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アミス伝 ~聖獣使いの少年~  作者: 樹 つかさ
7・魔力の壺
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 直視できない程の眩い光が収まっていく。

 閉じられた瞼越しにそれが判ったアミスは、ゆっくりと目を開ける。

 

 「ここは……」


 直ぐにそこが先程までいた場所ではない事に気付いた。


 「また飛ばされたか……」

 「あ、レンさん」


 すぐ後ろから聞こえた声に、少し安堵しながらアミスは振り返る。

 頭を押さえて考え込むレンの姿がアミスの目に映り、一瞬、レンの心配をするアミスだったが、それ以上に気にしなければ事態に気付き、驚きの表情を浮かべた。


 「あれ? みんなは……?」


 辺りを見渡すが、ラスの姿も、タリサの姿も、リンやジーブルもそこに確認する事が出来なかった。

 慌てて泳ぐアミスの目が、一人の人物で止まる。

 自分とレン以外にそこにいるただ一人の姿に……


 「えっと……、エルさん?」


 名前を思い出しながら、アミスは彼女の側へ歩く。

 そこに居たのは若い二人組の片割れ、ラミルの相棒の女剣士風の冒険者のエルだった。

 いかにも美少女という風貌で冒険者には見えない顔立ちだったラミルとは違い、少し少年っぽい風貌をしていて、その鋭い目付きはいかにも冒険者らしくあった。

 彼女は腰に刺してある剣の柄に手を当て、辺りを警戒していた。

 この不測の事態の中でも、レンと同様に慌てた様子を見せておらず行うべきことが判っている様子だった。。

 その姿にレンはやはり不自然さを感じずにいられない。


 (どれだけの修羅場を潜り抜けてきた?)


 少なくとも新米冒険者ではないだろう。

 成人してそれほど経っているとは思えない少女のその落ち着きっぷりは、どう見てもおかしかった。

 エルとラミル。

 二人の少女からの違和感はレンにとって警戒対象となっていた。


 「私達だけか……」

 「そうみたいですね」


 エルの呟くような言葉に、アミスが返す。


 「ラミルさん、失敗しちゃったんですかね?」

 「いや……」


 そうとしか思えずに出したラミルの問に、エルは否定の言葉を出す。


 「あいつがこの手のミスをするとは考え難いな……」


 考える様な仕草でそう言うエルに、今度はレンが言葉をかける。


 「随分と信頼しているんだな」

 

 そう言われてエルは、苦笑いを浮かべた。


 「ああ、魔法の知識、技術に関しては、あいつ以上のやつは居ないと思っているんでね」

 「本当に凄い信頼だな……」


 今度はレンが苦笑いを見せる。

 見た目からの年齢にそぐわないと雰囲気だと感じていたエルのその発言に、レンは少し安心する。

 若さゆえの視野の狭さを感じ取れた。


 (ま、確かに知識や技術力は高そうではあったな)


 「信頼か……

 ただ事実を言ってるだけなんだけどね……」


 そう言って再度苦笑いを少し浮かべ、周囲を見回すエル。

 今度の部屋はそれほど広くはなかった。

 ざっと見た限り室内には何もなく、一つの扉の存在が確認できるだけだった。


 「どうしますか?」


 全員の視線が扉に向けられている事に気付いたアミスは訊ねる。


 「まずはひとつ、気になる事が……」

 「気になる事ですか?」

 「何故、私達3人が飛ばされたか?

 って、ところか?」


 レンの気になる事と言う言葉に、アミスは首を傾げたが、エルはさらっと予想を口にする。

 その予想は当たっており、レンは笑みを浮かべながら頷く。


 「私とアミスは近くに居たが、お前は少し離れた所に立っていた」

 「なのに何故、この3人が一緒の場所に飛ばされたのか……」

 「……確かにふしぎですね」


 言われてみれば確かにそうだとアミスも思った。

 が、考えても答えは出てこない。


 「一つ、共通点と呼べるものがないわけではないが……」

 「え? なんですか?」


 レンは少し間を置いてから答える。


 「強大な魔力を持つものをその身に宿している……」

 「!?」


 アミスは直ぐに自分の事は理解した。

 自らの聖契石の中にいる5体の聖獣達。

 レンはそのことを言っているのだろう。

 アミスは視線をエルに移す。

 鋭い視線をレンに向けている彼女は、何も言わない。

 レンはそんなエルに余裕の笑みを返していた。

 そしてエルの返答を待っているのか、何も言わずいる。

 そんな二人を見比べながら、アミスは1つ思う事があった。


 単純に聖獣を使役しているだけならば、あの場には他に聖獣を持つものとしてヴェルダ・フィラインが居た。

 実際に見たことはないがタリサも聖獣を持っていたはずだ。

 その2人はここには居ない。

 つまり、目の前の2人は、彼等の聖獣より強大な魔力を持つ存在と契約しているということになる。

 

 (僕の場合は、きっとラシェールの魔力……、というか法力が……)


 絶大な法力を持つ≪白翼天女≫がまずは頭に浮かぶ。

 まだその力をまともに使った事はないが、シルアとクリスも相当高い魔力を持っているだろう。

 それらの存在の事をレンは言っているのだと予想できた。


 「ま、確かに強力な魔力の存在と契約している……」

 「やはりな……」


 レンは口元に笑みを残したままだが、目付きだけは鋭いものへと変えていた。

  

 「魔力は抑えていたのに、よく判ったね」

 「強力過ぎて抑えきれていなかったな。

 いったい、何を宿しているやら……」

 「悪いけどそれは言えない……

 ま、それはそっちもだろうけど……」


 エルのその言葉に、レンの表情から笑みが消える。

 逆にエルが僅かに口元に笑みを見せていた。


 「お前らは何者だ?」

 「何者? 普通の冒険者だよ」

 「普通? とてもそうは思えないけどな。

 お前の相方も含めてな。

 お前らは見た目通りの年齢なのか?」

 「年齢?

 2人共、15歳だけど?」


 ほぼ見た目通りの年齢だった。

 だが、落ち着いた佇まいや知識は、その年齢とは思えなかった。


 「ま、そんな事より、他に無ければ行動を開始しないか?」


 話を打ち切るつもりのエルの言葉に、レンも頷くしかなかった。

 訊きたいことはあったが、訊いたところで答えてはくれないだろう事は、容易に想像できたからだ。

 なによりも、のんびり会話を楽しむような余裕がある状況ではないのだ。

 

 「さてと……」

  

 3人の視線見える限り唯一となる扉に再度集まった。

 

 「どうしますか?

 他に隠し扉か何かがないか調べますか?」

 「いや……」


 レンは出しかけた否定の言葉を飲み込んだ。


 「エル、あんたはどう思う?」

 「扉の先に進むしか……」


 尋ねられて反射的に答えるエルだったが、自分に向かられたレンのじっくり観察するような視線に気づき、軽く溜息をついた。


 「なんか試されているようね……」


 そんなエルの言葉に、レンは笑みを浮かべていた。

 その笑みはエルの言葉を肯定しているようだった。

 エルは観察されていることを判っていながら、言葉を続けることにした。


 「扉の先に何らかの罠があるのは間違いないが、それでも行くしか選択肢はないだろうね」

 「そうですか……」

 「この三人が飛ばされた理由……

 それがさっき出た理由ならば、相手が求めているものはその魔力なのだろう?」


 レンの反応を見ながらエルは言葉を続ける。


 「ならば、余計なものは用意されている訳がない。

 相手がこちらに選択肢を与える意味がない。

 だから、扉を進む道しかないのさ」


 そう言い切ると、エルはレンに確認するかのように言う。


 「で、良いかな?」

 「話が簡潔過ぎると思うがな……」


 レンの失笑。

 そんな失笑を見てもエルは何とも思わなかった。

 そういった反応が返ってくる事が判っていて、あのような説明をしたのだから……

 そんな2人の腹の探り合いにアミスは気付いていなかった。

 ただ、なるほどと納得した様子を見せている。

 そんなアミスを見せ、エルは苦笑いを浮かべていた。

 そして、確信する。

 アミスが冒険者として初心者であることを……


 (まだ一年経ってはいないのだろうな……)


 外見から年齢を予想すればそれが当然のことであり、改めて自分が、そして相棒のラミルが普通でない事を実感できた。


 (ラミルと同じような外見で、こうも違いが……

 ん?)


 ふとある考えがエルの頭に浮かんだ。

 まさか、そんなことはないだろうと思いながら、確認することにした。


 「アミスって……」

 「はい?」

 「もしかして……」

 「?」


 可愛らしく首を傾げるアミス。

 その姿はどう見ても少女としか思えない可愛さだった。

 だが、エルは……


 「……男か?」


 と、問う。

 目を丸くしてアミスは返す。


 「そうですけど…、そう見えませんか?」 

 

 普通は見えないだろうと、エルは思いながらも言葉には出さずに、ただ頭を押さえていた。

 まるで頭痛がしてるような仕草にアミスは複雑な表情を浮かべていた。

 既に何度目かの見た目から性別を誤解される反応。

 何度されても、やはり慣れる事は出来ずに、また口を尖らせて


 「僕は男ですよ」


 と、再度アピールした。

 それも見て楽しげに笑うレンと、苦笑いのエル。


 「まさか、同じような奴がいるとは……」


 再度頭を押さえてエルは呟いた。

 その言葉に反応したのはレン。

 その言葉が持つ意味をすぐに理解したのだ。


 「まさか……?」


 エルはレンが何を考えたのか直ぐに判ったようで、苦笑いのまま頷いた。

 それを確認し、レンの表情も苦笑いへと変わっていった。

 そんな二人の表情にアミスは再び可愛らしく首を傾げる。

 一人だけ理解できずに……


 自分に似た雰囲気の美少女にしか見えなかったラミルが、自分と同じで男だという事を……

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