちが、つい先程までロビックの頭を支配していた。

 だが、そんな過信は今では完全に消え去っている。

 こういった実力者達に、同族達は倒されていたのだろう。

 それでもまだ追い詰められている訳ではない。

 今の状況下でも、まだ自分が僅かに有利だと思っている。

 故に、今は正確な分析をすることを優先することにした。

 絶対に不覚を取らないように、防御寄りの思考で相手を観察する。

 ただ、相手に調子に乗らせないように、攻撃の手も止めることはしない。

 あくまでも、冷静な思考を失わない。

 それが魔族ロビックの主義だった。


 そんな冷静さで行動しているのはロビックだけではなかった。

 ダークエルフの女魔術師のレンも、若き女剣士のエルも、極度の緊張感で冷や汗を流すアミスも冷静に観察し思考し分析しようとしていた。

 そんな4人の揃っての慎重な考えは状況を膠着させていたが、動きながらの『動の膠着』が『静の膠着』へと変わり、それがきっかけで状況が動き出した。

 

 一番動きを見せていたエルの足が止まる。

 どんなに豊富なスタミナを持っていても永遠と動き続ける事ができないのは自明の理。

 少しでも体力を維持するための静止だったが、それをきっかけにロビックが行動を起こす。

 呪文の詠唱を始めながら、宙へと浮き始めた。

 

 「「!?」」

 

 ロビックのその行動に危険を感じ取り、レンとエルは直ぐに攻撃に転じた。

 

 「【 火矢 (ファイアーアロー)】!」

 「【 火炎槍 (ファイアーランス)】」


 エルが生み出した火の矢と、レンの生み出した炎の槍が、ゆっくりと上昇していくロビックに襲い掛かる。

 空中ではあまり自由の利かない【 浮遊 (レビテーション)】の欠点をついた攻撃だったが、そんな二人の攻撃魔法は、ロビックに命中する直前で霧散して消える。


 「「!!」」


 威力より早さを重視したエルの火の矢だけなら判らなくもなかった。

 予め張っていた防御結界か何かで消されたという説明はつく。

 だが、レンの【 火炎槍 】は簡単に防げる威力のものではなかったはずだった。

 防御結界でも、それを正面から消し去るなんて簡単にできることではない。

 レンとエルは驚きを見せながらも次の行動に出る。

 

 「飛ばしてくれ!!」


 そう言いながらエルはロビックに向かって走り出した。

 既にそのままでは剣は届かない高さに居たが、レンかアミスのどちらかが何とかしてくれると信じ距離を詰めていく。

  

 (無茶する……)


 と思いながらも、レンはエルの走る先に魔力の塊を生み出した。

 出会ったばかりの若い女剣士がその意図を理解するかは賭けだったが、エルはそれを理解し、その魔力の塊を足場に跳び上がった。


 「馬鹿が……」

 

 跳躍という行動は、【 浮遊 】の魔法以上に空中で自由の利かない行動だ。

 ロビックはエルのその行動を愚かなものと蔑み、準備が完了した魔法を放った。


 「【 爆 閃 華 (フィオジオーネ)】」


 エルとロビックの間に無数の花が咲いた。

 炎を魔力を帯びたその花は一斉に爆発し、生み出された炎が接近していたエルを包み込んだ。

 元々は三人を纏めて燃やすための広範囲型の攻撃魔法だったが、一人接近してきた為手前で発動させざるおえなかったが、これで一人は戦力外にさせれたはずだ。

 エルを包み込んだ炎は、至近距離で防ぐことができる威力ではない。

 防御結界を張っていたとしても、五体満足で入れるはずがないのだ。

 だが、そんなロビックの予測に反して、爆炎の中から剣を構えた影が見えてくる。


 「な!?」


 現れるはずのない女剣士がすぐ目の前まで来ていた。

 驚愕の表情を見せるロビックだったが、直ぐに迎撃行動に移れるのは彼の強さの一つ。

 あらゆる状況を想定して予め用意していた魔法具により生み出された魔力の壁が、空中で自由の利かない彼女を叩き落とす。

 普通であれば、そのまま床に叩きつけられる威力だったが、エルは咄嗟に空中で身を翻し態勢を立て直して足から着陸した。

 ロビックは爆煙が薄れていく中、驚きの表情を浮かべたまま状況を観察する。

 そして、上空に見えたある存在の姿に、全てを理解した。


 「≪白翼天女≫か……

 まさか、そんな高位な聖獣まで持っているとは……」


 そこにはアミスが呼び出した≪ 白翼天女(ラシェール) ≫の姿があった。

 それは防御や回復魔法等の白魔法に長けた、Sランクに格付けられる程の高位の聖獣。

 この聖獣がいるなら、自分の攻撃で女剣士を仕留めきれなかった事に合点がいった。 


 (話は聞いていたが、ここまでのものとは……)


 有名な聖獣だったため、その能力の事は情報として頭にはあった。

 そんな聖獣が目の前の少年魔導士が持っている事も予想外だったが、それ以上にその力がロビックが思っていた以上のものだった。

 充分に高い評価をしていたつもりだったが、目の前で自分の魔法を防ぎ切った≪白翼天女≫の力は、想像の遥か上をいっていた。


 (やはり、このままでは危険か……)


 ロビックは心を決めた。

 使う必要があるかもしれないと思っていた力を、使わなければならないと考えた。

 そうしなければ、負ける可能性があると判断したのだ。

 ロビックは改めて状況を分析する。

 目の前にいる3人の戦闘力が自分が思っている以上に高いと、頭の中でアップグレードする。

 それでも勝てるという確信はある。

 この部屋で戦う限り……

 この部屋に用意されたものがある限り……

 ロビックの口に笑みが浮かぶ。


 「!?」


 その笑みを見て、相対する3人は表情を強張らせる。

 今まで様々な表情を見せてきたロビック。

 敵対している魔族らしい下卑た表情や、恐怖を感じる表情も見せてきていたが、今、目の前で浮かべている表情は、そのどんな表情よりも恐れを抱かせるものだった。


 (まだ、何かを隠し持っているのか?)


 レンもエルも、心の中で警戒のレベルを上げた。

 現状でも不利な状況と思っていた中で、更に何か隠し持っている事を感じ取っていた。

 そんな感情を感じ取ってのか、ロビックは大きな口を開けて笑い出す。

 二人の女冒険者の表情が曇りだすことが楽しくて仕方なかった。

 そんな二人を凌辱しつくし、その心を絶望の中へと突き落とし破壊し、魔力を吸い尽くす事を改めて想像し、それが冷静な心を一時的に奪い去っていた。

 だが、直ぐに冷静な思考を取り戻すロビックの表情は真剣なものへと戻っていた。

 その感情の起伏の激しさが、3人に更なる恐怖の感情を与えていた。


 そして、ロビックはそれを発動させる。

 この部屋に仕掛けられた魔法の罠を……

 再度、不敵な笑みがロビックの口元の生まれていた。

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